作業療法士(OT)として働く方やこれから目指す方にとって、平均的な年収がどれくらいなのか、将来的に昇給は見込めるのかは気になるところだと思います。

OTの昇給は基本的には勤続年数、年功序列によるところが大きいですが、役職者への昇進や関連資格の取得、転職してキャリアチェンジを目指すなど昇給につながる方法はいくつかあります。

この記事ではOTの給与と賞与についてと男女別の年収推移、昇給する方法について詳しく解説していきます。

1.作業療法士(OT)の平均年収と給料

まずは賃金構造基本統計調査を元に、OTの平均的な年収と賞与や男女の違いについてみていきます。

地域や勤務先の規模によって多少差はありますが、ここではOT全体の平均について記載していますのでご注意ください。

作業療法士(OT)の平均年収は約433万円

令和5年の厚生労働省のデータによると、作業療法士の平均年収は約433万円です。その内訳は月収が30万円、賞与が71.4万円となっており、全産業の平均年収507万円を下回っています。月収と賞与の両方で大きな差があることが明らかです。

平均年収平均月収平均賞与平均年齢
理学療法士(PT)4,325,800円300,900円714,400円35.6歳
全産業5,069,400円346,700円909,000円43.9歳

この年収統計には理学療法士や言語聴覚士、視能訓練士も合算されていますが、実態も他の職種とほぼ同水準と言えるでしょう。

一般的な会社員の平均年収の約500万と比較するとやや低めですが、景気に左右されにくく安定した収入が得られ福利厚生が充実している点は魅力と言えます。

男性は年収約447万円、女性は年収約412万円

先ほどの賃金構造基本統計調査の年収を確認すると、男性OTの平均年収は約4,478,800円に対して女性OTは約4,122,400円となっています。またこれらの年収には役職者も含まれていますので役職者を除くと、男性は約4,214,300円、女性は約3,988,200円とその差は、ほとんどなくなります。

このように男女で若干の違いはあるものの、一般企業よりも男女差が少ない点は医療業界の特徴とも言えます。また、役職者を含むと年収差が大きくなる点については、役職者になる年齢になると女性は出産や育児を機会に時短勤務へのシフトや退職するケースも多いことが考えられます。

また今回の調査で特筆すべき点として、前回の調査から役職者を含めた女性の平均年収が約5万円増加し、役職者を除いたとしても約5万円増加していることが挙げられます。男性も約5万円増加しているため全体的に高まってはいるものの、1年でこれほど増えることは良い傾向と言えるのではないでしょうか。

女性OTの年収2022年2021年変化
役職者を含めた年収4,122,400円4,072,100円50,300円
役職者を除いた年収3,988,200円3,933,300円54,900円

2.2010年から2021年の年収推移

続いて2010年から2021年の11年間の年収推移を男女別にみていきたいと思います。この章で取り扱う年収データでは、すべて役職者を除いた年収でご紹介していきます。

また、2019年以前は理学療法士(PT)・作業療法士(OT)の合算値ですが、2020年・2021年は言語聴覚士(ST)・視能訓練士も加えたデータとなっています。OTだけのデータではありませんが、OTならではの情報や今後の展望も合わせてご紹介していきます。

男性は410万円~420万円を推移

男性の場合、2014年に一度400万を下回りはしたものの、2010年から少し増えており、近年は410万円~420万円の間に収まっています。

過去10年間で大幅な増減はみられず2014年を除いては年収400万を超えており比較的安定していますが、2021年の年収は2020年と比較して2万円ほど増加しています。

2021年 2020年2019年2018年2017年2016年2015年2014年2013年2012年2011年2010年
¥4,167,900 ¥4,145,600¥4,221,800¥4,170,300¥4,124,600¥4,190,400¥4,160,700¥3,980,400¥4,102,600¥4,137,800¥4,113,900¥4,041,800

女性は年収400万円弱を推移

女性の場合は2014年から2018年にかけて微増が続き、一旦は落ち着いたもののまた増加傾向が見られます。

2019年度日本作業療法士協会の統計資料によると女性の割合は約62%で、中でも20~30代の割合が約75%を占めているため、出産や育児でキャリアがストップしてしまう場合も多く年収が上がりにくいという理由も考えられます。

2021年 2020年2019年2018年2017年2016年2015年2014年2013年2012年2011年2010年
¥3,933,300¥3,864,000¥3,942,700¥3,989,200¥3,966,700¥3,933,700¥3,918,200¥3,802,500¥3,831,800¥3,782,300¥3,814,300¥3,741,500

今後の展望

2021年4月から開始された令和3年度介護報酬改定では、地域包括ケアシステムの推進や認知症への対応力向上に向けた取組の推進などが挙げられており、OTの役割の重要性は大きくなってきています。

実際、2020年より平均年収が高まってはいますが、少子高齢化の影響で社会保障費は抑制傾向であり年収の大幅な増減が起こりにくい状況も踏まえると、この傾向が続いていくかは注視する必要がありそうです。

しかしOTは様々な分野で活躍でき、非常勤やパートでの求人も多いことから再就職もしやすくワークライフバランスを図りやすい職種であるため、安定して長い期間働き続けることができるというメリットがあります。

3.作業療法士(OT)が高収入を狙うコツ

OTとして働くうえで今後どれくらい昇給が見込めるのかは気になるところだと思います。

先ほどの賃金構造基本統計調査を元に、まずは年齢や経験年数別の年収や賞与についてみていき、昇給する方法をいくつか紹介していきますね。

基本は年齢と経験を積み重ねていく

基本的には年齢と経験を積み重ねていくことで昇給が見込めます。下の表は若手である20~24歳とベテランである55~59歳との年収や賞与を比較した表です。

55~59歳は年収のピークであり、勤続年数が長ければ長いほど年収が上がっていく傾向にあるため、年収にすると約250万と大きく差があることが分かります。

20-24歳の月給×12ヶ月2,934,000円55-59歳の月給×12ヶ月4,576,800円
20-24歳の賞与352,000円55-59歳の賞与1,173,000円
20-24歳の年収3,286,000円55-59歳の年収5,749,800円

次に経歴による年収の違いについて見ていきます。

同じ35歳~39歳のOTであっても、経験やスキルが充実してくる経歴15年以上とまだまだ未経験なことも多い経歴1~4年目を比較してみると、年収で約65万円の差があり、年齢だけでなく経歴の長さでも年収が大きく変わってくることが分かります。

経歴1~4年の月給×12ヶ月3,220,800円経歴15年以上の月給×12ヶ月3,704,400円
経歴1~4年の賞与640,800円経歴15年以上の賞与805,800円
経歴1~4年の年収3,861,600円経歴15年以上の年収4,510,200円

役職者への昇進を目指す

チームリーダーや主任、リハビリテーション科科長など手当が支給される役職者への昇進を目指すという方法もあります。

役職者への昇進は勤続年数で評価されるケースが多いため、まずは長く勤めることを目標にし、その上でマネジメント能力やコミュニケーション能力など役職者に相応しいスキルを身に着ける努力が必要となるでしょう。

平均年収であっても、役職者を含めるだけで男性は約25万円、女性は約14万円年収が高くなります。一般職と役職者では一般職の方が多いため、役職者だけを抜粋すると大幅に平均年収がUPすることが想像できます。

男性女性
役職者を含めた年収4,429,800円4,072,100円
役職者を除いた年収4,167,900円3,933,300円
差分261,900円138,800円

※令和3年 賃金構造基本統計調査

キャリアアップにつながる関連資格を取得する

認定作業療法士や呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士、認知症ケア専門士などキャリアアップにつながる関連資格を取得することで、資格手当を受け取れるケースもあります。

専門性を高め勤務先への貢献度を上げることで、評価や昇進にも結び付きやすくなるというメリットもありおすすめです。

転職してキャリアチェンジをする

基本的にはOTの昇給ペースはゆっくりであり、同じ職場で働き続けるよりも思い切って転職した方が大幅な収入アップにつながることも考えられます。

今の職場で思うような評価が得られないなら、自分の経験やスキルを発揮できる新たな職場へ転職することで、やりがいを感じられ収入アップにも繋がるなら一石二鳥と言えるでしょう。

独立・開業する

OTとして培った知識や経験を活かして整体院やリラクゼーションサロン、デイサービスなどの開業、フリーランスのインストラクターとしての独立など起業家として新たな事業を展開する方法もあります。

起業には初期費用が必要で、経営者としてマネジメント能力が求められるためリスクが高く慎重に行なう必要があります。

4.まとめ

この記事ではOTの給与と賞与についてと男女別の年収推移、昇給する方法について紹介しました。OTの昇給は基本的には勤続年数、年功序列によるところが大きく、大幅な年収アップを目指すなら転職してキャリアチェンジを目指す方法もおすすめです。

転職に興味のある方はPTOT人材バンクに相談してみてはいかがでしょうか。経験豊富なキャリアパートナーがあなたの転職活動をサポートしてくれますよ。

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作業療法士 初任給

【参照サイト】
令和2年 賃金構造基本統計調査 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
令和2年 賃金構造基本統計調査 【参考】職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)(役職者を除く)
令和3年 賃金構造基本統計調査 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
令和3年 賃金構造基本統計調査 【参考】職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)(役職者を除く)
令和3年 賃金構造基本統計調査 職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
令和3年 賃金構造基本統計調査 職種(小分類)、年齢階級、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)

令和4年 賃金構造基本統計調査 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
令和4年 賃金構造基本統計調査 【参考】職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)(役職者を除く)
令和4年 賃金構造基本統計調査 職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)

厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」一般労働者 職種 表番号 1「職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」