言語聴覚士(ST)は医療に関わる仕事であり、専門とする範囲も音声言語障害、聴覚障害、摂食嚥下障害、認知症、高次脳機能障害など幅広いため、とても難しい印象を持たれがちです。
STを目指す方の中には、学歴について気になっている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、STになるために必要な学歴について解説します。また、実際に臨床に出始めてからの違いについても詳しく解説していきますので、参考にしてみてください。
目次
1.言語聴覚士(ST)になるために学歴は関係ない
結論から言うと、STとして働くには国家試験に合格し、免許を取得していれば基本的には学歴は関係ありません。
ただし、国家試験の受験資格を得るためには養成校で必修単位を取得している必要があり、養成校の受験には高校卒業と同程度の学力を有するという条件が付されている場合が多いため、全日制などの高校を卒業するか高卒認定を得ることがSTを目指すために必要な最低限の学歴と言えます。
ST免許取得後は養成校の種類(大学、短期大学、専門学校)に関わらず、ST としてのスタートは同じです。
2.大学・短期大学(短大) ・専門学校の違い
言語聴覚士(ST)の養成校には大学、短大、専門学校の3つがあり、じっくり学びたい、出来るだけ早く臨床に立ちたいなど自身の希望や勉強の仕方などに合せて選ぶことができます。
修業年限 | 特徴 | |
大学 | 4年制、2年制 | 医療系や福祉系、小児系の学部・学科などとの連携により様々な方面から言語聴覚療法を学びます。また言語療法以外にも一般教養など幅広い授業があり、ST以外の一般企業への就職も可能です。最終学歴は大卒となり、学士号が取得できます。 2年制は4年制大学の既卒者向けです。 |
短期大学 | 3年制 | 大学と同じく、言語聴覚療法の専門知識だけでなく、一般教養まで幅広く学べますが、就業期限が1年短いため、必修科目を中心とした授業になります。 |
専門学校 | 2~4年制 | 一般教養の科目はなく、国家試験に必要な科目や臨床に即した実践だけを集中して学ぶため、短期間で十分な知識と即戦力になる技術を身に着けることができます。 3年制が多く、2年制は4年制大学の既卒者向けです。 |
各養成校の違いについてより詳細に知りたい方はこちらのURLがおすすめです。
「言語聴覚士を目指す大学・短大・専門学校の違いと選び方~STの養成校について~」
国家試験に合格してSTになるという目標はどの学校も同じですが、授業内容や学費など違いがありますので、自分に合った学校選びをしましょう。
3.給与やキャリアは学歴で変わる?
言語聴覚士(ST)になるまでの過程において学歴は関係ありません。では、STとして就職したあとの待遇に違いはあるのでしょうか。働くうえで特に気になる給与とキャリアについてみてみましょう。
給与は基本的には同じ
STの求人情報を見てみると、「給与○~○万円」というように幅を持たせて記載してあります。これは経験年数やST以外の資格手当など個人の能力による差で、学歴によるものではありません。そのため施設により給与額のばらつきはありますが、卒業した養成校に関わらず、STとしての基本給は同じです。
養成校による差が出る可能性があるとすれば、在学中に取得した医療や福祉などに関する資格を持っているなど、就職先の施設にとって有益と思われる能力がある場合です。
STになることだけを目標として実践的に授業を進める専門学校に比べ、4年生大学のように福祉や教育に関する学部が併設されており、時間的にも余裕がある場合は授業選択の仕方により、様々な資格を得ることができます。そのため、結果として給与があがるということはあり得ます。
キャリアは能力次第
キャリアについても、新卒として入職したSTは同じスタートラインから始まるため、学歴による差はないと考えてよいでしょう。
医療福祉関係の社会人経験があるなど特殊な場合を除き、基本的にキャリアは経験年数を重ねる中で他の資格を取得したり、学会での臨床研究発表で実績をつくるなど自身の能力を向上することが重要ですので、日々の臨床への向き合い方で差がつくことが多いです。
STはリハビリスタッフの中でも数が少ない施設が多く、仕事内容への理解度も他職種に比べるとまだまだ低い職業と言えます。自分から積極にSTについて知ってもらう機会を設けたり、勉強会を開催して嚥下などに関する知識を共有するなど、小さな積み重ねが大事です。
また、各施設の人数は少ないですが、地域や学会などST同士の繋がりが強く、自分が所属する施設以外での臨床に関する情報や、珍しい症例などについての知識も得ることができますので、こちらも積極的に活用していくと良いでしょう。
4.言語聴覚士(ST)を目指す上で必要なこと
これまで解説してきたように、STになるために、またSTとして働く上で、学歴によって差が生まれることはほとんどありませんので、それほど気にする必要はなく、どのタイプの養成校を選んでも授業をしっかりと聞いて理解することや、国家試験に向けてコツコツと努力していくことが大切です。
また、STとして働くためには国家試験に合格することが必須条件ですが、養成校で学ぶことはあくまでも基礎知識であり、STとして働き始めてからが本格的な勉強の始まりとも言えます。
臨床では養成校で学んだ基礎知識をもとに、患者様に検査や訓練などを行っていきますが、患者様それぞれの症状や生活背景、ニーズなど様々な条件が加わることで、リハビリの複雑さが増します。
その際、教科書などで学んだ知識で足りない部分を補うのは、「経験」と「努力」です。STが成長するためには、たくさんの患者様と関わり合いながらセラピストとしての経験を重ね、症状や訓練方法などわからない知識に関して考察したり、勉強会で新たな知見を得る、文献を読むなど日々努力を続けていく必要があります。
STでいる限り勉強し続ける、と思うととても大変なことのように感じられますが、STの仕事は教科書のような勉強に限らず、あなた自身の趣味や、ふと目にした記事など様々な知識を蓄えることも役立てることができますので、楽しみながら勉強を続けられます。
5.まとめ
今回は言語聴覚士(ST)に必要な学歴と就職後に変わることについて解説しました。STになるためには、養成校への受験資格として高校卒業程度の学力が必要ですが、入学後は学歴による差はなく、STとしてのスタートラインは同じです。
逆に言えば、授業や臨床に対する姿勢や、日々の努力によって差が大きくなっていきますので、仲間たちと切磋琢磨しながら、自分の目標とするSTを目指しましょう。
ご不明点があれば、是非PTOT人材バンクのキャリアパートナーに遠慮なくご相談ください。
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