国家資格である作業療法士(OT)は、リハビリの需要があることから現在は高い就職率を誇っています。

しかし、 OTの数は年々増え続けているのが現状で、資格保有者が多いことから、知識や技術が豊富でより質の高いリハビリを提供するOTに患者が集中する未来も遠くありません。

この記事では、学生の方や新卒の方が今後何十年とOTとして生き残るために必要なスキルやビジョンが何かということを、現状を踏まえて解説していきます。

1.作業療法士(OT)として生き残るために必要なスキル

ここでは、作業療法士(OT)が生き残るために必要なスキルを具体的にいくつか説明していきます。

貪欲に学び続ける姿勢と向上心

はじめに、OTは「資格を取得して終わり」の仕事ではありません。OTを取り巻く環境は日々変化しており、仕事を通して学び続けることで、自らの知識を増やし、技術を磨く必要があります。

日常の業務の中において、自らのリハビリ方法に疑問を感じたり、わからないことが生じたりすれば、文献などで逐一調べたり、上司や先輩に相談したりして、疑問点や不明点を解消していくように努めていきましょう。

同じ職場に勤務し続けていると、その分野ではプロフェッショナルになれるというメリットがありますが、その他の分野や知識については、知識を深めづらいという面も否めません。

そのため、時には学会や勉強会の参加などを通して、新たな知識を深めるといいでしょう。自分の職場以外のOTと交流を図ることで、新たな発見もあるかも知れません。

高い専門性を証明する資格・学位

OTとして高い専門性を持っていることの証明として、資格を取得したり、学位を取得したりする方法があります。

取得にかかる難易度は資格によって異なりますが、民間資格であれば比較的取得しやすく、働きながら資格勉強をしている方も多いです。回復期病院にお勤めの方なら福祉住環境コーディネーター、高齢者施設にお勤めの方なら健康運動指導士といったように、自らの職場で活かせる資格を選ぶといいでしょう。

取得には時間や労力がかかりますが、高い専門性を持つ証明をしたいのであれば、認定OTや専門OTの取得を目指してはいかがでしょうか。

認定OTや専門OTは日本OT協会で取得者数を確認できます。全体のOT数に比べると取得人数が少ないので、より希少性もあり、高い専門性があることの証明に有効です。

認定作業療法士については下記に詳しくまとめています。

ITやAIの進化に対応するスキル

さまざまな分野でIT化が進んでいますが、リハビリ分野も例外ではありません。

特に、OTでは、高齢者の介護現場で使用が期待される介護支援ロボットの研究が進んでいます。今後はロボットを使ったリハビリも積極的に取り入れるようになる未来も遠くありません。

リハビリロボットなどのIT技術を活用することで、介護量が多い患者さんでもスタッフの負担が少なく、柔軟な関わりができるようになるというメリットがあります。

また、小児の分野でもITを活用したリハビリが導入されつつあります。寝たきりの重症心身障害児のお子さんに対して、パソコンと連動したプロジェクターを使って壁に映像を映し出し、手首につけたセンサーが少ない動きにも反応して、体の動きと連動した映像の変化を楽しむという機器を導入している施設もあります。

そのほか、放課後等デイサービスなどでは、発達障害の多動傾向の児童が楽しめる、ITを活用した多彩なゲームも活用されています。プロジェクターからサッカーゲームなどを床に映し出し、室内でも手軽に集団遊びが取り入れられ、社会性の獲得を促せます。

「発信」できるスキル

動画配信が加速する現代において、OTとしての自分のスキルを発信する力もアピールポイントになります。動画を撮ったり、編集したりするスキルをお持ちの方は、病院内の勉強会で動画を取り入れると、書面だけで伝える場合よりも、内容が伝わりやすくなるかもしれません。

なかには、病院や施設のPRの一環で、健康体操や自宅でできるストレッチなどを公式的に動画発信している職場もあります。そういったことをしていない職場であれば、自身が発起人になることで、評価を高めることにつながるかもしれません。

「発信」は動画配信だけでなく、地域への啓発活動も手段の一つです。

例えば、地域の方へ向けた健康講座の開講などが当たります。講師として人前に立つには、専門知識をまとめるだけでなく相手にわかりやすく伝える能力が必要です。講師経験を積むことで、知識の定着や再学習につながったり、自らのプレゼン能力を高めることにつながったりと、より自身の知識やスキルを向上させられる効果があります。

自分を客観的に評価し「売り込む」スキル

OTとしての「生き残る」というと漠然としたイメージですが、「自分の働きたい職場で就職できる」というのも「生き残る」というワードに当てはまるのではないでしょうか。

就職活動において、「給料が高い」「休みがとりやすい」「組織の規模が大きい」などといった、福利厚生が良い人気の求人には多くの就職希望者が集まります。

特にOTは組織内の所属人数が限られているので、たくさんの人数を一度に採用する職場は少なく、募集人数は多くても数名、1名だけ採用予定という職場も多々あります。そのため、複数の就職希望者がいた時に、「1名しかない採用枠を勝ち取れる人材」であるかが大切になります。

これまで述べてきたスキルで挙げれば、新卒の方であれば、「貪欲に学び続ける姿勢と向上心」がアピールポイントにすることができます。

学生時代に頑張ってきたことやそれにより得た成果をプレゼンすることで、面接官に「この人は持ち前の努力する姿勢を活かして業務に励んでくれそうだ」と、良い印象を与えられます。

私生活で動画作成などをしたことがある方、前職などでITに対しての知識がある方であれば「発信力」や「ITの活用力」などをアピールポイントにしてみてもいいでしょう。

中途採用の方であれば、これまでの職場でどのような経験をしてきたかはもちろん、OTに関連性のある資格を所有することで、より高い専門性を示すことができます。また、学会での発表経験や所属施設内外での講座の講師経験などがあれば、自身の経験や知識の豊富さをアピールすることができるでしょう。

また、「売り込む」スキルが生きるのは、就職活動だけではありません。職場内の昇進においても「売り込む」スキルは非常に重要です。自身の強みを積極的にアピールすることで、仕事に対する熱意や成果を示すことができ、上司の評価を上げることにもつながります。

2.考えられる作業療法士(OT)の未来

ここでは、今後作業療法(OT)の業界がどのように変化していくかを考えてみましょう。そのうえで、OTとして「生き残る」ためにはどうするべきかを解説していきます。

これまで~現在にいたるまでのリハビリ需要

1999年代後半から2000年代にかけて、高齢社会によってリハビリの需要の高まることを見越して、リハビリ専門職の養成校が増えました。それに比例し、1990年後半にはOTになる数が増えました。2018年にはOTの人数は9万人を超え、現在も年間4,000〜5,000人がOT資格を取得しており、その人数は増え続けています。

そして、日本の現状はというと、高齢化率は28.1%と、世界的に見てもトップクラスの超高齢社会となっています。団塊世代が後期高齢者となる2025年には、総人口の約3人に1人が高齢者になると言われています。その高齢者のうちの5人に1人が認知症患者であると想定されるのです。

1990年代の読みは正しく、現在リハビリの重要性が高まっているのは事実です。しかし、高齢化のピークを過ぎたらどうなるのかを考えた時、OTの数が需要よりも上回ってしまう可能性も否定できません。

AIやITの進化に伴う業務の効率化も相まって、高齢化のピークが過ぎた時には、「職場でのOT数の削減=人件費の削減」を図られる可能性があるわけです。

高齢化のピークを過ぎた後のリハビリ需要の予測

では、リハビリ職の将来は、どのように変化していくと予想されるのでしょうか。

現在との大きな変化として考えられるのが、IT化が進むことにより、リハビリロボットなどの最先端機器を医療現場で活用していく未来です。

リハビリロボットの活用でリハビリの幅が広がるのはもちろん、事務業務面でも電子化が進み業務の効率化が図られ、リハビリに時間を割けるようになった分、より質を問われる時代が来るかもしれません。

今後職場にロボットなどを導入することになっても、機械に対して拒否感なく積極的に学ぶ姿勢を持ち、リハビリに活用できる人材が重宝されることでしょう。

しかしながら、ロボットが導入されたとしても、患者さんの立場や思いに寄り添い、患者さんに合った個別リハビリを提供することには変わりません。

AIなどでは、病気や障害を抱えたことによる悲しみや不安に寄り添うことはできません。患者さんの感情・表情・仕草などを汲み取れるのは、生身の人間だけができることです。

同じ疾患・同じ障害でも、患者さんごとに目指すゴールは変わります。患者さんの事情に合わせたオーダーメイドのリハビリの立案は、経験や知識を伴ったOTにしかできません。だからこそ、私たちOTは専門知識や技術を高めるのはもちろん、コミュニケーションスキルなども併せ持つ必要があるのです。

以下の記事でも、OTの将来性や知っておくとよいことなどを詳しくまとめています。ぜひ参考にしてみてください。

「作業療法士(OT)の将来性とこれから目指す際に知っておきたいこと」

3.これから作業療法士(OT)が生き残るために

作業療法士(OT)が生き残るために、私自身の経験も踏まえて、特に若いOTの方へ向けて知っておいてほしい視点などをお伝えします。

OTとして長く生き残るための視点

将来的に長くOTとして活躍したいと思うのなら、「どのような人材が職場で重宝されるのか?」「どのようなスキルを身につければ、条件の良い職場から採用をもらえるのか」を考える必要があります。

自分がOTとして生き残るためには、まず「自分を知ること」です。自分はどんなことが得意で、それによりどのような成果を残してきたかということを整理しましょう。そのうえで、現在の職場(転職を希望する職場も含め)で、自分のスキルをどう活かせるのかということを考えるといいでしょう。

ただ漠然と働くよりも、自分の強みを知り、それを活かすことを意識して目標を設定すると、仕事の姿勢もやりがいも大きく変化します。

目標ができることで、「自分が今何をすればいいのか」が明確になり、目標に向かって努力を積み上げていくことで成果が見えてきます。その成果が「自分のアピールポイントや強み」となり、評価を上げることにつながっていきます。

自分の強みがわからない時は、周りの声に耳を傾けてみよう

なかには、自分の強みが思いつかない方もいるでしょう。実際、以前の私も自分の強みがわかりませんでした。私は、結婚・出産を経てOT復帰をした際、仕事にやりがいを感じつつも、家庭の事情などで思うように働けない現状にもやもやしていました。

そんな時、文章を書くことの速さや内容を同僚と先輩に褒められ、驚きながらも嬉しさを感じました。

信頼する人たちに褒められたことをきっかけに、私は「『書く』という仕事に挑戦してみたい」という思いがわき、さらには、「OTとしての知識を活かした、自分にしか書けない記事を書いてみたい」という目標ができたのです。

まだまだ、ライターとして未熟ではありますが、その出来事が私の執筆という仕事の原点になっています。

自分の強みは案外自分では気づかないものです。周囲の人の声をきっかけに、自分の良さや気づかなかったスキルに気づくことは多々あります。

特に若い方たちは、まだ経験していない物事の中に自分に向いている『何か(スキル)』があるかもしれません。もし、少しでも興味をもてることがあれば、尻込みせずに積極的に挑戦してみてほしい、と強く感じます。

OTは障害領域が多く、自分に合った・自分を活かせる領域が見つけやすい

OTの仕事は、身体障害領域、精神障害領域、発達障害領域、老年期障害領域と、多岐にわたるのが特徴です。領域が変わることでリハビリ内容や施設の雰囲気も変化します。

これまで働いたことのない、なじみのない施設でも、実際に働いてみると「とてもやりがいを感じた」「自分に合っていた」という場合もあります。

OTに関していえば、転職は珍しいことではなく、スキルアップの転職やライフステージに合わせた転職はマイナスイメージが伴うことは少ない傾向にあります。

もし、未経験の領域の職場に興味があれば、転職も検討してみてもいいかもしれません。私自身、異動も含め、結婚・出産・育児といったライフステージの変化に合わせて、複数の領域を経験しました。

具体的なリハビリ内容は変わっても、前職場の経験が現在の仕事に活きている部分も多いです。転職により、OTはもちろん、ほかの職種でも親しく関わる人が増え、自身の見識や知識を広げるきっかけにもつながります。

それぞれの領域の面白さややりがいを見つけられることが、異動や転職の良さなのです。

学生の方で進路を悩んでいる方、転職で違った領域を挑戦したいと考えている方には、周囲のOTの方(教員なども含め)に、現場の話を聞いてみるといいでしょう。

「ほかの職場について聞ける人がいない」と感じる方はPTOT人材バンクの記事なども参考にしてみてください。各領域の仕事内容や一日の流れなどがイメージできると思います。

4.まとめ

作業療法士(OT)の将来の変化予測や、生き残るために必要になるであろうスキルについてまとめてきました。将来の予測については、本当にそうなるかどうかは断言できません。

しかしながら、自分なりの将来の見通しを立て、目標を設定し努力することが、OTとしての成長につながることは間違いありません。

自己分析を通して、自分が将来どのようなOTになりたいのかをぜひ一度考えてみてください。この記事を読んだ方に、少しでも参考になれば幸いです。

PTOT人材バンクはスキルアップを考慮した上での転職サポートも行っておりますので、お悩みの方はキャリアパートナーに遠慮なくご相談ください。

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