一般的にインターンシップとは、就業体験を通じて、仕事や社会の理解を深めることができる制度のことです。実施期間は1日で完結するものを中心に、月単位にわたる長期のものまでさまざまあり、社会に出る前に実際の現場を体感できる機会になります。
今回は、言語聴覚士(ST)がインターンシップに参加するまでの流れや、さまざまな疑問点について解説します。
目次
1.言語聴覚士(ST)のインターンシップの流れ
STのインターンシップも一般の企業のインターンシップと同様に、興味のある職場の環境を知ることや業務を体験して仕事に対する理解を深めることを目的として、医療や介護の臨床現場もしくは補聴器等のメーカー企業を訪問して就業体験を行います。
臨床の見学や参加を中心に、施設スタッフが朝のミーティングではどのようなやりとりがされているか、臨床以外の時間の使い方はどうしているのか、他部門との連携はどのようにしているかなど、STが実際に行っている日々の業務について学びます。
インターンシップをおこなう施設は少しずつ増えてきていますが、臨床は命を扱う仕事であることや、臨床業務のほか実習生の受け入れなど多忙である場合が多く、すべての病院で行っているわけではありません。
行ってみたい病院があるときは、希望する施設や企業のホームページ、学校のキャリアセンター等を通じて、インターンシップを開催しているか調べてみる必要があります。
もし希望している病院で開催していなくても、臨床現場を体験できる貴重な機会なので、別の施設のインターンシップに申し込みしてみるのも良いでしょう。
2.インターンシップ先の選び方
言語聴覚士(ST)がインターシップ先を決める際には、将来的に自分にとって良い経験となるように、また、学業と並行して進められるよう、十分に考えておかなければならないことがあります。
これを怠ると授業の単位を落としてしまったり、インターンシップ先にも迷惑をかけてしまう場合も考えられますので、自分の確保出来る時間や体力なども含め、よく検討しておきましょう。
希望する専門の施設・企業
インターンシップは実際の業務を体験することで、仕事に対する理解を深めることを目的としています。そのため、特に幅広い分野のリハビリを担当しているSTのインターンシップでは自分が希望している分野を選択すると就職の際に役立ちます。
まずは成人と小児どちらが希望なのか、どちらも見てみたいのであれば大学病院のような大きな施設では両方を扱っている場合もあります。また、病院によって急性期中心、回復期中心などの特色もあるため、ホームページなどで確認すると良いでしょう。
より詳細な専門分野(嚥下障害、高次脳機能障害、失語症、言語発達障害、聴覚障害など)の取り扱いについては、現在所属しているSTや医師の専門に影響されることが多いので、STの紹介のほか、リハビリテーション科や脳神経外科の医師などの専門を確認しておくことも有用です。
時期・期間
インターンシップをおこなっている施設の多くは、学業を考慮して長期休暇を利用したものや随時応募可能なものがほとんどです。期間は1日体験のものが多く、スタッフが朝出勤してからどのような流れでリハビリやその他の業務を行っているかがわかるようになっています。
募集は在学生から既卒者まで幅広いですが、評価実習や臨床実習のある学年は実習期間が4週間~8週間と長く、長期休暇とも重なる可能性があります。また、実習は事前の準備期間と学校への報告レポート等を作成する時間も必要となるため、スケジュールに無理がないよう注意が必要です。
経験出来る内容
インターンシップでは実際の流れを知ることに重きを置いているため、実習とは少し異なった経験ができます。例えば朝のミーティングや訓練開始時間までに済ませておくべき情報の確認、各種カンファレンスへの出席、カルテ記載など臨床以外の業務の見学が挙げられます。
多くの時間を先輩ST と行動することになるため、臨床業務以外にSTが何をしているのか知る良い機会になります。1週間などある程度ゆっくり参加出来る場合は、よりその施設の全体像を把握することができるため、実際にSTとして就職した際のイメージを持ちやすくなるでしょう。
いくつ参加するのが良いのか
成人分野や小児分野などおおまかな希望が決まっている場合は、無理に多くのインターンシップに参加する必要はありませんが、迷っているという人は、積極的に参加して、実際の臨床を見たり、先輩STからその専門を希望した理由や仕事のやりがいについて話を聞いてみると自分の進路を考えるよいきっかけになるでしょう。
リハビリのインターンシップは募集数が少ないことが多いので、随時施設のホームページや学校のキャリアセンターなどを確認して、早めに応募するようにしましょう。
3.インターンシップ前に覚えておきたいマナー
インターンシップはあくまでも職業体験であり、就職活動ではありません。
しかし、インターンシップに参加した病院で働きたいと希望したときに、インターンシップへの参加実績が加味されたり、スタッフの印象に残っている場合がありますので注意しましょう。
服装・髪型
言語聴覚士(ST)がインターンシップに参加する際の服装は施設によって異なりますが、実習でも使用するケーシーを持参する場合が多いので用意しておきましょう。その際、目立つ汚れ等がないか確認し、アイロンをかけるなどきれいに整えておくと良いでしょう。
髪型は前髪が目にかかっていないか、だらしなく感じられる長さになっていないかなどを確認し、髪を結ぶ、事前にカットしておくなど清潔感を意識しておきましょう。
また、柔軟剤や整髪剤など香りの強いものは、体調のすぐれない方にとって吐き気を誘発したり、頭痛に繋がったりと悪い刺激となるため、できるだけ使用は控えましょう。
挨拶・言葉遣い
インターンシップでは施設のスタッフや患者様、ご家族などたくさんの人と顔を合わせることになります。すれ違う際には「おはようございます」「こんにちは」「お疲れ様です」など笑顔ではっきりと挨拶をするように心がけましょう。
言葉遣いに関しては、一般的な敬語で問題ありません。質問や会話の際も無理に難しい専門用語を使う必要もありませんし、難しく考える必要もありませんが、くだけた印象にならないよう、丁寧な言葉遣いで話すようにしましょう。
また患者様とお話する機会が得られた場合には、高齢な方も多く、早口だと聞き取れない可能性もあります。その際には、ゆっくり落ち着いたトーンを意識して話すと良いでしょう。
時間厳守
インターンシップではSTを目指すあなたのために、先輩ST以外にもたくさんの人が関わっているということを忘れてはいけません。
STという仕事の素晴らしさや施設のことをより知ってもらうために、各々のスケジュールを調整して、インターンシップを開催していますので、時間を守らないと多くの人に迷惑がかかってしまいます。
時間を守らないと迷惑がかかるだけでなく、予定していた体験ができなくなってしまうなど、せっかくの機会を無駄にしてしまう可能性もありますので、スケジュールをよく確認し、5分前行動をとるよう心がけましょう。場所の移動など不安な場合は事前に質問して、間違いのないよう注意しましょう。
4.言語聴覚士(ST)のインターンシップ事情
STは養成校に入学したときから、基本的にSTになるという前提で、国家試験の合格、就職に向けて勉強していきます。
その過程で見学実習、評価実習、臨床実習など、一般企業への就職希望者に比べると実際の仕事場面を見る機会が多く、学校の課題も多いため、インターンシップに行かない選択をする人も多いです。
しかし、実習だけでは慣れない環境や緊張、症例に対するレポートで精一杯になってしまい、STの仕事全体を見ることは難しいと思います。
また、実習で経験するSTのリハビリから評価や訓練の計画が大変、寝不足などネガティブなイメージを持ってしまいがちですが、実際に働き始めるとSTだからこそ感じられる楽しい側面がたくさんあります。
学生という立場を十分に活かして、自分に合った専門分野や施設選びができるよう、インターンシップに参加し、先輩STやスタッフ達の話を聞くなど、積極的に行動することをおすすめします。
5.まとめ
今回は言語聴覚士(ST)のインターンシップについてご紹介しました。一般企業では当たり前のインターンシップですが、病院や介護福祉施設などではまだ数が少なく、なかなか見つけにくいこともあるかと思います。
また、高学年になると実習や卒業論文など忙しくなってきます。そのためこまめにキャリアセンターに足を運んで情報を得たり、施設のホームページを確認するなどして、早い段階から将来を見据えて動き出すことが肝心です。
インターンシップで得られた経験も実習と同様、就職してからとても役に立つものになりますので、ぜひ積極的に参加してみてください。
不明点があれば、是非PTOT人材バンクのキャリアパートナーに遠慮なくご相談ください。
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