今回は言語聴覚士(ST)がスキルアップするために、おすすめの資格を紹介していきます。

STは小児や成人、言語機能や高次脳機能などそれぞれの専門性に分かれており、キャリアアップの方法に多様性があります。

資格を取ってキャリアアップすることは転職で有利になり、給与UPにも繋がる可能性がありますので参考にしてもらえたら幸いです。

1.言語聴覚士(ST)におすすめの資格4選

さっそく、STにおすすめのスキルアップの資格をご紹介します。

①.認定言語聴覚士

認定言語聴覚士は、日本言語聴覚士協会の制度です。

日本言語聴覚士協会の公式サイトによると、

本協会では、高度な知識および熟練した技術を用いて高水準の業務を遂行できる言語聴覚士を養成することにより、業務の質の向上をはかり、社会に寄与することを目的として、平成20年(2008年)度から「認定言語聴覚士」制度を進めています。

と説明されている制度です。

摂食嚥下障害領域、失語・高次能機能障害領域、言語発達障害領域、聴覚障害領域、成人発声発語障害領域があり、それぞれの専門分野でのエキスパートになれるため、効果的なリハビリを行うことができるようになり、業務の質の向上はもちろん、転職や給料のUPにつなげることができる資格です。

取得には、満5年を超える臨床経験があり、日本言語聴覚士協会の生涯学習システム専門プログラムを修了、認知言語聴覚士講習会に参加、試験に合格することが必要です。

②.LSVT LOUD

LSVT®LOUDとはパーキンソン病を有する人への声の大きさに対する発話訓練を実施できる商標登録されている資格で、LSVT(Lee Silverman Voice Treatment)の略称です。

米国LSVT Globalのホームページでは、

LSVT LOUDは、3つのランダム化比較試験を含む20年以上の研究データを持っているPD患者のための唯一の音声および音声治療です。これらの研究は、PDを持つ人々の声と発話を改善するための有効性を示しています

と明記されています。

パーキンソン病の発話機能改善に対してエビデンスのある治療方法になるため、病院や訪問リハビリなど成人分野で活躍するSTにとって力になる資格となり、転職で有利になります。

LSVT®LOUDを取得するためには、認定講習会に参加し、試験に合格する必要があります。

2.キャリアは切り開く必要がある

言語聴覚士(ST)は資格ができて20年程度で歴史が浅く、確立されたキャリアプランがまだ少ないという実情があります。

また、STは小児・成人、神経難病、構音・口腔機能、摂食・嚥下機能、高次脳機能、失語症、聴覚・補聴器、など専門性や興味関心のある分野に個人差が大きい職種でもあります。

自分が理想とするSTの働き方が何か分析し、それに有用なスキルアップのために、日常業務と異なった勉強や研修を経て、キャリアを切り開いていく必要が求められる職種ではないでしょうか。

3.言語聴覚士(ST)には開業資格も

また、ST独自のPTOTにない特徴として開業資格があります。保険診療で開業することはできませんが、自費診療であれば医師の指示が不要な領域(吃音・言語治療など)の開業は可能です。

この領域は、無資格者であっても開業が許されていますが、STとしての専門性や経験をフルに使うことができるため、他リハビリにはない権利と言えるでしょう。言語聴覚士と他サービスを組み合わせた開業は、先行者利益があるかもしれません。

開業STを検討している場合は、SNSの発信等の顧客獲得のノウハウの勉強も必要となってきます。

個人事業主や法人で事業を行うために、ファイシャルプランナー3級や日商簿記3級など自己学習で合格できるレベルの資格を取得し、医療業界では学んでこられなかった経営に必要な基礎知識を習得することもおすすめです。

4.資格の難易度について

言語聴覚士(ST)は多くの分野を専門としており、幅広い疾患・年代の患者様を対象としているため、資格取得のために得た知識などを活かす機会が多々あります。ここでは比較的めざしやすい資格と難易度の高い資格についてご紹介します。 

比較的めざしやすい資格

比較的チャレンジしやすい資格として「手話通訳士」があります。手話通訳士とは、厚生労働大臣が認定する公的資格で、手話を用いて聴覚障害者と聴覚障害を持たない者とのコミュニケーションの仲介・伝達等を図る仕事です。

聴覚障害をもつ患者様やご家族と接する際に手話を覚えておくことで、円滑にコミュニケーションを図ることができ、手話での会話を通じで信頼関係を築くきっかけになります。

また、手話は言語をサインとして表しており、ジェスチャー表現として活用しやすいものも多いため、失語症など言語に障害がある患者様との共通のサインとしての使用も可能です。

手話通訳士は社会福祉法人聴力障害者情報文化センターの運営する手話通訳技能認定試験(手話通訳士試験)において、学科試験と実技試験に合格する必要があります。20歳以上であれば誰でも受けることができますので、興味があればチャレンジしてみてください。

取得の難易度が高い資格

STとしての資格取得の難易度や専門性の高さ、転職の際のアピール度で言えば、1章でもご紹介した認定言語聴覚士が挙げられます。

認定言語聴覚士は、摂食嚥下や言語発達障害など6分野に分かれており、認定を受けることで各専門分野の幅広い知識と専門性の高い技術を持ち、患者様やそのご家族から深い信頼を得ることのできる資格です。

日本言語聴覚士協会の正会員で満5年を超える臨床経験のほか、日本言語聴覚士協会の生涯学習システム専門プログラムを修了、認知言語聴覚士講習会に参加、試験に合格するなどの条件があり、2022年時点で6分野合計918人が取得しています。

一番少ない吃音・小児構音障害領域ではまだ30人しか取得者がおらず、一番多い摂食嚥下障害領域でも394人と、STの中でもとくに貴重な人材であると言えます。

5.どの資格取得をめざすか迷う方へ!おすすめの資格をご紹介

言語聴覚士(ST)の仕事に関する資格は複数あり、どれも専門性の高い資格です。自身の興味がある分野にチャレンジしていくことで、臨床にさらなる楽しみを見出したり、様々な経験と知識を元に学会での発表や患者様との関わり方に活かすこともできます。

目標を高く持つことも大切ですが、資格の取得に一定以上の経験年数が必要なものも多く、経験年数が浅いうちから難しい資格に関する勉強ばかりだと、内容について行けず、途中で挫折するということにもなりかねませんので、比較的簡単なものから始めることをおすすめします。

また、資格を取るというとSTに関するものに目が行きがちですが、高齢化により増えている訪問リハなどの介護系や学校などに行く機会のある小児・教育系の求人では、「普通自動車免許」が応募条件として記載されていることが多くなっています。

これらの分野は今後も需要は伸びていくと考えられますので、学生など時間のある時に取得しておくと就職や転職の際に選択肢が広がります。

6.資格取得による給与・年収アップは見込めるのか?

言語聴覚士(ST)をはじめとして医療職は資格等による能力給よりも、経験と年齢によって昇給していくパターンが多いため、施設ごとに異なる基本給のほか、経験年数や役職手当などで金額が変動します。

しかし、施設によってはスタッフのモチベーションアップや業績評価のために資格取得などスキルアップを支援している場合もあり、自身の実績として昇給考査時に評価してもらったり、資格手当が付いたりする施設もあります。

給与や年収アップの見込みがない場合でも、資格取得などのスキルアップは臨床に対する自信となり、STの資格と組み合わせることでより専門性の高いリハビリの提供が可能になります。転職の際にもアピールポイントとして活かすことができるため、チャレンジしておいて損はありません。

7.無資格でもチャレンジできる領域

高齢化が進み、臨床だけでなく日常生活でも高齢者と関わる機会が増えています。そこで役立つのが「認知症サポーター」です。認知症サポーターは厳密には資格ではなく、認知症について正しく理解し、偏見を持たず認知症の方や家族を地域で見守るために国が定めた制度です。

自治体が開催する無料の「認知症サポーター養成講座(90分)」を受講する必要がありますが、誰でも受講可能です。自治体が開講しているため、地域高齢者の実情と併せ、認知症の正しい知識を身に付けることで、患者様との関わり方や必要な支援内容の検討などに役立てることができます。

8.まとめ

いかがでしたでしょうか?

言語聴覚士(ST)のスキルアップにおすすめの資格は、

  1. .認定言語聴覚士
  2. .LSVT LOUD
  3. .手話通訳士
  4. .認知症サポーター

などが挙げられ、STのキャリアアップの資格は、自分にキャリアプランに合った専門の資格を選ぶと効果的です。

また、STは開業するという選択もあるため、開業に必要なFP3級や日商簿記3級など基礎知識の資格習得もおすすめできます。

PTOT人材バンクは資格を生かした転職サポートも行っておりますので、キャリアパートナーに遠慮なくご相談ください。

転職するか迷っていてもOK


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【引用/参照URL】
生涯学習プログラムについて | 資格をお持ちの方へ | 一般社団法人 日本言語聴覚士協会
最新のリハビリテーション 鹿教湯三才山リハビリテーションセンター JA長野厚生連
LSVT治療全般–LSVTグローバル
厚生労働省 手話通訳技能認定試験(手話通訳士試験)について
日本言語聴覚士協会HP生涯学習部 認定言語聴覚士の一覧
厚生労働省HP 認知症サポーター