これから言語聴覚士(ST)を目指すうえで、年収1000万円が可能なのか気になる方や現職の方の中にはどのように1000万円を達成しているのか知りたいという方も多いと思います。
厚生労働省の令和5年賃金構造基本統計調査によるとSTの平均年収は約433万円であり、なかなか難しいラインであるのは事実ですが、働く場所や働き方の視野を広げて、もっと幅広く活躍することで、年収の大幅UPも狙える可能性があります。
今回はSTが年収1000万円を目指す方法についてご紹介したいと思います。
もともと年収の高い職種ではないため高いハードルにはなりますが、経験やアイデアによっては不可能ではないため、年収1000万円を目指したい方はぜひ参考にしてみてください。
目次
1.言語聴覚士(ST)として1000万円は難しい
リハビリ職の平均年収は、400~500万程度で、職種間での年収に大きな差はないと言われています。実際、募集要項などを比較してみても、ほとんどの施設で同じ給与額が提示されています。
厚生労働省の令和5年賃金構造基本統計調査によると、STの平均年収は約433万円、働いている人の平均年齢は35.6歳となっています。
全都道府県を比較すると、年収が最も高かったのは滋賀県の473.3万円、最も低かったのは、長崎県の373.3万円です。地域によって最低賃金等の差はありますが、平均年齢が高いところほど年収が高くなる傾向にあることから経験年数や役職での手当分の給与UPが見込まれます。
このように、平均年収から考えるとSTが1000万円を目指すことは非常に難しいことが分かります。
言語聴覚士の年収については下記の記事でも詳しくまとめていますので、よければ参考にしてみてください。
2.言語聴覚士(ST)の収入と働き方
まずは、これから年収1000万円を目指すうえで目安として年収500万円、700万円、1000万円がどのような働き方をすることになるのか見てみましょう。あくまで参考ではありますが、将来的に自分がどのように働きたいのか想像してみてください。
年収500万
STとしての年収目標として最も現実的であるのが年収500万円です。現在の50歳代の平均年収は550万円程度ですので、キャリアを重ねていくことで十分に目指せる金額であると言えます。
現状、STは人手が足りていない状況ですが、今後人材が増えていくことをふまえると、数少ない役職の枠に入ることは厳しくなり、今の50歳代よりも年収UPの機会は減少していくとみられます。
早い段階で高収入を目指す場合には、ベースの給与が高く、学会発表や勉強会の主催など業績評価でのインセンティブ制度のある施設を視野に入れて、就職、転職をすることが候補に挙げられます。
年収700万円
年収700万円は一般的な施設でのST業務のみでは簡単な数字とは言えません。先に挙げたインセンティブの高い施設で好成績をキープし院内での評価を得たり、役職での手当を得るだけでは不十分な可能性が高いです。
しかし臨床の現場だけでなく、臨床の知識を活かせる一般企業に転職しキャリアアップをする、臨床業務をベースとして副業にも力を入れるなど、努力次第では不可能ではないと思います。
年収1000万円
STで1000万円を目指すのは至難なことです。年収700万円を目指すための方法として挙げたような、まずは臨床で経験を積み一般企業で知識を活かしていく方法や臨床と副業をベースとして、さらにそこからスキルアップしていくことで年収1000万円を目指します。
院外での勉強会などでST業務の仕事をしながら人脈を広げておくことで名前を覚えてもらいさらに仕事につなげる、周りに負けないスキルや経験を利用した独自性のあるセミナーなど、より磨きをかけていく必要があります。
3.言語聴覚士(ST)が年収1000万円を目指す方法
それでは、実際に臨床以外の仕事としてどんなものがあるのか、具体的にみていきましょう。臨床と並行しての準備段階や始めるためにお金がかかるものもありますので、自分に合った方法を探してみてください。
開業する
STは言語訓練と構音訓練を医師の指示なく、評価および訓練の実施が可能なため、単独での開業が出来ます。この領域は誰でも開業できるため、STの特権というわけではありませんが、専門性の高さや経験を存分に活かせる分野であることは間違いありません。
保険請求ができませんので、完全自費負担の施設を開設することになり、ライバルに負けないスキルや特徴は求められますが、診療報酬の壁などがなくなるため、努力次第で年収1000万円を目指すことができます。
施設の例としては、リハビリ施設に通えない、入所していない方にも対応できる訪問型のリハビリの提供、認知症予防や認知症トレーニングを目的とした教室、小児の構音障害や言語発達障害に対する言葉の教室のようなものが挙げられます。
他にはセミナーなどを主催するサロン経営もひとつの手です。こちらは評価や訓練を行うわけではありませんので、STが得意とする嚥下に関する話題も扱うことができ、他の職種との差別化を図りやすいと思います。
最近人気のあるオンラインサロンは有名・無名問わず誰でも開設出来、参加者から参加費用を募って自分の知識や考えを発信してくことで収益に繋がります。SNS等も活用して人気が出てくると参加者が増加するため、年収の大幅UPの可能性が高くなります。
ただし、事業を開始するためには開業のための手続きや書類の用意、場所の確保、資金の確保などの準備が必要で、開業後も固定客がつくまでには時間を要し、必ずしもヒットするわけではないというリスクもあります。
副業する
年収700~800万円であれば雇用での副業で目指すことができますが、それでは1000万円は厳しいため、休日開業のような形で働く必要があります。
STが行う副業として多いものは他施設での非常勤勤務アルバイト、同業者向けのセミナーの開催や一般向けの健康教室、最近ではコロナ禍もあり対面せずに開けるオンラインサロンも人気の副業のひとつです。
セミナーや健康教室では企業などから依頼されて、集客数や1回ごとに値段を設定して報酬を得ます。発表のための準備期間は要しますが、内容やトーク力次第では人気が出る場合もあるため、努力次第で年収UPが期待できます。
ただ、非常勤アルバイトのような形では、新しい経験を積むことができキャリアアップには役立ちますが、体力的に厳しい面があることと、厚労省のデータによると時給も1500~2000円程度のため年収の大幅UPには繋がりにくいため、1000万円を目指すには向いていないでしょう。
開業に比べると本業の臨床で収入が安定しているため、始めやすいことが副業のメリットです。ただし、副業は職場で禁止されている場合もありますので、必ず事前に確認することをおすすめします。
大学教授になる
STの経験を最大限に活かす方法としては大学教授になるという手段が挙げられます。臨床で培ってきた経験や知識を、フルに活用してSTを目指す学生を育成し、学生も現場の事情を知ることが出来るため、経験豊富な人材は重宝されます。
私立有名大学などの教授となり、年数を重ねれば、年収1000万円を狙える可能性がありますが、教授クラスになるまでに助手や助教授など長い年月がかかる可能性が高く、授業なども準備や資料作成などに時間と手間を要します。
特定の疾患を専門的に研究している教授も多く、研究に興味のある方には良いかもしれません。
海外で働く
外国語が堪能な方は海外で働くのもひとつの手です。ただし、日本のSTの資格は国内に限ったものなので、現地で認可されている資格を有することが必要となります。
資格取得のために現地の学校を卒業するなどハードルは高いですが、国によってはコメディカルの地位が高かったり、最低賃金が高く設定されており、日本よりも給与がUPする可能性があります。
昇進する
キャリアを積み重ねて様々な経験をすることでSTとしての知見を活かした仕事をし、昇進して1000万円を狙う方法もあります。
ただ、STの臨床や専門性からは離れてしまうことと、一般企業となるためライバルも多く、他の方法に比べると現実的ではないかもしれません。
4.年収を増やす○○力
病院や施設では言語聴覚士(ST)が取れる単位の制限があるため、この制限によって需要があってもリハビリを提供できず、施設の売上UPに繋げられないため、給与UPが難しいのが現状です。
そのため、施設の年収を基本として考えた場合、昇給や手当、で得られる報酬は職場での頑張りに対する評価にあたり、副業で得られる報酬は自分の付加価値であり、これまでの経験やアイデアに左右されると思います。
昇給や手当は施設での給与のため、自分の力で変えることは難しいですが、他の手段であれば努力とアイデア次第で無限の可能性があり、その機会を作るのはあなたの積極性と行動力です。
商品でも同じですが、面白いアイデアが思いついても、実際に行動に移さなければ、何もしていないのと変わりません。
あなたが経験した臨床での発見や日常生活の中から、まだ他の人が始めていない分野やアイデアを上手く見つけることと、STならではのコミュニケーション能力、そしてそれを行動に移す積極的な行動力が年収UPの鍵となるかもしれません。
5.まとめ
今回は言語聴覚士(ST)が年収1000万円を目指す方法についてご紹介しました。
現状、臨床STの年収はなかなか厳しい数字ですが、自身の臨床での経験や患者様、利用者様の声などから得たアイデアを上手く活用すれば、年収UPも夢ではなく、働くモチベーションアップにも繋がります。
STはまだまだ発展途上ですので、積極的に行動して、あなただけの働き方で年収1000万円を目指してみませんか?
収入アップや今後の将来像を考える上で、転職を視野に入れる場合は是非PTOT人材バンクにご相談下さい。
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厚生労働省 令和2年賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金(時給換算)