誰にでも起こり得る可能性のある廃用症候群と携われる職場は、作業療法士(OT)としてのキャリアを考えると非常に魅力的です。

特に高齢者の場合、ちょっとした病気やケガをきっかけにして廃用症候群に陥るケースはとても多く、予防や改善のためにOTが関わることの意味はとても大きいと言えるでしょう。

今回は、廃用症候群に対しての役割と関わり方について詳しくご紹介させていただきます。

超高齢社会になる日本ではとても重要なスキルになりますので、是非参考にされてみてください!

1.作業療法士(OT)が廃用症候群リハビリテーションで求められる役割

廃用症候群とは、活動量が低下したり、病気やケガで長期間過度に安静にしていることで身体・精神機能の低下を引き起こしている状態を指します。主な症状としては、筋力低下(筋萎縮)や関節拘縮、褥瘡、起立性低血圧、認知機能の低下など。

人は一週間寝たきり状態を続けると、10~15%程度の筋力低下がみられるとも言われているのです。

廃用症候群に対するリハビリでは、“予防”と“改善”という2つの大事な役割があります。対象となるのは、高齢者が一番多く、病気やケガで長期間安静状態にいた方などが挙げられます。

廃用症候群のみの診断で介入する場合もありますが、他の疾患や障害と共に廃用症候群の診断がつき、OTとして介入する場合が多いです。その場合、廃用症候群としての加算対象となるのは、厚生労働省の令和2年度診療報酬改定によると、廃用症候群の診断がつくまたは急性増悪から原則120日とされています。

2.廃用症候群リハビリテーションでの仕事

廃用症候群に対するリハビリテーションは、急性期を対象とする病院勤務だけではなく、回復期や老年期で働く作業療法士(OT)も実施しています。

実際にどんな勤務スケジュールで働いているのか、仕事内容も含めご紹介していきます。

勤務スケジュールやイメージ

廃用症候群リハビリテーションを実施するOTの勤務スケジュールの一つの例をご紹介します。

基本的に病院やクリニック勤務のスケジュールと同様で、多様な疾患の患者さんがいる中で、廃用症候群の診断を受けている方たちも対応するといったイメージになります。

時間業務内容
08:30~09:00ミーティング、準備
09:00~12:30リハビリ
12:30~13:30昼食
13:30~14:00多職種カンファレンス
14:00~17:00リハビリ
17:00~17:30掃除(この後、勉強会が入ることも)

OTによる廃用症候群リハビリテーション

廃用症候群に対するリハビリテーションでは、対象者のもつ原疾患へのリハビリと廃用症候群に対するリハビリを複合的に考え、介入する必要があります。

OTとして廃用症候群のリハビリテーションを行う場合、主に2パターンに介入の仕方が分かれます。

一つは急性疾患やケガなどに伴う安静により廃用症候群に至り、状態の改善に向けて介入する場合です。このケースでは、対象者の状態を適切に評価した上で少しずつ負荷や刺激、活動量を上げていきます。

もう一方は、廃用症候群にならないよう維持・予防的に介入する場合です。こちらでは、対象者の今ある活動量や刺激を維持することが重要となります。

例えば、寝たきり状態の方に対しては、褥瘡や拘縮ができないようベッドや車いす上でのポジショニングの知識が必要になります。

そして、どちらに対しても言えることは、廃用症候群に対して身体機能面・精神機能面の両面にアプローチしていく必要があるということです。

チーム医療の中で求められる役割

廃用症候群に対するリハビリテーションでは、チーム医療で関わることがとても重要です。

リハビリの時間だけその方の活動量や刺激を増やしても、効果はごくわずか。。。

OTとして評価した対象者の能力や必要負荷を多職種に伝えることで、日中の離床時間を増やしてもらう、過度な介助はせず自分でやる機会を日常の中に作っていただく。そうして初めて廃用症候群の改善が見られてきます。

もちろん、OTだけでは把握できない日常の耐久性や摂食機能、歩行能力などを他のリハビリ職員や専門職と情報共有し、連携していくことがもっとも大切になってきます。

3.作業療法士(OT)が廃用リハビリテーションに携わる魅力

廃用症候群に対しリハビリテーションを実施する場合、身体機能だけではなく精神機能面へのアプローチ、そして生活全般を見ていくことが必要となります。

その全てに対しての知識や介入の術を持ち合わせているOTとしては、力を発揮できる、とてもやりがいのある分野でもあります。

チーム医療を実践しながら身につけられる場でもありますので、OTとして知識や技術を向上させたいと思う方は、急性期・回復期の病院、またはクリニック、老年期を対象とする介護施設等でぜひ廃用症候群に対するリハビリテーションに挑戦してみてください。

4.まとめ

作業療法士(OT)が、廃用症候群に対するリハビリテーションを実施する際の役割や魅力をご紹介しましたがいかがでしたでしょうか?

冒頭でもお伝えしましたが、廃用症候群に対する知識や技術は、どの分野で働いていても必要なものです。超高齢社会に突入した日本で、近年ではサルコペニアやフレイルといった廃用症候群と類似した状態も注目され、対応が重要視されています。

健康で元気な高齢者を増やすということは、医療福祉に携わる人材として共通している永遠の課題なのだと思います。廃用症候群に対する仕事内容ややりがいを理解し、ぜひOTとして成長するために挑戦してみてはいかがでしょうか。

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【参照サイト】
厚生労働省 令和2年度診療報酬改定について