作業療法士(OT)としての働き方は多様化しており、独立・開業に興味を持つ方も少なくないかもしれません。
しかし、OTには法的な「開業権」はなく、これまでの経験で得た専門知識を活かして開業する方法か、開業資格のある資格を取得する方法でしか開業はできません。
また、独立・開業して新たな活躍の場を広げていくためには、これまで担当部門や責任者が行っていたリスクマネジメントを自身で行う必要があり、トラブルにも注意が必要です。
この記事では、OTが開業する方法はもちろん、注意点についてまとめましたので、独立・開業に興味を持っている方の参考になれば幸いです。
目次
1.作業療法では開業できない
アメリカでは作業療法士、理学療法士に開業権がありクリニックなどを開業することが認められていますが、日本では「理学療法士及び作業療法士法」により医師の指示の下に
作業療法を行うことが定められており、開業し医師なしで作業療法を提供することはできません。
しかし「開業・独立は諦めるしかないのか…」と落ち込むのはまだ早いです。
OTとしての専門知識を活かしつつ、店舗やデイサービスを開業する方法もあるので、次章で詳しく解説していきたいと思います。
2.作業療法士(OT)が開業する方法
整体院やサロンなどの店舗やデイサービス、フリーランスのインストラクター、開業できる資格を取得するなど、OTが専門知識を活かして開業する方法は様々です。
ここでは、独立・開業する方法について例を挙げて解説していきます。
作業療法ではなく専門知識を活かして独立する
一つ目は、開業に資格が必要ない整体院やリラクゼーションサロンといった施設形態で開業する方法です。
例えば、整体院で提供される整体は医療行為ではなく民間療法であり資格は必要ないため、OTとして培った徒手療法の技術を活かした開業は強みになります。
また、店舗を持たないフリーランスとして独立し、ヨガやピラティスのインストラクターとして活躍する方法もあります。
どちらも特別な資格は必要ありませんので、国家資格である作業療法士を保有したインストラクターであれば、十分に活躍は期待できます。もちろん、養成講座や通信教育で並行して民間資格を取得する方法もあるでしょう。
近年では介護分野で経験を積んだOTがデイサービスを開設しているケースもみられ、特にリハビリ特化型デイサービスなどリハビリに力を入れているフランチャイズ施設では開業時にOTの資格を保有していることは十分にアピールポイントになります。
個人で一から開業することも可能ですが、競合も増えてきた環境ではリスクも高いと考え、このようにノウハウやマニュアルがあるフランチャイズを利用する手もあります。
しかし、どちらにしても初期費用が高額になる点とある程度人員が必要で経営者としてのマネジメント能力も求められるため、ハードルとリスクが高い点は十分注意が必要です。
開業資格のある資格を取得する
柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師、鍼灸師などの開業資格のある資格を取得し、OTとしての専門知識や経験も強みにしながら、開業・独立する方法もあります。
柔道整復師の資格を取得すれば接骨院・整骨院を、あん摩マッサージ指圧師ならマッサージ店・訪問マッサージを、鍼灸師ならば鍼灸院を開業できます。
いずれの資格も専門学校などに3年以上通い国家試験に合格する必要があるため、資格取得に時間もお金も必要で簡単ではありませんが、OTとのダブルライセンスの保有者はそう多くはありませんので、活躍の場を広げる選択肢の一つでもあります。
3.作業療法士(OT)が開業する強み
OTが開業する強みとしては、メンタルケアも含めた関わりができるという点です。
ストレスケアやメンタルヘルスケアなども交えて心身両面でサポートできるのは魅力であり、サロン開業やフリーランスとして活動していく上でアピールポイントにもなります。
近年では自閉症スペクトラムや注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害を抱える子供さんへの支援体制も注目されており、OTの得意分野とも言えるので放課後等デイサービスや児童発達支援センター等の開業という選択肢も考えられ、活躍の場は広がってきています。
4.開業時の注意点
開業というと金銭面を気にされる方が多いですが、病院や施設に勤務する会社員と違い、独立・開業にはお金以外のリスクも伴います。
経営者として提供するサービスに責任を持ち、利益の確保や施設の管理運営など臨床業務以外に様々な業務を請け負わなければなりません。
この章ではOTの独立・開業におけるリスクマネジメントのために注意すべき事をまとめましたので、解説していきます。
医療保険や介護保険は利用不可
前述したように、「作業療法の提供は医師の指示の下で行わなければならない」と法律で定められており、OTが開業して作業療法を提供することは出来ません。
そのため保険を使った診療は実施できず、あくまで利用者の全額自費負担という形になります。
広告やWebサイト、チラシなどの表現にも気を付ける
店舗の開業やフリーランスとして独立にあたって宣伝や営業は欠かすことは出来ませんが、広告やWebサイト、チラシなどの表現には十分注意が必要です。
例えば、接骨院を開業できる柔道整復師では「柔道整復師法」という法律の中で、広告できる内容が決まっています。近年広告規制に対する取り締まりは厳しくなっているため、開業時に使用する資格ごとに使用できる表現を常に確認する必要があります。
また、「理学療法士及び作業療法士法」でOTは医師の指示に下に作業療法を行なうことを業とする者、と定められており作業療法を提供していないとOTと名乗れないと解釈できます。
無資格でも開業できる施設形態で開業する場合、OTとしての実績や資格を前面に出してアピールポイントとするケースはよく見られますが、作業療法や医療行為を提供するような誤解の生まれやすい表現には十分注意が必要です。
トラブルにも注意
OTが開業する方法として、無資格者でも開業できる整体院やサロン、インストラクターとして独立する方法を紹介しましたが、利用者とのトラブルには注意が必要です。
医療的な知識のない人がサービスを提供することでトラブルに発展するケースもあり、経営者として対応策を考えておく必要があります。
法的な知識や納税についても精通していないと行政から指導を受けるケースもあり、経営者としての知識も十分身に着けておかなければなりません。
会社員としての働き方とは違い、完全に出来高制になるので収入面も不安定になりやすく、OTの独立と開業には多くのリスクを伴うことを理解しておきましょう。
5.まとめ
この記事では作業療法士(OT)が独立・開業する方法と注意点について紹介しました。
収入アップや活躍の場を広げる目的での独立・開業は夢がありますが、多くのリスクや困難を伴うので慎重に考える必要があります。
独立・開業を考えている方は、経営者としてやっていけるのか自分の適性をしっかりと見極めて慎重に行動するようにしましょう。
まず、キャリアアップからお考えの方はPTOT人材バンクのキャリアパートナーに遠慮なくご相談ください。
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【参照サイト】
理学療法士及び作業療法士法