転職や就職をするにあたって、月々の給与はもちろんボーナスがいくらあるのかは、気になるポイントだと思います。しかし、賃金にまつわることは中々他者に質問しづらいのが現状です。この記事では作業療法士(OT)のボーナスを男女別、年齢別、経験年齢別にまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。
1.作業療法士(OT)の平均ボーナスはいくら?
厚生労働省が公表している「令和5年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)」によると、作業療法士(OT)の令和5年のボーナスの平均支給額は、年間で71万4,400円(平均年齢は35.6歳・平均勤続年数7.4年)でした。(※理学療法士、言語聴覚士、視能訓練士を含む)
令和4年の平均支給額は年間で69万8,400円(平均年齢は34.7歳・平均勤続年数7.3年)だったため上昇していますが、金額的には1万6,000円の上昇なので、それほど大幅に増えているとは言い難いでしょう。その背景には令和4年に比べて平均年齢が下がっていることも影響しているかもしれません。
しかし、昨今の景気の低迷や物価高を踏まえると、平均年齢が下がっても平均支給額が増えているということは、待遇自体は改善傾向にあるといえるでしょう。
OTの年間賞与額(従業員10人以上) | 令和5年 | 令和4年 |
年間賞与額 | 71万4,400円 | 69万8,400円 |
平均年齢 | 35.6歳 | 34.7歳 |
平均勤続年数 | 7.4年 | 7.3年 |
【男女別・年齢別・経験年数別】OTの年間賞与額
ボーナス支給額をもう少し細かく見てみましょう。
まず、男女別の年間賞与額を見ると、男性の平均額が73万7,400円、女性の平均額が68万7,100円で、男性の方が多く支給されていました。女性は結婚や子育て等ライフステージの変化に合わせた働き方が求められることも多いのが、要因の一つでしょう。特に、子育て中は仕事と家庭の両立のために賃金の高さよりも働きやすさを重視する方も多く、男性よりも年間賞与額が少なくなる傾向があります。さらに、女性は出産後に育児休暇をとったり、時短勤務になったりすることも年間賞与額が男性より少なくなる要因でしょう。
そんな中で厚生労働省は令和4年から段階的に育児・介護休業法の改正を実施しています。その中には「産後パパ育休制度」の創設等もあり、職種を問わず男性が育児休業を取得することを推進するようになっています。こうした背景から以前に比べて男性が育児休暇を取ることが増え、家庭内での立場や役割分担も男女差が少しずつですが減りつつあるのが現状です。
年間賞与額の男女差に大幅な違いがないのは、こうした男女の役割の差別化が緩和されつつある社会背景も影響していると思われます。
続いて、勤続年数別の傾向を見ると、男女を問わず、勤続年数に応じて支給額がしっかり増えていく傾向にありますが、勤続年数別で見ても全体的に男性の方が多く支給されています。女性は結婚で配偶者の仕事の都合で引っ越したり、仕事と家庭の両立のために転職したりする方も多いことが要因の一つでしょう。
また、前年と比較した場合、男性は「経歴1年未満」を除き前年よりも高くなっているのが特徴です。反対に女性は「経歴5年~9年」以降はわずかですがそれぞれ下回っています。経歴年数が上がれば支給額が増えるものの、前年よりも上回る額をもらうことは、中々難しいようです。
男性・年齢別 | 令和5年 | 令和4年 |
平均 | 73万7,400円 | 71万3,600円 |
20~24歳 | 36万7,800円 | 29万700円 |
25~29歳 | 65万3,000円 | 64万9,200円 |
30~34歳 | 77万1,100円 | 73万1,600円 |
35~39歳 | 85万800円 | 81万9,900円 |
40~44歳 | 84万9,000円 | 83万5,500円 |
45~49歳 | 80万5,300円 | 92万6,800円 |
50~54歳 | 78万5,200円 | 91万700円 |
55~59歳 | 111万8,100円 | 94万8,100円 |
男性・経験年数別 | 令和5年 | 令和4年 |
平均 | 73万7,400円 | 71万3,600円 |
経歴1年未満 | 2万4,200円 | 7万9,300円 |
経歴1年~4年 | 63万4,800円 | 61万6,800円 |
経歴5年~9年 | 73万1,800円 | 68万9,000円 |
経歴10年~14年 | 84万2,800円 | 78万200円 |
経歴15年以上 | 96万9,300円 | 98万6,500円 |
女性・年齢別 | 令和5年 | 令和4年 |
平均 | 68万7,100円 | 68万2,000円 |
20~24歳 | 41万8,600円 | 35万8,500円 |
25~29歳 | 60万800円 | 66万6,200円 |
30~34歳 | 61万9,500円 | 65万8,000円 |
35~39歳 | 67万1,800円 | 65万5,700円 |
40~44歳 | 78万1,000円 | 94万3,000円 |
45~49歳 | 101万5,200円 | 92万7,500円 |
50~54歳 | 98万6,100円 | 107万100円 |
55~59歳 | 108万1,700円 | 114万7,900円 |
女性・経験年数別 | 令和5年 | 令和4年 |
平均 | 68万7,100円 | 68万2,000円 |
経歴1年未満 | 12万8,100円 | 3万8,500円 |
経歴1年~4年 | 64万1,500円 | 59万5,100円 |
経歴5年~9年 | 61万8,300円 | 71万3,800円 |
経歴10年~14年 | 72万2,300円 | 74万6,900円 |
経歴15年以上 | 93万7,100円 | 96万4,500円 |
【事業規模別】OTの年間賞与額
従業員 1,000人以上 | 令和5年 | 令和4年 |
年間賞与額 | 84万2,800円 | 90万900円 |
平均年齢 | 33.4歳 | 34.5歳 |
平均勤続年数 | 7.0年 | 7.3年 |
従業員 100~999人 | 令和5年 | 令和4年 |
年間賞与額 | 69万4,000円 | 68万1,200円 |
平均年齢 | 36.2歳 | 34.2歳 |
平均勤続年数 | 8.1年 | 7.4年 |
従業員 10~99人 | 令和5年 | 令和4年 |
年間賞与額 | 56万3,600円 | 50万7,800円 |
平均年齢 | 37.3歳 | 37.3歳 |
平均勤続年数 | 6.1年 | 6.7年 |
勤務先の従業員規模別に年間賞与額を見ると、前年同様に従業員規模が大きい事業所ほど多く支給されており、増加額も規模が大きいほど大きくなっています。
しかし、「従業員 1,000人以上」の事業所は平均勤続年数が前年は7.3年であるのに対し、令和5年は7.0年と低下しています。並んで平均年齢も前年は34.5歳であるのに対し、令和5年は33.4歳と1歳下がっています。その影響を受けてか、年間賞与額も令和5年は84万2,800円と、前年の90万900円から6万円弱低下しています。
また、「従業員 10~99人」の事業所では平均年齢は変化がありませんが、平均勤続年数は6.1年と前年の6.7年からやや低下しています。しかし、年間賞与額は56万3,600円と前年の50万7,800円から5万5,800円も上昇しており、事業規模が小さい事業所では待遇の改善が認められます。
「従業員 100~999人」の事業所では平均勤続年数は前年度より0.7年上昇し、平均年齢も
2歳上しており、年間賞与額も69万4,000円と、前年の68万1,200円より1万2,800円上昇しています。これらのことから離職を抑えられ、待遇面も若干の改善があるといえます。
2. 医療介護業界の他の職種との平均ボーナスの比較
最後に、他の職種で働いている人と比較してみましょう。
作業療法士(OT)に比べ、医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、診療放射線技師、臨床検査技師において平均賞与額が高くなっています。これらの職業(保健師を除く)とOTの大きな違いとして夜勤が有無です。また看護師や助産師、診療放射線技師など職種によっては特殊な手当(特殊勤務手当、危険手当等)が付く場合もあり、賃金に差が生じる一因となっているでしょう。
医療業界の他の職種に比べると、OTは特段ボーナスが高い職種ではありません。しかし、夜勤もなく特段危険性もなく、比較的働きやすいうえに、安定してボーナスがもらえる職種といえるのではないでしょうか。
反対に、保育士や介護職員等、福祉業界を中心とした職種に比べると平均賞与額は高くなっています。OTは医療施設でも福祉施設でも働ける資格であり、そのどちらでも専門性を活かせるのが魅力です。医療施設と福祉施設では、業務の内容や働きやすさ、賃金の高さに多少違いがある分、何を重視して働きたいかによって自分に合った職場を選べるのが作業療法士の大きな強みです。
職種 | 平均賞与額 |
医師 | 127万6,300円 |
薬剤師 | 76万8,700円 |
保健師 | 75万5,700円 |
助産師 | 91万9,900円 |
看護師 | 85万6,500円 |
理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,視能訓練士 | 71万4,400円 |
診療放射線技師 | 96万900円 |
臨床検査技師 | 86万8,100円 |
歯科衛生士 | 48万8,800円 |
保育士 | 71万2,200円 |
訪問介護従事者 | 49万300円 |
介護職員(医療・福祉施設等) | 55万600円 |
3.まとめ
作業療法士(OT)のボーナスは、どの事業所も大きな待遇の低下なく、改善傾向にあるといえるでしょう。平均ボーナスの支給額に着目すると、規模が大きい事業所に長く勤めるほど多くなる傾向にありました。
その一方で、規模が小さい事業所も前年よりも待遇改善がされています。規模が小さいならではといえる患者や利用者との距離の近さや、アットホーム職場の雰囲気、学生指導や学会発表などの細かい業務が削減され働きやすい、といった魅力も相まって、規模の大きい事業所から転職する方もいます。
近年ではライフワークバランスを重視する方が増え、様々な規模の事業所で活躍の場が増えているのです。転職先を検討する際、ボーナス支給額といった賃金に着目するのも大切ですが、長く働き続けられるか、自分の強みが活かせそうな職場かといった点を踏まえて、職場選びをすることをお勧めします。
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【参照】
厚生労働省HP 賃金構造基本統計調査
・令和5年賃金構造基本統計調査
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職種(特掲)、性、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
職種(小分類)、性、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
・令和4年賃金構造基本統計調査
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