言語聴覚士(ST)を目指している方や、現在STとして働いている方の中には昇給について気になる方も多いのではないでしょうか。

給料が上がれば働くうえでのモチベーションになり、スキルアップへの投資やプライベートの充実、さらに長期的な収入の見通しにも大きな影響があります。

そこで今回は、言語聴覚士の昇給事情や昇給額を上げる方法などについて解説します。

1.言語聴覚士(ST)の昇給平均

厚生労働省から発表されている令和5年度の賃金構造基本統計調査によるとST全体の給与平均は433万円程度です。STの昇給に関して詳しいデータは公表されていませんが、経験年数あがるにつれて、給与額も上昇する傾向がみられます。

昇給とは「基本給が上がること」を意味しており、残業手当や各種手当を抜かしたあらかじめ決められた給料のことで、昇給以外で変動することはありません。そのため、基本給にそうした手当がプラスされて、月の給与になります。

昇給制度は施設により異なりますが、経験年数に応じて一定額上がっていく場合や、毎年スタッフそれぞれの業務目標などを設定し、達成度に応じて昇給していく場合など様々です。

私が所属していた施設では目標達成度の自己評価および面談と経験年数で3段階評価され、次年度の給与の額に反映されていました。

出典:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」一般労働者 職種 表番号 1「職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」

2.言語聴覚士(ST)の昇給方法

昇給にはいくつかのパターンがあり、主なものには次の5つが挙げられます。

定期昇給個人の年齢や勤続年数に応じて定期的に行われる
ベースアップ不定期な見直しで従業員全体の基本給が上がる
臨時昇給業績が急に上がった場合などにそれを従業員に還元するために行われることが多い
査定昇給個人の能力や経験、成績などを査定し、昇給額を決定する
昇格昇給役職が上がることなどによって基本給が上がる

一般的に多い昇給としては「定期昇給」と「査定昇給」、「昇格昇給」になります。これはSTの昇給方法にも当てはまるため、この3つについて詳しくみていきましょう。

勤続年数を伸ばす(定期昇給)

厚生労働省の賃金構造基本統計調査では経験年数別にSTの平均給与額を確認できます。

経験年数別ST給与額

経験年数給与/月×12ヶ月賞与年収
0年¥248,600¥2,983,000¥770,00¥3,060,900
1~4年¥254,100¥3,049,200¥638,200¥3,678,400
5~9年¥277,400¥3,328,800¥687,700¥4,01,6500
10~14年¥306,300¥3,675,600¥797,800¥4,473,400
15年以上¥338,500¥4,062,000¥952,900¥5,014,900

上記の表からも分かるように、経験年数に比例して、給与も上昇しています。

STをはじめとして医療職は全体的に能力給よりも、経験と年齢によって昇給していくパターンが多いため、堅実に昇給を目指すなら、できるだけ同じ職場で長く勤めることがポイントです。

出典:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」一般労働者 職種 表番号10 職種(小分類)、年齢階級、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)

安定した業務評価を得る(査定昇給)

人事査定の際に高評価を得るためには、仕事に対する前向きな姿勢や自身がコツコツと努力していることを認めてもらう必要があるため、まずは自身に与えられた業務をきちんとこなすことが高評価を得られる基本となります。

臨床では患者様の時間を有効に活用して、設定した目標に向けてリハビリを行います。それと並行して日々のカルテ記録、カンファレンスの資料作成、施設間連絡書の作成、退院時指導、家族指導などの業務もありますので、期限に遅れることのないよう注意が必要です。

そのほか、次にご紹介するようなスキルアップも技術の向上など業務内容に直結することですので、自分がどんな努力しているのかアピールをしていくことも大切です。

スキルアップする(査定昇給)

効率よく昇給を望むのであれば、経験年数を重ねるだけでなく、並行して自身のスキルアップはかることも昇給への近道となります。

新人の時期は日々の臨床業務をこなすことに精一杯で、他のことに手が回らないという場合も多いと思いますが、少しずつ慣れてくると、臨床の中で興味のある症例や困っていること、疑問などが出てくると思います。

自主学習として解決するのもありですが良い機会と捉え、調べたことや経験をまとめて院内外の勉強会や症例検討会で発表してみることをおすすめします。周囲に発信することで自身の知見を深め、スキルアップにつなげることができます。より深く追求して、学会での発表に繋げるのも良いでしょう。

また、特定の分野に興味があり、その道のスペシャリストとして活躍したいという場合には資格の取得もおすすめです。

STのスキルアップに適した資格は様々ありますが、認定言語聴覚士や栄養サポートチーム(NST)専門療法士、呼吸ケア指導士、介護福祉士、プロフェッショナル心理カウンセラーなどが挙げられます。

例えば、認定言語聴覚士には、摂食嚥下障害領域、失語・高次能機能障害領域、言語発達障害領域、聴覚障害領域、成人発声発語障害領域があり、それぞれの分野において高度な知識および熟練した技術を用いて高水準の業務を遂行できることの証明になります。

どの資格も臨床経験や講義の受講、筆記試験など一定の基準のクリアを求められますが、臨床に対する自信となり、STの資格と組み合わせることでより専門性の高いリハビリの提供が可能になります。

ご紹介した発表実績や資格取得は自身の実績として昇給考査時に評価してもらったり、資格手当が付く施設もあります。転職の際にもアピールポイントとして活かすことができるため、チャレンジしておいて損はありません。

昇進する(昇格昇給)

勤続年数を伸ばすことによって、役職に就くことができる可能性も高くなります。役職に就くと、役職手当がついたり、基本給がUPしたりすることも多いです。経験年数15年以上のSTの年収がそれまでに比べて飛躍的にUPする一因に、この昇進があります。

経験を積むことでSTの主任になりやすくなりますが、リハビリ室単位で考えた際には、STよりも理学療法士(PT)や作業療法士(OT)のほうが人数は多いため、PTやOTから選出される可能性の方が高いです。

STとして昇進を目指していきたい方はSTがメインで活躍している小規模施設や、小児の言語教室などへの転職も視野に入れてみると良いでしょう。

転職をする

昇給の有無は求人情報に記載されていることが多いですが、昇給額は施設によって差が大きく、昇給額が低い職場では長年勤めても年収は増えにくい傾向があります。

そのため、給与が自身の希望額に満たない場合は、基本給やその他の手当、ボーナスなど給与の高い職場に転職することも検討しましょう。

STは全国的にみても人数がそれほど多くないため、需要が大きく、転職のチャンスが多い職種と言えます。そのため、各施設の募集要項をよく確認して、自分の希望にあった施設を見付けることが重要です。

ご希望の条件に合った転職先が見つかるように、しっかりとお手伝いさせて頂きますので、お困りの際はPTOT人材バンクのキャリアパートナーに遠慮なくご相談ください。
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3.給与待遇の良い職場を探すときのポイント

給与待遇に重きを置いて職場を探す際には、平均年収、昇給や賞与の有無、福利厚生がどうなっているのか事前にしっかり確認しておくことがポイントになります。

平均年収

年収をメインに考えると大規模なリハビリテーション施設や総合病院は平均年収が高い傾向があり、学会発表などの際にも学会出席に関わる手当が出るなど、資格取得のサポート体制などが充実している施設も多いです。

また、一般的に民間の医療施設やリハビリ施設よりも、公立病院や保健所・保健センターなど公的施設で働く場合は公務員となるため、平均年収や昇給率が高い傾向にあります。

昇給・賞与

昇給や賞与は求人情報にも記載されていますが、施設により支給回数や金額が大きく異なります。固定の金額ではないため正確な金額は把握できませんが、年収に大きな影響を与えるポイントです。

私が勤めていた施設や友人の施設の話を聞くと、月々の給与は平均的で賞与は年に2回で平均額よりも多めの施設、もしくは月の給与は平均より高いが賞与が年に1回で平均を下回る施設など様々です。

福利厚生

給与面だけでなく、福利厚生がどのぐらい充実しているかどうかもトータルでの年収や働き方に影響を与えます。福利厚生として具体的には各種社会保険、有給休暇、産前産後・育児休職制度、各種休職・休暇制度などがあります。

福利厚生の中でも出産・育児に関する内容が充実していると、女性でも長く仕事を続けやすく、産休・育休を利用して職場復帰する人も多いです。

勤務先にどのような福利厚生があるのか把握しないまま勤務していると損をする場合もあるため、しっかり確認しておくことをおすすめします。福利厚生についても公的施設では公務員に準拠したものとなり、より安定しているケースが多いようです。

4.言語聴覚士(ST)の給料やボーナス

STの給料やボーナスの支給は基本的には一般企業と同様に行われます。しかし、STの平均年収やこれまでの昇給に関する情報からも分かるように、それほど高給とは言えません。

ただ、STをはじめとしたリハビリ職は臨床業務がメインなため基本的に早朝勤務や夜勤などがない施設が多く、取得できる単位数も限られているため臨床業務としての残業もほとんどありません。

そのため空いた時間をスキルアップのための時間に充てるなど有効に利用して、昇給や転職による年収UPなど長期的な計画で臨むと良いと思います。

さらにSTの給与やボーナスについて詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてみてください。

言語聴覚士の平均年収・給料は安い?女性の給料や高収入を得るコツ

5.まとめ

今回は言語聴覚士(ST)の昇給に関する情報についてご紹介しました。

STの昇給は年齢や経験年数を主軸として、日々の臨床業務やスキルアップなど自身の努力の成果が密接に関係しています。また、スキルアップすることで昇進やより希望に沿った施設への転職なども可能となります。

日々の努力と昇給制度を上手く活用して、理想の職場と希望の年収を目指しましょう。

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【参照】
厚生労働省HP
日本言語聴覚士協会HP
生涯学習プログラムについて-認定言語聴覚士について