言語聴覚士(ST)としてキャリアを積む上で、ダブルライセンスの取得を考えている方も少なくないと思います。ダブルライセンスを目指す際には、「自分が深めたい専門分野」を明確にし、それに対応した資格を選ぶことが大切です。
この記事では、言語聴覚士(ST)がダブルライセンスを取得することのメリットや、分野別におすすめの資格を紹介します。医療・介護の現場でより重宝される言語聴覚士(ST)を目指して、ダブルライセンスを取得しましょう。
目次
1.言語聴覚士(ST)がダブルライセンスを取得するメリット
ダブルライセンスとは、言語聴覚士(ST)としてのスキルを強化するために、医療や介護に関連する資格を追加で取得することを指します。この資格を取得することで、自分の専門性が広がり、より多角的なアプローチで患者さんに対応できるようになります。支援の幅が広がり、自己アピールにも有効です。
ただし、ダブルライセンスを活かすためには、取得の目的をしっかりと明確にすることが重要です。目的が定まらなければ、せっかくの資格も効果を発揮できない可能性があります。
また、言語聴覚士(ST)としての経験を積むことで、中途半端なキャリアになるリスクを避けることができます。日本言語聴覚士協会の「生涯学習プログラム」を活用して「認定言語聴覚士」の資格を取得し、さらに専門性を磨くこともおすすめです。
認定言語聴覚士について知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
2.患者さまの健康と心のケアを目指す言語聴覚士(ST)に最適な資格
心と体の両側面から患者さまを支援できる資格を手に入れることで、提供できるサポートが増え、より深い信頼関係を築くことができるようになります。この章では、患者さまを精神的・身体的に支えるために役立つ資格をご紹介します。
プロフェッショナル心理カウンセラー
プロフェッショナル心理カウンセラーは、全国心理業連合会(全心連)が認定する資格で、『一般』という基礎レベルの資格と、国家資格に匹敵する専門性と履修時間が必要な『上級』の2段階があります。
この資格を取得することで、心理学や心理療法に関する高い専門知識を得ることができ、患者さまの心のケアをサポートするためのスキルが向上します。結果として、リハビリにおけるコミュニケーションが円滑になり、信頼関係の構築にも役立つでしょう。
試験を受けるためには、全心連が提供する教育プログラムを修了する必要があります。また、管理職や教職、介護職などでの社会経験が実習の一部として認められる場合もありますので、興味がある方は全心連の認定教育機関に相談すると良いでしょう。
試験内容には、筆記試験、口頭試問、さらに上級資格では小論文の提出も含まれています。
介護福祉士
介護福祉士は、介護に関する専門的な知識やスキルを持っていることを証明する国家資格です。介護福祉士は、食事や入浴、排泄といった身体的な介護だけでなく、生活支援やご家族へのアドバイス、さらに社会参加の支援なども行います。
言語聴覚士(ST)は病院だけでなく、介護保険施設でも活躍することが多いため、介護に関する知識を身に付けることで、患者さまへのサポートがより充実するでしょう。
介護福祉士の受験資格には「養成施設ルート」「福祉系高校ルート」「実務経験ルート」「経済連携協定ルート」の4種類があり、実務経験ルートで受験する場合、3年以上の介護業務経験と研修の修了が必要です。ただし、言語聴覚士(ST)としての実務経験は、介護福祉士の受験資格には含まれないため注意が必要です。
毎年1月下旬の筆記試験、3月上旬の実技試験に合格すると、介護福祉士の資格を取得できます。
保育士
保育士は、保育所などの施設で子どもの世話をする国家資格で、子どもたちの生活全般(食事や遊び、排泄など)をサポートしながら、心身の成長を助ける役割を担っています。さらに、保育士は集団生活を通じて子どもたちに社会性を身につけさせる重要な役割も持っています。
もし小児分野での仕事を考えているなら、保育士の資格取得がおすすめです。言語聴覚士(ST)の職場の一部には教育機関もあり、保育士の資格があれば、言語や発声の発達に遅れがある子どもの支援にも有効です。
保育士の資格を取るためには、養成機関で少なくとも2年間学ぶか、保育士試験に合格する必要があります。受験資格には短大卒業相当の学歴や実務経験が必要ですが、言語聴覚士(ST)としての学歴があれば、すでに資格を満たしています。
呼吸ケア指導士
呼吸ケア指導士とは、2013年に日本呼吸ケア・リハビリテーション学会によって新たに導入された資格で、呼吸ケアに必要な基礎知識と実践技術を身につけ、呼吸障害を持つ患者さんへの継続的ケアを提供するための制度です。地域でリーダーシップを発揮し、チーム医療に貢献することが求められます。
資格は、医師や看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士(ST)などが対象となり、3年以上の学会所属と50単位以上の研修履修が必要です。
また、初級から上級まで段階があり、スキルアップが可能です。単位は、学会認定の講習会や学術集会での参加、発表、論文発表などを通じて取得します。
2.栄養ケアに力を入れる言語聴覚士(ST)に役立つ資格一覧
摂食・嚥下障害リハビリは、言語聴覚士(ST)の大切な仕事の1つです。このリハビリに加えて、栄養管理のサポートができると、患者さまへの支援がより充実し、言語聴覚士(ST)としての役割も広がるはずです。この章では、栄養面でのサポートに必要な資格について詳しく紹介します。
栄養サポートチーム(NST)
栄養サポートチーム(NST)専門療法士は、日本臨床栄養代謝学会が認定する資格で、臨床栄養学に関する高度な知識と技術を持つことを証明するものです。
NST専門療法士は、医師や看護師、薬剤師、管理栄養士などが集まるチームの一員として、患者さまの年齢や病状、栄養状態に応じた最適な栄養管理計画を作成し、効果的な栄養摂取をサポートします。
言語聴覚士(ST)がこの資格を取得しNSTに参加すれば、栄養管理に基づいた食事の提供や、咀嚼・嚥下の支援にも関わることが可能になります。
資格試験には、言語聴覚士(ST)などの国家資格と5年以上の栄養サポート業務の経験が必要です。また、セミナーや学会で30単位以上を取得し、指定された病院での40時間の実地修練も要件です。試験はマークシート方式で、栄養管理に関する幅広い知識が問われます。
管理栄養士
管理栄養士とは、病気の方や高齢者、そして健康な方を含むあらゆる人に対して、個別の健康状態に合わせた栄養指導や管理を行う国家資格です。乳幼児から高齢者まで、幅広い年代に対応しながら、食事や栄養についてのアドバイスを行い、適切な献立作りと提供を担う役割があります。
この資格を取得することで、例えば食べやすいメニューや、必要な栄養を効率的に摂取できる工夫を取り入れた食事の提案が可能になります。リハビリに加えて栄養面のサポートもできれば、摂食・嚥下障害の方に対して、より適切で心のこもったケアを提供できるでしょう。
試験を受けるためには、管理栄養士の養成課程がある教育機関で所定の単位を修了することが必要です。試験はマークシート形式で、幅広い栄養管理に関する知識を問われます。
3.患者との信頼関係を深めたい言語聴覚士(ST)におすすめの資格
言語聴覚士(ST)としての業務を通じて、「もっと患者さまに寄り添った支援を提供したい」と感じている方も多いのではないでしょうか。患者さまに喜んでもらえるサポートをするためには、相手の気持ちを理解し、適切なアプローチを取ることが重要です。ここでは、患者さまに寄り添う支援を実現するために役立つ資格をご紹介します。
手話通訳士
手話通訳士は、手話通訳に必要な専門的な知識とスキルを持つことを示す資格です。
言語聴覚士(ST)がこの資格を取得することで、聴覚障害を持つ患者さまと手話で直接コミュニケーションが可能となり、リハビリの際の支援がさらに充実します。患者さまの気持ちを正確に理解し、信頼を深めることができるでしょう。
手話通訳士試験は20歳以上であれば受験可能で、聴覚障害に関する知識や手話通訳の技術を評価する学科試験と実技試験が行われます。
ケアマネジャー(介護支援相談員)
ケアマネジャーは、介護を必要とする方がスムーズにサービスを受けられるよう支援する資格です。正式名称は「介護支援専門員」であり、患者さまの生活状況の確認、必要な介護サービスの選定や頻度の調整、ケアプランの作成、そしてサービス提供者との連携が主な役割となります。
この資格を取得すれば、患者さまの生活能力に応じたケアプランとリハビリプランを両方提案できるようになり、支援がより充実します。
ケアマネジャー資格は、言語聴覚士(ST)を含む国家資格を持ち、5年以上の実務経験があれば受験可能です。試験はマークシート方式で、介護支援や保健医療福祉サービスに関する知識が問われます。試験合格後は、実務研修を経て資格を取得します。
4.まとめ
言語聴覚士(ST)がダブルライセンスを取得すれば、働き方の選択肢が増え、患者さまに対してより深いサポートが可能となります。ダブルライセンス取得を目指す際には、自分の目指すキャリアや将来の活躍分野を明確にし、それに応じた資格を選ぶことがポイントです。PTOT人材バンクでは、キャリアアドバイザーが転職支援や非公開求人のご紹介を行っておりますので、キャリアアップをお考えの方はぜひご相談ください。
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言語聴覚士(ST)のキャリアやスキルに関するおすすめ記事をご紹介。
【引用/参照URL】
一般社団法人 日本言語聴覚士協会「生涯学習プログラムについて」
一般社団法人全国心理業連合会「プロフェッショナル心理カウンセラーの概要をご説明します。」
公益社団法人 日本介護福祉士会「介護福祉士とは」
公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「介護福祉士国家試験 受験資格(資格取得ルート図)」
一般社団法人 全国保育士養成協議会「受験資格」
一般社団法人日本呼吸ケア・リハビリテーション学会「呼吸ケア指導士について」
一般社団法人 日本臨床栄養代謝学会「栄養サポートチーム専門療法士認定規程」
公益社団法人 日本栄養士会「管理栄養士・栄養士とは」
一般社団法人 日本手話通訳士協会「手話通訳士の仕事」
厚生労働省「手話通訳技能認定試験(手話通訳士試験)について」
厚生労働省 職業情報提供サイト(日本語版O-NET)「介護支援専門員/ケアマネジャー」
公益財団法人 東京都福祉保健財団「令和4年度 東京都介護支援専門員実務研修受講試験」