今回は皆さんが気になる、言語聴覚士(ST)の給料についてご紹介していきます。

厚生労働省が公表している令和3年賃金構造基本統計調査をもとに、平均年収や男女差、役職の有無などでの給料の違いを見ていきましょう。また、後半ではSTの給与UPの方法を記載してありますので、活用して頂けたら幸いです。

1.言語聴覚士(ST)の平均年収と給料

さっそく令和5年賃金構造基本統計調査 をもとにSTの月給や賞与、年収の詳細をご紹介していきます。

男女別の月給や賞与、残業代や役職の有無など、様々な統計データが公表されていますので、それぞれ見ていきましょう。

言語聴覚士(ST)の平均年収は約432万円

厚生労働省の令和5年賃金構造基本統計調査によると、令和5年のSTの平均年収は約4,325,400円となっています(残業代や交通費なども含めた額面)。これをさらに月給と賞与に分けると、月給は300,400円であり、賞与が714,400円となります。

ちなみに残業代を除いた年収は約4,195,600円で、月給では290,100円となります。残業代や交通費などを含めた年収と大きく差がないことから(月に10,300円程度)、残業はそれほど多くないと考えられます。

こちらの統計には、PT/OT/視能訓練士と合算された年収データであり、STのみのものではない点に注意が必要ではありますが、病院・クリニック・訪問リハビリなど就職先の業態によって差は生まれるものの、私の体感でも業種間での違いは大きくないと感じますので、概ねこの数字を参考にして問題ないと思います。

国税庁発表の令和5年民間給与実態統計調査によると、1年を通じて勤務した給与所得者全体の平均給与は約460万円で、ST全体の平均である432.5万円と比べやや高い数値ではありますが、著しくかけ離れた数値ではないことがわかります。

【男女別】男性は年収約452.1万円、女性は年収約409.5万円

同じ統計データを元に、男女による年収の違いについて見てみます。

STの男性の年収は約452.1万円であり、女性の年収は約409.5万円となっています。

男女平均男性女性
年収約432.5万約452.1万約409.5万
月収約30.1万約31.5万約28.4万
賞与約71.4万約73.7万約68.7万

月収や賞与に差はあるものの、男女ともに年収400万円を超えています。

給与額は職場により異なるほか、経験年数、役職の有無などによっても異なります。
参考までに、役職者を除いた場合の年収は男女平均で約415.4万円、男性が約430.7万円、女性が約398.9万円になります。男性は約21.4万円、女性は約10.6万円の変化があることが分かります。

男女差が生じる要因として、役職者の数の差や女性は出産・育児などの生活環境の変化に伴い、時短勤務を選択するなど働き方にも変化が生じること、出産・育児休暇の取得などにより経験年数にも影響するため、男性に比べるとやや低い傾向にあると考えられます。

【年齢・経験年数別】年齢とキャリアを積み重ねると年収は上がる

STは国家資格として制定され25年程度経過し、ベテランの域まで経験を積み重ねている方も増えてきました。基本的には年齢が上がるにつれて年収は高まっていく傾向にあります。

年齢と年収月給賞与年収
20~24歳243,300円394,600円3,314,200円
25~29歳260,000円628,100円3,748,100円
30~34歳279,400円711,700円4,064,500円
35~39歳306,300円786,500円4,462,100円
40~44歳312,900円814,500円4,569,300円
45~49歳328,000円924,100円4,860,100円
50~54歳331,300円862,700円4,838,300円
54~59歳388,800円1101.000円5,766,600円

しかし、ただ年齢が高ければ年収が高いというわけではなく、経験もかなり重視されるため、同じ35歳~39歳であっても経験年数の違いによって、金額は大きく変わります。

35~39歳月給賞与年収
経歴1~4年282,400円697,400円4,086,200円
経歴5~9年297,600円769,900円4,341,100円
経歴10~14年314,600円789,600円4,564,800円
経歴15年以上306,100円867,800円4,541,000円

こちらの表にある月給は残業代を含まない金額のため、やや低い金額となっていますが、やはり基本的には経験の長さが年収UPにつながることがデータからもわかります。長年の臨床経験や知識により質の良い言語療法を提供できますし、リハビリ業務のマネジメントや後輩指導もできる立場であるため、この差も納得できます。

認定言語聴覚士などキャリアアップにつながる資格や認定を受けて、給与をUPすることも手段の一つになりそうです。

【規模別】事業規模が大きい方が年収は高い傾向にある

STの分野でも事業規模が大きい職場のほうが年収が高い傾向があります。月給では大きな違いがみられないものの、賞与の差が大きいように見えます。

あくまで私見ですが、職場や友人と話していると訪問リハビリの分野では特にそうした印象があります。

事業規模月給賞与年収
10~99人316,500円563,600円4,361,600円
100~999人297,700円694,000円4,266,400円
1,000人以上297,700円842,800円4,415,200円

【都道府県別】言語聴覚士(ST)の給料・平均年収

都道府県別のSTの平均年収は下記のようになっています。

男女平均男性女性
全国平均約433万円約452万円約410万円
北海道約411万円約442万円約378万円
青森県約388万円約388万円約401万円
岩手県約445万円約464万円約437万円
宮城県約401万円約414万円約387万円
秋田県約470万円約438万円約488万円
山形県約435万円約471万円約414万円
福島県約447万円約484万円約415万円
茨城県約470万円約515万円約454万円
栃木県約462万円約485万円約420万円
群馬県約438万円約443万円約429万円
埼玉県約447万円約465万円約425万円
千葉県約442万円約476万円約382万円
東京都約445万円約469万円約423万円
神奈川県約430万円約451万円約406万円
新潟県約407万円約417万円約400万円
富山県約453万円約468万円約442万円
石川県約453万円約453万円約453万円
福井県約426万円約463万円約395万円
山梨県約447万円約447万円約442万円
長野県約419万円約446万円約392万円
岐阜県約445万円約439万円約459万円
静岡県約439万円約472万円約411万円
愛知県約452万円約463万円約435万円
三重県約448万円約432万円約465万円
滋賀県約473万円約475万円約470万円
京都府約423万円約436万円約406万円
大阪府約451万円約483万円約405万円
兵庫県約439万円約467万円約413万円
奈良県約455万円約485万円約418万円
和歌山県約434万円約455万円約390万円
鳥取県約418万円約451万円約377万円
島根県約429万円約431万円約428万円
岡山県約453万円約480万円約421万円
広島県約425万円約450万円約397万円
山口県約448万円約439万円約471万円
徳島県約402万円約414万円約330万円
香川県約432万円約441万円約409万円
愛媛県約443万円約455万円約428万円
高知県約416万円約422万円約410万円
福岡県約435万円約438万円約430万円
佐賀県約417万円約449万円約378万円
長崎県約373万円約399万円約361万円
熊本県約389万円約407万円約374万円
大分県約394万円約411万円約369万円
宮崎県約396万円約382万円約407万円
鹿児島県約434万円約431万円約439万円
沖縄県約442万円約445万円約439万円

地域によって人口密度、施設規模や特性、医療ニーズなどが異なるため、給料にも差が生じます。基本的には大規模施設が多く、ニーズの高い都市部の給料が高い傾向にありますが、給料だけでなく、自身のキャリアプランなどに沿って職場を選ぶことが大切です。

2.最も給料・年収が高い勤務先は?

STの活躍の場は、医療にとどまらず、福祉や教育の分野にも広がりを見せています。では、どの職場が最も給与水準が高いのでしょうか?

総合病院や大学病院の口腔外科、耳鼻科、リハビリテーション科、専門リハビリ施設などの医療機関で働く場合、資格手当がつくことも多く、福利厚生も充実しており、安定した環境が期待できます。

また、都道府県や自治体が運営する公立病院や保健所で勤務すると、公務員としてより高い収入が見込めるでしょう。 一方で、特別養護老人ホームやデイサービスセンター、老人保健施設、訪問リハビリといった福祉施設で働く場合、病院勤務と比べて年収はやや低めとなる傾向があるようです。

養護学校や聾学校などの特別支援学校で教員として働く場合、公務員待遇となるため、安定した収入を得ることができます。

3.今後言語聴覚士(ST)の給料はどうなる?言語聴覚士の年収推移

STの給料は、今後どのように推移していくのでしょうか。下記に、過去5年分のSTの給料をまとめました。

平均年収平均月収平均賞与
2023年約427万円約29.6万円約71.3万円
2022年約431万円約30万円約69.8万円
2021年約427万円約29.6万円約71.3万円
2020年約419万円約29.1万円約70.2万円
2019年約411万円約28.9万円約64.5万円

平均年収は5年間で約15万円増えており、STの給与は緩やかに上昇している傾向にあります。急激に給与が増えることはありませんが、今後も各分野のニーズは増加していくため、景気に左右されて突然減る恐れもないと考えて良いでしょう。そのため、着実にスキルを積んでいけば、今後も安定した収入を得られると予想できます。

4.言語聴覚士(ST)が高収入を得るコツ

ここまで、厚生労働省の統計データから読み取れるSTの給与の現状について述べてきましたが、最後に年齢や経験年数、役職の有無や事業規模に頼らずに昇給する方法を簡単に紹介します。

キャリアアップできる資格を取る

認定言語聴覚士や栄養サポート専門療法士など、資格や認定を受けることで昇給する方法があります。

言語聴覚士×資格~STにおすすめの資格とキャリア・スキルアップ~
言語聴覚士(ST)の認定資格~認定言語聴覚士のまとめ~

転職をする

給与の高い職場へ転職する方法です。

先にも述べたように、事業規模の大きな職場や、現状訪問リハビリや、補聴器の営業職は給与が高い傾向にあるため、転職して昇給を狙います。

PTOT人材バンクは年収を考慮した上での転職サポートを行っていますので、ご希望の年収額などがある場合はキャリアパートナーに遠慮なくご相談ください。

転職するか迷っていてもOK

開業する

吃音や言語治療など、保険診療ではなく自費診療で稼いでいく方法があります。

起業時は出費が多くマイナスになるなどリスクも大きいですが、軌道に乗れば稼いだ分だけ利益につながります。

言語聴覚士(ST)が開業する方法とよくある誤解や注意点

5.まとめ

言語聴覚士(ST)の年収や給与UPに関する内容を紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか?

最後に重要なポイントを再度整理しましたので、ぜひ参考にしてみてください。

  • STの平均年収は432万円だが、これはすべての年齢での平均値であり、経験年数や年齢を重ねることで高くなる傾向にある。
  • 男女で年収が異なり、男性の方が高い傾向にある
  • 事業規模が大きい職場のほうが給与は高い
  • 昇給をするためには、役職につく、キャリアアップの資格を取る、給与の高い職場へ転職する、開業するという方法がある

PTOT人材バンクは年収を考慮した上での転職サポートも行っておりますので、キャリアパートナーに遠慮なくご相談ください。

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言語聴覚士 給料
言語聴覚士_退職金

【参照】
国税庁HP 令和5年分 民間給与実態統計調査
厚生労働省HP 賃金構造基本統計調査

令和5年賃金構造基本統計調査
職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)(役職者を除く)
職種(小分類)、年齢階級別き
まって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
職種(小分類)、年齢階級、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
都道府県、職種(特掲)、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) 全国~埼玉、千葉~愛知、三重~山口、徳島~沖縄

令和4年賃金構造基本統計調査
職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
令和3年賃金構造基本統計調査
職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
令和2年賃金構造基本統計調査
職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
令和元年賃金構造基本統計調査
職種別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額