作業療法士(OT)のように国家資格を持つ医療職は、一般的に安定収入のイメージがあります。ところが、今の生活は安定していても、転職や退職のことを考えたときに「万が一就職先が見つからなかったら?」「老後までにまとまった貯金ができる?」など、将来に向けたお金の不安があるのも事実です。
そこで今回は、「作業療法士(OT)の退職金」をテーマに、退職金の相場や他の職業との比較、退職金が多くもらえる職場についてご紹介します。先行き不安な時代だからこそ、お金のことをしっかりと考えていきましょう。
目次
作業療法士(OT)の退職金相場はいくら?
まず、退職金制度について簡単に触れておきましょう。
「定年まで働いたらもらえるお金」というイメージの退職金ですが、職場が定める年数(多くは3年以上)を超えて働いていればもらうことができます。
中には退職金を「必ずもらえるもの」と誤解している方もいますが、法律上は退職金の支払い義務はなく、支払うかどうかはあくまでも企業側の判断に委ねられています。「自分の職場には退職金制度があるの?!」と不安な方は、就業規則で確認してみましょう。
支給形態としては退職時に一括で支給される「退職一時金制度」や、一定期間もしくは生涯に渡って支給される「企業年金制度」があり、退職理由が「自己都合」「会社都合」なのかによって支給額に差があります。
一般的な退職金の計算式は、次のようになっています。
退職金=基本給×勤続年数×給付率(※)
※給付率は、自己退職の場合「0.6」、会社都合の場合「0.7」が相場となっています。
退職金制度についておおまかに理解したところで、作業療法士(OT)の退職金の実態について見ていきましょう。
作業療法士(OT)の退職金の相場と言っても、職場の規模や基本給、勤続年数によって支給額は異なります。また、給付率が「0.8~1.0」という職場もあり、同じ作業療法士(OT)でも働く場所によって差が大きいのも事実です。そこで、先程の計算式に当てはめた「職場規模・勤続年数別の退職金モデル」を見ていきたいと思います。
国立大学病院・勤続5年の作業療法士(OT)の場合
作業療法士(OT)として国立大学病院に5年間勤務、基本給24万円・給付率「0.8」を想定し計算式に当てはめてみます。
240,000(基本給)×5.0(勤続年数)×0.8(給付率)=960,000
退職金は96万円になります。
民間中小病院・勤続15年の作業療法士(OT)の場合
作業療法士(OT)として150病床ほどの民間中小病院に15年勤務、基本給25万円・給付率「0.6」を想定し計算式に当てはめてみます。
250,000(基本給)×15.0(勤続年数)×0.6(給付率)=2,250,000
退職金は225万円になります。
公立病院・勤続35年の作業療法士(OT)の場合
作業療法士(OT)として公立病院に定年まで勤務、基本給37万円・給付率「0.8」を想定し計算式に当てはめてみます。
370,000(基本給)×35.0(勤続年数)×0.8(給付率)=10,360000
退職金は1036万円となります。
このように、退職金を考える上で「基本給」「勤続年数」「給付率」が非常に重要であることがわかります。一般的に勤続年数が長いほど退職金は増えますが、基本給や給付率の高低によっては、同じ勤続年数でも支給額に大きな差が出てくるのです。
給付率は突然引き下げられることもありますので、「将来なるべく多く退職金をもらいたい」と考えている方は、基本給の高い職場で長く働くことがポイントになります。
一般的な退職金相場との差は?
作業療法士(OT)の退職金相場がわかったところで、一般的な会社員に比べたときに作業療法士(OT)の退職金は多いのか少ないのか…気になりますよね?
結論から申し上げると、作業療法士(OT)の退職金は決して高いとは言えません。先程、公立病院で35年勤め上げた例をご紹介しましたが、それでもやっと1000万円に届く程度です。一方、大卒で定年まで勤め上げた会社員の退職金相場はどれくらいかと言うと、2000万円を超えています。
なぜ、これほどまでに退職金の支給額に差が出るのでしょうか?
一番の要因は、基本給の低さです。医療職の給与の特徴として、新卒からの数年間は一般的な会社員に比べて年収は高い傾向にあります。しかし、昇給のスピードがゆっくりであるため、ある時点から年収が逆転してしまうのです。
医療職の昇給は、民間病院で年間1000~3000円が相場です。仮に3000円の職場で30年働いたとしても、その間の基本給アップは10万円にも満たないことになり、これが退職金の支給額に大きく影響することになります。
作業療法士(OT)の退職金が高くなりやすい職場の特徴
では、作業療法士(OT)がなるべく多くの退職金を得るためにはどうしたらいいのでしょうか?ひとつの方法として、「退職金を多くもらえる職場に転職すること」が挙げられます。ところが、求人情報には「退職金制度あり」と記載されているだけで、「5年勤続で◯万円」「定年で◯万円」といった情報はありません。
そのようなとき、「退職金が多くもらえそうな職場の特徴」を理解しておくと有利です。より多くの退職金をもらうために、求人を探す際は次の点をチェックしてみましょう。
- 基本給が高い
- 昇給が高い
- 職場規模が大きい
- 民間よりは公立・国立病院
基本給は退職金を計算する際のベースとなるものです。諸手当で手取り額が高くなっていても、基本給が低ければ長い目で見ると損をすることもあります。「手取り」ではなく「基本給」をチェックするようにしましょう。
また、昇給が高ければそれだけ基本給もアップします。一般的に、民間病院よりは公立・国立・大学病院のほうが昇給額は高め(5000~1万円程度)に設定されていますので、転職の際はひとつの目安としてください。
求人情報では、退職金の詳細を知ることはほとんどできません。とくに、昇給や退職金などお金に関することは直接聞きづらいものです。そのようなとき、転職エージェントを活用すると非常に便利です。
直接聞きにくいことをキャリアパートナーが代わりに確認してくれたり、転職に有利な情報をもらったりすることもできます。
毎月の給与やボーナスだけでなく、退職金も重要なポイントです。これから転職を考えている方も、定年まで勤め上げようと考えている方も、ぜひご自身の退職金について一度しっかりと考えてみてください。
不明点があれば、PTOT人材バンクのキャリアパートナーに遠慮なくご相談ください。
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