言語聴覚士(ST)として病院や施設で働いていると、学生が見学実習や臨床実習で職場実習に来ることがあります。
実習生にとって、現場での実習というのはSTがどのような仕事をしているのかを体感したり、学校の授業だけでは得られない経験や学びを得る場として大変重要なものです。
自身がバイザーになったとき、少しでも実習生に有意義な経験をしてもらうために、ここではSTのバイザーとして大切なことを解説していきます。
目次
1. 言語聴覚士(ST)のバイザーとは
実習におけるバイザーには、スーパーバイザー、ケースバイザー、サブバイザーの3種類があります。
スーパーバイザーは、実習生の症例決めや一日のスケジュール、学校との連携など、実習に関わる全てを決定する権限を持つバイザーです。
ケースバイザーは、実習生が担当する症例の担当セラピストのことです。サブバイザーは、補助的なバイザーを指します。
このうち、スーパーバイザーのみ、臨床実習指導者の要件を満たす必要があり、言語聴覚士養成所指導ガイドラインで次のように定義されています。一般的に、バイザーとは、このスーパーバイザーのことを指します。
実習指導者は、言語聴覚士の免許を受けた後5年以上法第2条に掲げる業務に従事した者で、かつ、当該施設において専ら法第2条に掲げる業務に従事していること
言語聴覚士養成所指導ガイドラインについて(◆平成27年03月31日医政発第331030号)
2.バイザーに求められる4つのこと
それでは、言語聴覚士(ST)のバイザーに求められることを、4つのポイントに分けてご紹介していきます。
① 実習生にとって模範のSTとなる
バイザーが実際に臨床を行っている場面や、日々STとしての業務を行っている場面は、実習生にとって最も身近なSTの見本となります。
良いお手本となれるように、知識の習得や対人マナー、社会人としての適切な振る舞いなどを身に着けておく必要があります。
② 相談しやすい雰囲気を作る
実習生は、普段の学校とは異なる環境で慣れないことも多く、緊張でいっぱいです。実際に、色々わからなくて困っていることがあっても、日々の業務で慌ただしくしているバイザーに遠慮してしまい、なかなか聞けないと感じる学生も多いです。
実習生が現場で疑問点を解消してしっかりと学んでいけるように、質問しやすい雰囲気づくりを意識したり、わからないことはないか適宜確認していくことはとても大切です。
③ 実習生の考えを最後までしっかり聞く
実習生の意見や考えを聞く際は、途中で遮ったり、憶測で判断せずに、時間をかけて話を最後までしっかり聞き、実習生の考えを理解していくことが大切です。
患者さんと関わって思ったこと、わからなかったことなど、実習生もバイザーに話をする中で自分の考えを整理していきます。そして、最後に実習生が話したことを要約してあげて、それに対するアドバイスなどを添えるようにすると、実習生にとってもためになります。
④ 実習生をよく観察する
実習生の体調、行動、発言、様子などを常に気にかけて観察をすることはとても大切です。学生は自身で健康管理にとても気を遣うものですが、夜遅くまで課題や復習をやっていたり、体力的に無理をしてしまうことがあります。
しっかり睡眠や食事はとれているか、体調を崩していないか気にかけ、休息があまりとれていないようであれば、課題の量を調節するなど配慮する必要があります。
3.スーパーバイザーという役割を通して得られること
学生にとって実習がどれほど大切か十分理解していても、日々の業務に加えて実習生を担当するということは、負担に思う方も多いのではないでしょうか。
しかし、スーパーバイザーになるということは、メリットも多くあります。
例えば、採用活動を行っている職場であれば、実習生に魅力を伝える良い機会であり、その学生が自身の職場の求める人物像かどうかを見極めることにも繋がります。
やはり実習先というのは、そこで働く人や業務を目にすることができるため、就職先としてもイメージしやすく、実習先に就職する人も多くいます。
また、実習生を担当して指導していくためには、知識やスキルを十分に持っている必要があり、さまざまな質問にも十分に答えられるように自身の知識やスキルを見直す良いきっかけにもなります。
他のにも、実習生にとって良い見本となろうと心がけるため、職場全体で適度な緊張感をもつことにも繋がることもあるでしょう。
4.バイザーとして気を付けたいこと
バイザーになるにあたって気を付けるべきことがあります。
実習生にとってバイザーとはSTのお手本でもあり、バイザーの発言などは教科書に書いてある言葉と同じように、そのまま参考にするとても影響力の強いものとなります。
実習生が間違った知識を習得してしまわないように、質問に答える際や何か説明をする際は、それが正しい説明であるか十分に吟味し正しく伝わっているかも確認していく必要があります。
また、実習をしていくにあたって、その学生にとっても何が足りないか課題が見えてきます。例えば、患者様とのコミュニケーションや臨床に対する知識、働いていく上での社会性など、問題は様々です。
実習生が自身の課題と向き合って改善していけるように、バイザーとしてもサポートしていくことが大切です。実習期間は限られているため、日々の業務に翻弄されず、学生としっかり向き合う時間も作ることが必要となってきます。
5.まとめ
学生にとって実習は学びの多い場であるのはもちろんですが、バイザーにとっても学ぶ場面は多くあります。
どちらにとっても実習が有意義なものとなり、自身がバイザーとして担当した学生がSTになるにあたって良い経験ができ学びの場となるように、バイザーとしてしっかりと心構えや準備をして実習に臨んでいきましょう。
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【引用サイト】
言語聴覚士養成所指導ガイドラインについて