言語聴覚士(ST)として経験を積んでキャリアアップを考える人の中には、「リーダー」として働くことを考えている方もいるのではないでしょうか。
リーダーという責任ある立場で仕事をすることは仕事量や責任感など心身の負担が増える反面、マネジメント能力や判断力、コミュニケーション能力など自身のスキルアップに繋がる絶好のチャンスでもあります。
今回は、STのリーダーとは具体的に何をするのか、リーダーになる方法やお給料などについて解説します。
目次
1.言語聴覚士(ST)のリーダーの仕事内容
リーダーはSTとしての臨床業務のほかにどんな仕事をするのか想像がつかないという人も多いと思います。
そこでリーダーの仕事について、いくつかの具体的な例を挙げてご紹介します。
若手の意見をくみ取る
カンファレンスなど業務に関する会議の場では、自身の年齢や経験不足による自信のなさなどが原因で、若手スタッフは自ら意見を発信するのが少なくなりがちです。
ただ、発言しにくい空気が原因となっていることもあるため、参加者全員が話しやすい雰囲気づくりをすることもリーダーの仕事です。
日頃からコミュニケーションをとるなど全員が話しやすい職場環境をつくることで、会議の際も若手スタッフが発言しやすく、経験が少ないからこその新しい視点での意見が出るなど、職場にとって良い刺激ともなりえます。
業務量や残業を把握する
スタッフの勤務日や勤務時間などの勤怠管理もリーダーの仕事です。具体的にはスタッフによって勤務時間に大きな差がないかの確認や、実際の仕事量と勤務時間に隔たりがないかを把握したりします。
忙しい時期には自身の仕事に集中しがちですが、経験の浅い若手になるほど仕事効率は下がる傾向にあります。与えられた仕事量は適正か、効率アップの方法はないかなど、忙しい時期にこそ周囲に目を向けてケアをすることも大切です。
また、スタッフの疲労度やストレスなど様子の変化にも気を配り、可能な範囲で軽減できるよう仕事量や内容の調整もします。
若手のアドバイスや指導をする
若手スタッフの教育もリーダーの仕事です。臨床に対する基本的な姿勢や技術の指導など新人教育はチーム全体で行っていくべきではありますが、指導内容やその方法、方針をまとめていくことはリーダーが担います。
良い行いが出来た時に褒めるなど成功体験を強化するほか、チームの誰かが失敗してしまった時にも、次に活かせるよう指導するなどしっかりとフォローします。
上司や他部門との連携の橋渡し
STのチームリーダーとして意見や要望などをまとめ、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)などリハビリ室全体に伝達共有したり、より円滑にリハビリを進めるために医師や看護師と連携を取るための大きな窓口となることも重要です。
患者様や利用者様それぞれの個別な情報のやりとり(訓練状況の話し合いや時間割など)は担当STが責任を持って行うことが望ましいですが、家族に依頼する書類などリハビリの時間内では対応しきれない仕事を看護師に依頼する流れを作るなど、スタッフ全体が働きやすいよう他部門に働きかけ、調整を行います。
2.言語聴覚士(ST)がリーダーになる方法
リーダーとしての仕事がわかってきたところで、今度はリーダーを目指すためには具体的にどんな方法があるのか見ていきましょう。
同じ職場でキャリアを積む
リーダーになるためには、STとして十分な知識と経験が必要です。自分と一緒に仕事をする仲間達をまとめ、指導していく立場になるので臨床や学会発表などの実績を積み、周囲からの評価や信頼を得ていきます。
長く勤めることで、実績が得られるほか、その施設に合った仕事の流れが見えてきたり、顔が利くため他部門とも仕事がしやすくなり、よりリーダーとしての力を発揮しやすい環境が得られます。
リーダーを募集している職場に転職する
同じ職場に長く務めることは信用を得る一つの手ですが、人数が多い職場などではなかなかチャンスに恵まれないということもあると思います。そのような時には思い切って新しい職場に転職し、これまでの経験を活かしていく方法もあります。
転職サイトなどを見てみると、募集要項に「主任募集」「ベテランスタッフ募集」などの文言が記載されていることがあります。そのような施設では中心となって引っ張っていってくれる人材を求めていますので、機会にも恵まれる可能性が高いです。
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3.リーダーとして求められるスキル
晴れて言語聴覚士(ST)のリーダーになった際には、チームを率いていく立場として、より自身のスキルを高めていく努力をする必要があります。
ここではリーダーに求められるスキルにはどのようなものがあるのか見ていきましょう。
ST業務に必要な知識と技術
まずはSTとしての役割を十分に果たしていることが欠かせません。疾患・治療、訓練に対する知識と技術、そして積極的に勉強会や学会へ出席するなど、知的探求心の向上など、若手スタッフ達の見本とも言えるような存在が理想です。
リーダーという立場も踏まえると、自身の臨床業務を遂行するだけではなく、周囲の業務状況も見ながら、フォロー出来るだけの知識・技術を持ち、チームとして全体をマネジメントしていくスキルが必要となります。
コミュニケーション能力
コミュニケーション能力は、良好な対人関係を築くという意味合いだけではなく、リーダーとしてチームをいかに目指す方向へ導いていけるかということにも繋がります。
リーダーシップを発揮すべき場面ではしっかりと全体を指揮することが必要ですが、一方的に発言するのではコミュニケーションとは言えません。しっかりと周囲の声も聞きながら、全体が同じ目標に向かって努力していける環境を目指しましょう。
またチームやリハビリ室内だけでなく、医師や看護師など他部門に対して要望を提案する際にも部門間での双方が納得できるよう調整する機会が多くありますので、普段から関係作りをしておくことや、自身の意見をしっかりと伝えるプレゼンテーション能力、交渉力も必要となります。
物事の本質を見極める力
これは取り組むべき課題や問題点を分析して計画や予想を立てたり、問題を解決したりする能力です。臨床での訓練計画立案時に障害の核にアプローチするために問題点を探るのと同様に、その他の業務においても課題や問題の核となる本質を見極める力が必要です。
表面的な解決だけでなく、困っている事柄をなぜそうなっているのか、問題点を抽象化し考えを整理して、共通点を洗い出すなどしっかりと本質をとらえて問題解決に取り組むことで、よりまとまりのあるチームや働きやすい職場環境を作っていくことが出来ます。
4.言語聴覚士(ST)のリーダーの給料事情
厚労省のデータによるとリーダーになった場合、施設によっては役職手当がつく場合があります。手当が付けば給料アップとなりますが、金額としてはあまり大きい額ではないため、給料が劇的に増えるということはないでしょう。
そのため、給料アップを狙うのであれば役職手当が高い職場に転職したりすることを考える必要があります。
5.まとめ
今回は言語聴覚士(ST)のリーダーに関する仕事内容となる方法についてご紹介しました。STとして臨床のキャリアを積み、主任などリーダー的立場となることは簡単ではありません。
しかし、日頃から将来リーダーになることを目標にスキルを磨くことは、臨床や勉強のモチベーションアップにもなります。STとして活躍の場を広げたいと考えている方は是非リーダーを目指してみてください。
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【参照サイト】
厚生労働省 賃金構造基本統計調査 / 令和2年賃金構造基本統計調査
1.職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
3.【参考】職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)(役職者を除く)