未就学児の日常生活やことば、聴く、食べるといった動作をサポートできる児童発達支援。

そんな発達支援の職場は人手不足であり、令和3年の診療報酬の改定で言語聴覚士に関する加算項目が設けられたため、より需要が高くなっている状態です。

今回は、そんな発達支援の現場で言語聴覚士(ST)に求められる役割や仕事内容、職場について紹介させていただきます。似ている就職先についても説明しますので、子どものサポートに興味のある方はぜひ参考になさってください。

1.発達支援における言語聴覚士(ST)の役割

発達支援におけるSTの役割を説明する前に、まず「発達支援」とは何かを整理していきます。厚生労働省の発達支援ガイドラインによると、次のように定められてます。

“児童発達支援は、児童福祉法第6条の2の2第2項の規定に基づき、障害のある子どもに対し、児童発達支援センター等において、日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練その他の便宜を提供するものである”

STはこの「日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応」に対して「ことば・聴く・食べる」のスペシャリストとして、評価や訓練をしていくことになります。

児童発達支援で求められる役割

具体的に、児童発達支援でSTに求められる役割は、下記の通り大きく3つです。

子どもたち一人ひとり疾患や問題点は異なるのはもちろん、性格や個性、家庭環境が違うので、個々にあわせたリハビリやご家族へのサポートが必要とされます。

ことば知的発達の遅れ、対人関係の障害、構音障害、吃音など音声障害に対して、評価・訓練を行います。
聴く聴覚障害のある児童に対して、検査や訓練、補聴器のフィッティングを行います。言語の獲得段階にある児童に関しては「ことばの獲得」もサポートします。
食べる食べ物を口に入れる・噛む・飲み込むことに問題に対して原因を究明して、唇や舌や喉などのリハビリを行います。

児童発達支援センターと児童発達支援事業所の違い

次に発達支援の職場として挙げられる「児童発達支援センター」と「児童発達支援事業所」について解説していきます。共通点が多く業務内容もほとんど同じなのですが、この2つ説明と、その違いも説明します。

児童発達支援センター

”児童発達支援を行うほか、施設の有する専門性を活かし、 地域の障害児やその家族への相談、障害児を預かる家族への援助・助言を合わせて行う地域の中核的な療育支援施設”

厚生労働省では、児童発達支援センターの役割をこのように定めています。

つまり、子どもさんの評価やリハビリだけではなく、児童相談所や障害児入所施設など地域連携で他職種との関わりも色濃い職場だと言えます。

STとしての療育の現場だけでなく、そうした業種との情報・意見交換や人付き合いも求められるため、児童発達支援事業所と比べると、より幅広い専門的な知識や臨床の知識に加えて、福祉の知識や地域連携のノウハウを求められます。

児童発達支援事業所

こちらは簡単に言うと、児童発達支援センター以外で児童発達支援を行う施設であり、児童発達支援センターよりも基準を緩和し、実施事業所の拡大を目指したものです。

そのため、発達支援が必要な子どもにサービスが行きわたるよう地域密着で展開されており、子どもさんや親御さんとも親密度が高くなり地域に根差した職場と言えます。

放課後等デイサービスとの違い

また、もうひとつ発達支援に関係のある職場として「放課後な等デイサービス」という施設がありますが、児童発達支援センターと児童発達支援事業所が2歳から就学前が対象であるのに対し、放課後デイサービスは小学生~高校生が対象です。

細かな対象年齢は施設によりますが、対人関係や集団行動に対する関わりや、学習障害、ことばや聴こえ・発達障害に対して思春期の精神面でのフォローも重要になってくるため、児童発達支援センターでの仕事とは大きく異なるといえるでしょう。

2.児童発達支援センターでの仕事

ここまで、発達支援についての概要や施設の種類について述べていきましたが、基本的な業務は近しいため、発達支援センターを例に具体的な仕事の様子を紹介していきます。

言語聴覚士(ST)の基本的な仕事内容とスケジュール

児童発達支援センターにおけるSTの業務内容は、子どもたちに個別や集団で療育を行うことです。遊びや作業・挨拶、お昼ご飯を通じながら子供たちの発達を支援します。

ことばの問題があるお子さんには、ことばの意味や発音を絵カードや道具を使ってマッチング訓練をしたり、社会性に問題のあるお子さんには表情や感情を時系列で考えて一緒に人の気持ちや行動の理由を考えたり適切な言動は何かを考えます。

タイムスケジュールの一例も挙げておきます。

時間業務内容
08:30~09:30送迎
09:30~10:00到着・健康チェック・水分補給・トイレ
10:00~11:30朝の会(あいさつ、手遊び) 個別療育(言語聴覚療法など) 集団行動(運動遊び・屋外活動・ゲームなど)
11:30~13:00お昼ご飯
13:00~15:00お昼寝
15:00~16:00おやつ
16:00~17:00自由あそび
17:00~18:00送迎

以上が児童発達支援センターでの業務になります。児童発達支援事業所もおおむね同じ業務・一日の流れとなっています。

児童発達支援センターで働くメリット

発達支援センターのメリットは、なんといっても子どもたちの成長を、一緒に見ていけることです。子どもたちの可能性を広げることができるので、やりがいをとても感じます。

また、「引く手あまた」の業界ですので、求人も多く就職しやすいことも利点です。

STのスキルアップの視点からすると、児童発達支援センターでは、医療機関や児童相談所などの地域連携も業務に含まれるので、発達支援の知識はもちろん、福祉の知識やより良い連携のやり方などノウハウを身に着けることができます。

児童発達事業所では、他の職場や施設とのやり取りが減る分、子どもたちや親御さんとのコミュニケーションがより多くなると言えるでしょう。

児童発達支援センターで働くデメリット

働きがいでもあるためデメリットといえるか分かりませんが、子どもたちの将来に与える影響を考えると責任が大きく、精神的に大変に感じる場面に遭遇することが多いかもしれません。

ですが、療法士として責任をもって経験や勉強を重ねて療育するのは当然ですし、責任感を持って仕事をする方が、子どもたちやご家族と分かち合える喜びも大きいものとなるでしょう。

3.児童発達支援がおすすめな人の特徴

児童発達支援がおすすめな人は、ずばり子どもたちが好きな人です。また、子どもの得意なことや良いところに気づける人、ことばや態度に出てきにくい子どもたちのSOS(身体機能面・精神面)を察することができる人にもおすすめです。

子どもは大人の感情に敏感なため、自分に好意や善意があるのか肌感覚で受け取ってしまいます。ですので、子どもが好きな人や慣れている人は、仲良くなりやすいと言えます。

また、スキルや能力面でいうと、観察眼は重要になってきます。疾患の特性上自分の感情や感覚をうまく外に出せず、無反応になったり、泣き出したり別の行動に置換して表現してくる子どももいるので、普段の様子との違いや「なんか変だな?」と察する力は求められるでしょう。

4.まとめ

発達支援は人手不足と診療報酬の改定に伴って、需要が高くなっている領域です。

求められる言語聴覚士(ST)の役割は、子どもたちの疾患や個性に合わせた「ことば」「聴こえ」「飲み込み」への評価とリハビリのアプローチです。

発達支援の職場として「発達支援センター」「発達支援事業所」がありますが、「発達支援センター」は地域の中核を担う施設で数が限られていて、「発達支援事業所」は事業所拡大を目的に作られています。

発達支援センターでの仕事は、送迎からはじまり、遊びや集団行動や個別療育を通して子どもの発達にアプローチします。

子どもの成長を間近に感じることができる反面、一生に関わる責任感じやすいところと言えます。しかし、深く関わるからこそ得られる喜びは大きいです。

こどもが好きな人、子どもたちの得意なことや良いところに気づける人、ことばや態度に出てきにくい子どもたちのSOS(身体機能面・精神面)を察することができる人には特におすすめです。

今、小児領域では言語聴覚士(ST)を求めています

冒頭でもお話しましたが、発達支援の職場は引き続き人手不足であり、昨今の診療報酬改定で言語聴覚士に関する加算項目が設けられたため、需要が高くなっている状態です。

「専門的支援加算」が新設され、STを常勤にしたい職場が増えているため、転職しやすい時期と言えます。以下の小児求人特集で詳しく説明しておりますので、こちらも合わせてご覧ください。

求人特集リハビリ職の新しい働き方

その他の求人情報に関してはPTOT人材バンクをご参考ください。
言語聴覚士(ST)の求人・転職情報はこちら

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【引用サイト】
厚生労働省、発達支援ガイドライン
児童発達支援センターの位置づけについて