今回は言語聴覚士(ST)が開業する方法と注意点を紹介します。

興味や関心を持っている人はいると思いますが、実際のところよくわからない、法律や経営が不安などの点から実践できない人が多いのではないでしょうか?

開業は理学療法士(PT)・作業療法士(OT)にはないSTの魅力やチャンスの一つであるので、この機会に知っていただけたら幸いです。

1.言語聴覚士(ST)は開業できるリハ職

STはリハビリの職種のなかでも開業できる特性を持っています。具体的にどんな内容で開業できるか詳しく紹介していきます。

言語分野ならSTとして開業できる

STはPTOTと違い、言語療法の一部である「言語訓練」「構音訓練」は医師の指示なしで提供できるため、専門家として開業することができます。

しかし、言語聴覚士法 第四十二条に、

言語聴覚士は、保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として、医師又は歯科医師の指示の下に、嚥下訓練、人工内耳の調整その他厚生労働省令で定める行為を行うことを業とすることができる。

と明記されているように、「嚥下訓練」、「聴力検査」、「補聴器装用訓練」は医師の指示なしに提供できないため、この部分での開業は行うことはできません。

また、もう一つ押さえておきたい注意点としてはSTに開業権があるという誤解です。STが開業できる領域は無資格者でも開業でき、STの特権ではありません。

つまり、言語訓練や構音訓練領域の開業は誰でも行えるため、類似のサービスで多くのライバルが存在します。ですので、その環境で負けないための専門性や経験が必要になってきます。

専門知識を活かした開業はもちろん可能

口部・顔面筋や頸部へのアプローチ方法や、声や喉のケアなど、STとして培った経験やスキルを活かして、リラクゼーションサロンのような無資格で開業できる施設であればもちろん開業できます。

普通のリラクゼーションサロンと差別化を図れる要素になっています。

開業できる資格を取る方法もある

また、STの分野だけにこだわらず、介護支援専門員(ケアマネージャー)や柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師など、開業が認められている国家資格を取得し、これまでの臨床経験や体験を生かして別の資格を使って開業する方法もあります。

介護支援専門員(ケアマネージャー)とSTを組み合わせて開業した場合、摂食・嚥下機能や高次脳機能の専門家としてケアプランが作成できるため、利用者様のニーズに応えた過不足のないサービスを立案できます。

また、柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師とSTの組み合わせで開業した場合、全身の筋肉や東洋医学の視点からアプローチができるので、全身状態を整えながらより効果的な言語訓練を行えることが期待できます。

2.言語聴覚士(ST)が開業する強み

STの強みは「言語」という専門分野で開業できることです。

言葉の問題は日常のコミュニケーションや生活と強く紐づいているため、リハビリのニーズが強い分野です。無資格でも開業できますが、生活に密接な領域であるため国家資格保有というのは大きな魅力となるでしょう。

言語障害だけで見ても、音声言語障害を抱えている人は推定346 万人です。それに対してSTの人口は3万6千人と数が圧倒的に少なく「引く手あまた」という状態です。

実際にはセラピストが身の回りにおらず、リハビリ機会を得られることを知らない・あきらめている患者様も多くいらっしゃるので、言語訓練ができる場所があることを周知・宣伝することから顧客獲得につながると考えられます。

3.開業する際に注意したいこと

具体的に開業するにあたって押さえておくべき注意点をいくつか紹介します。ルールに則って行う開業は問題ありませんが、禁止事項や広告の表現には注意が必要です。

医療保険や介護保険は使えない

言語聴覚士(ST)として開業できても、前述のように医師の指示のもとでリハビリを行うわけではないので、医療行為を行えません。

そのため保険を使った診療は実施できず、あくまで利用者の全額自費負担という形になります。

広告表現など宣伝文句に気を付ける

そして医療行為をにおわせるような表現にも十分な注意が必要です。医療の広告ができるのは、医療広告ガイドラインにあるように「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告」です。

広告表現や宣伝文句には細心の注意を払い、医療法の禁止事項などと照らし合わせて掲載することが大切です。

4.まとめ

いかがでしたでしょうか?

言語聴覚士(ST)は言語療法の一部である「言語訓練」、「構音訓練」は医師の指示なしで提供できる魅力的な職種です。

開業の強みはST人口に対して圧倒的に患者様が多く、周知や宣伝次第で顧客獲得につながる可能性を秘めています。

開業にあたっての注意点は、「嚥下訓練」、「聴力検査」、「補聴器装用訓練」は医師の指示が必要なため、この部分での開業は行うことはできないこと。保険を使った診療ができないこと。広告表現に細心の注意が必要なことの3つです。

STの開業はルールに則って行うことで、利用者様に専門性の高いサービスを提供できる可能を持っているといえます。

まず、キャリアアップからお考えの方はPTOT人材バンクのキャリアパートナーに遠慮なくご相談ください。

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【参照/引用サイト】
言語聴覚士法(◆平成09年12月19日法律第132号)