作業療法士(OT)として働く際に、複数のOTをまとめるリーダーがいる職場も多いのではないでしょうか。

今回は、これからそうした役割を目指す方にその仕事内容やリーダーになるにはどうしたらいいのかなどをまとめました。

様々な規模やタイプの職場で過ごしてきた経験を元に記載していますので、「ゆくゆくは自らもリーダーになりたい」とお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。

1.作業療法士(OT)のリーダーの仕事内容

リーダーとしての細かい仕事内容は職場によって異なりますが、求められる役割には共通している部分が多くあります。

まずは、リーダーに求められる役割をはじめとして基本的な業務についてご説明します。

リーダーとしての役割

リーダーとしての役割は、OT・スタッフ間の業務の割り振りと全体の業務調整のほか、理学療法士(PT)や言語聴覚士(ST)といったリハビリ職、医師や看護師といった多職種との連携役になります。

具体的には、ほかのスタッフが円滑に業務を進められるような指導や育成に加え、職場全体を見渡し日々の業務の進め方を見直したり、室内設備(OTの治療物品の管理なども含む)の改善を図ったりして、働きやすい職場づくりを行います。

また、OTの代表としてほかの職種との連携を図るため、会議の出席も多くなります。

職場全体の患者さんへの作業療法、フォロー業務

患者さんへの作業療法の実施は、リーダーとなっても変わらず求められますが、加えてスタッフへの患者さんの割り振りなども重要な仕事になります。医師からのリハビリテーション処方箋をもとに、患者さんごとに担当となるスタッフを決定する場合が多いでしょう。

担当スタッフを決める際には、各スタッフの受け持ち患者数や知識、技術を踏まえて患者さんを割り振る必要があり、現場全体の状況はもちろんスタッフの力量も把握しておかなければいけません。

また、スタッフが患者さんの対応で困ったり、作業療法のプランに行き詰まったりした際は、助言や補助を行い必要に応じて担当変更するなど、円滑に作業療法を提供できるよう調整します。

ほかにも、シフト制の職場であれば、全体のスタッフの人員を把握し勤務シフトを作成します。その中で、休みのスタッフがいればフォローに回ることもあります。

スタッフへの教育、人材育成

リーダーはスタッフへの教育も重要な仕事の一つです。

新人教育はリーダー自身が担当する場合もあれば、中堅スタッフがメインに指導しつつ、要所でリーダーがフォローに回る場合もあります。その場合は、リーダーは中堅スタッフへの指導を重点に行います。

また、リーダーを補佐するサブリーダーがいる場合は、サブリーダーを将来のリーダーとなれるように育成する役割を担います。人材を育成することは、職場のマンパワーを高め、より良い作業療法を提供できることにもつながります。

勉強会に力を入れている職場ではその調整役を担う

人材育成の観点から勉強会を取り入れている職場は多く、その中でもリーダーは勉強会の計画を立て、その実施を指揮していく立場となります。

OTのスタッフ内で行う勉強会の場合、発表者は各スタッフが持ち回りで担当することが多く、リーダーは勉強会の日程や大まかなテーマ設定など勉強会全体の調整を行います。医師や看護師などの多職種も協力して行う勉強会の場合は、リーダーが率先して発表を担当することが多いです。

また、職場内の勉強会だけにとどまらず、地域の住民に向けた講習会などを行っている病院もあります。

外部に講習会を開くことで、地域と施設のつながりをつくるきっかけにもなり、地域の方に「リハビリ」を身近に感じていただける効果と合わせ、病院の経営にも良い効果を与える場合があります。

実際に私の職場では、地域の方向けに「健康的な体づくり」をテーマに体操の紹介などを勉強会として実施していました。

このほかにも、学会発表を推進する職場もあります。

学会発表は、発表を通して自らの知識を高めるきっかけになるだけでなく、所属する職場の知名度を上げるきっかけにもなるため、発表する本人だけでなく職場にも良い効果があり、比較的規模の大きい病院などではスタッフの学会発表を積極的に推進しています。

学会発表におけるリーダーの役割は、発表するスタッフの相談に乗りながら、研究をサポートするなどの業務があります。

2.作業療法士(OT)がリーダーになる方法

リーダーになるにはどうしたらよいか、リーダーになるための基準や職場による特徴を中心にご説明します。

OTとしての能力は考慮されるが、年功序列で決まる場合も多い

一般的にリーダーはキャリア年数の年功序列で決定されることが多いです。

OTの業界自体が、新卒でOTとして働く以外にも、ほかの業種で働いたのちに資格取得をする人も複数いるため、実年齢はあまりこだわりません。それよりもOTとしてのキャリアが長く、さらには職場もしくはその組織での勤続年数が長いことを重視します。

その理由としては、リーダーはスタッフを指導・管理する立場になるので、スタッフを指導できるだけの知識や技術が豊富にあることが求められます。さらに、職場内の実情を把握している人の方が、職場を管理しやすい傾向があるので、勤続年数が長いことがリーダー選定に有利に働きます。

長い期間、同じ人物がリーダーを務める場合もある

上記で述べたように年功序列でリーダーが決まるため、リーダーの退職などでポストが空かない限りリーダーが変わらない職場もあります。

ただ、規模の大きい施設や病院などでは系列事業所内で異動があるので、リーダーは定期的に変わります。異動に伴いリーダーのポストが空くと新しいリーダーを決めるため、このタイミングがリーダーを目指す人には絶好のチャンスといえるでしょう。

反対に、OTの人員自体が少ない職場や、勤続年数が長いスタッフや正社員の職員が少ない職場では、チャンスが少ない分競争も少ないため、キャリアが浅くてもリーダーになれるケースはあります。

また、サブリーダーとして職場をまとめるポジションがある場合は、リーダーのポストは空かなくてもひとまずサブリーダーの職につき、のちにリーダーに昇格する場合もあるでしょう。

3.リーダーになると給料はどうなるのか

実際にリーダーになると、給料面がどう変わるのか見ていきましょう。給料面以外のリーダーとしてのメリットもあわせてご説明します。

給料は飛躍的に上がるわけではない

リーダーの条件の一つにOTとしての知識や技術の豊富さがあげられることから、リーダーになる人は、OTとしてのキャリアが長かったり、その職場の在籍年数が長かったりする場合が多いです。それにより、ほかのスタッフより給料が高くなるということはあります。

しかし、実際はリーダーになったからといって、飛躍的に給料が上がるということはあまり聞きません。リーダー手当はつくことが多いですが、その額は高額でないケースがほとんどでしょう。

リーダーになることで、業務が増えて責任も重くなるので、給料が上がったとしても、それでとても得した気分になれるかというと、そうでもないケースがほとんどではないでしょうか。

そのため、どちらかというと給料を上げるためというよりは、OTとしてやりがいを感じたい方、職場をより良くしていきたいという熱意がある方がリーダーに向いているかもしれません。

賃上げそのものは難しいかもしれませんが、リハビリ職自体の需要が高まっていることから、職場の実情に応じて待遇改善の声を上げることは効果的かもしれません。特に規模の小さい職場では組織の経営陣との距離が近いことが多く、私の経験でも実際に改善されたことがあります。

リーダーになるメリットは何か

前述したように、リーダーは、職場をより良くするために、自らの能力を活かしたいという方に向いています。

リーダーになるメリットは、職場の勉強会のシステムを改善したり、人材育成をしたりすることで、職場としてのマンパワーが高まり、より良い職場づくりにつながり、スタッフが働きやすい環境を率先して作れる点にあります。

また、キャリアアップとしての視点では、転職活動においてリーダーとしての経験がプラスに働き、より自らの条件に見合った転職にもつながる可能性が高く、結果的に給料がアップする場合も多いです。

4.まとめ

リーダーは、自分個人の作業療法士(OT)としての業務を全うするだけでなく、OTの代表として、OTの職場全体、さらには病院や施設など組織全体の利益を追求できることが求められます。

自らがOTとして技術や知識を高め、スタッフの指導やフォローなどのサポートする力を持つだけでなく、業務全体を把握し管理する力や、多職種も含めたコミュニケーション力など、幅広い能力が求められます。

リーダーとしての大変さはありますが、その分仕事のやりがいも大きくなり、OTとして大きく成長させてくれます。

この記事を読んだ方が「リーダーになってみたい」「リーダーになることのイメージがついた」と感じていただけると幸いです。

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