これからの人生設計を考えた時に、作業療法士(OT)として何歳まで働いていけるのか、定年後にどのような働き方があるのか、関心がある方も多いのではないでしょうか。

現在OTとして働いている方はもちろん、これから目指そうとしている方に向け、OTとして定年までのキャリアの進め方、どうすれば定年後も生き生きと働くことができるかについて解説します。

1.作業療法士(OT)の定年は何歳

まずは、OTの定年の実情について詳しく解説します。

OTの資格に定年はない

資格取得をするのに年齢制限はなく、定年制度もないため、OTの資格を取得してしまえば、年齢が高くなっても働き続けることは可能です。

ただし、リハビリ業務には体を使う作業も多くあるため、年齢を重ねていくことで身体的負担を感じ、働き続けることが難しくなるという背景があります。

長く働いていくには、現場で直接的にリハビリをするだけでなく、管理者・指導者としての働き方などを検討していく必要もあるのかもしれません。

実際に日本作業療法士協会による「2019 年度 日本作業療法士協会会員統計資料」を見ると、76歳以上の会員の方もいます。ただし、この数字は作業療法士として実務に携わっている方のみなのか、休職中の方も含めているのかは、わかりません。そのため、76歳以上の方が必ずしも働いているとはいえません。

しかし、OTの働き方は現場だけがすべてではないので、OTの資格を活かして自分らしく働き続けられる仕事や職場を見つけてみてはいかがでしょうか。

OTの定年は職場ごとに定められている

定年は、職場の規定によって決まりますが、多くの病院や介護施設などでは、60~65歳を目安に定年制度を設けている場合がほとんどです。

定年後の再雇用制度を設けている職場では、3~5年ほど延長して働くことができるなど、事業所によって異なります。

2.定年を見据えた作業療法士(OT)の働き方

前項でも触れましたが、現場でのリハビリ業務は身体的な負担が大きく、高齢になってくると思うように働けなくなる可能性があります。

ここでは、定年を見据えたOTの働き方について解説していきます。

管理職として働く

管理職は現場のリハビリだけでなく、リハビリ科全体の管理業務や施設・病院の運営にも関わります。

様々な会議などに出席する機会が増えることで現場での業務は減ってきますが、責任者としての精神的負担は増えていくでしょう。

管理者となると大変なことも増えますが、収入アップにつながったり、自らが働きやすい職場づくりも積極的に行えたりするので、その職場で長く勤めたい方におすすめです。

ただ管理職になるには、OTとしての知識や経験などが豊富にあることが求められます。自らの能力を買われ管理職になることで、その職場になくてはならない人材となり、定年まで勤め上げやすくなります。

職場によっては、再雇用の声がかかりやすくなり、定年後も働ける可能性も上がります。

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養成校の教員として働く

定年まで働き続けたいという方には、作業療法士養成校の教員として働くのもおすすめです。

教員の仕事は、現場で得た知識・技術を活かしながら、身体的負担を少なく働くことができます。そのため、現場でのリハビリ業務に比べると、年齢を重ねても働き続けやすく、定年まで働きやすいという背景があります。

教員として働くためには、5年以上の臨床経験が必要です。教員の仕事は、身体的負担という面では負担は軽減されますが、OTの基礎的知識を網羅したうえで学生にわかりやすく伝える能力や、生徒や父兄とのコミュニケーション能力、学生をサポートする能力など、現場とは違った能力が求められます。

様々な能力を求められる大変さはありますが、その分、後進を育てるというやりがいも大きい仕事です。

そのほかにも、教員の業務は実習の支援などで様々な病院や施設などに出入りをする機会も多く、人脈が広げやすいというメリットもあります。自らが指導した生徒たちが、後々リハビリの現場を牽引していく存在になることで、新たな人脈につながっていくこともあり得ます。

セミナーや講座の講師になる

日本は超高齢社会であり高齢者が多いことから、高齢者の健康増進を促進している自治体が多く、民間でも健康講座を実施しています。OTは専門的知識や経験に基づいた健康に関する情報発信が行えるという強みがあるので、講師としても需要があるといえます。

また、近年では、発達障がい児や重症心身障がい児に向けた放課後等デイサービスがあり、小児分野においてもOTの活躍の場として大いに期待されています。

中でも、母親に向けた障害を持つ子どもとの関わり方や、その障害特性を理解するための講座なども開催されており、小児分野でもOTが講師として活躍できる場は以前よりも広がっています。

セミナーなどの講師の仕事は、身体的負担は少なく、定年後も続けられます。ただし、講師になるためには「この人の講座を聞いてみたい」と相手に思われる人材である必要があり、豊富な知識・経験が求められます。

また、セミナーや講座の仕事は、元々の仕事数が少ないうえに、求人で大々的に募集しているよりも、人脈をもとに仕事を獲得できるケースが多いです。そのため、講師の仕事だけで安定的な収入を得る難しさもあります。

自らのキャリアや専門性を伸ばしていく努力はもちろん、講座や勉強会などに積極的に参加し、名刺交換などを行い、地道に人脈を広げていく努力が必要です。

3.作業療法士(OT)として定年後も働くために

定年後も働けるOTになるためには、定年した時に今後の働き方を模索するのではなく、定年後を想定してキャリアを伸ばす、人脈を広げるなどの下準備が必要です。

ここでは、今からできることを具体的に考えていきます。

認定OT・専門OTを取得する

認定OTや専門OTは、取得するまでに時間も労力も要するため、取得人数は少ないのが現状です。そのため、認定OTや専門OTを取得することで、知識や経験を豊富に持っているOTである証明になり、職場の看板的存在になれることも大いにあり得ます。

それにより、定年後も働いてほしいと打診がくる場合もあるでしょう。

認定OT・専門OTについては、以下の記事で詳しく説明していますので、参考にしてみてください。

定年後も働ける法人を見つける

規模の大きい職場では、定年を迎えると定年退職となることが大半かと思います。反対に、小さめの法人では職員数が少なく、経験や知識の豊富なOTの存在は貴重です。

そのため、定年制度はあっても、本人が希望をすれば、再雇用や相談役などのポジションの職務につける可能性が大きくなります。

規模の大きい職場は、福利厚生が充実したり収入が安定していたりする反面で、求められる仕事量や身体的負担も多くなる傾向にあります。

職場の規模が小さくなることは、収入面では規模の大きい職場に劣る傾向がありますが、身体的負担が少なくなり、年齢を重ねても働きやすくなるというメリットもあります。

定年後も働き続けたい場合には、規模の小さい職場の方がかえって都合が良いケースも。
ぜひ、自らの希望にあった職場を探してみてはいかがでしょうか。

OTに関連する資格を取得する

OT以外の資格を複数所持しておくことは、定年後を見据えた求職活動において、有利に働きます。また、前述にもあったセミナーなどの講師や教員などでも、資格を持っていることで、よりエビデンスに基づいた知識を伝えられます。

資格によって、資格取得にかかる時間や難易度も異なるので、ご自身の実情に合わせて、少しずつ資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。

取得したい資格を決めるときには、現在働いている職場に役立つ資格はもちろん、将来的にどんな働き方をしたいかというビジョンに基づき、資格を選択することをおすすめします。

資格取得については、以下の記事で詳しく説明していますので、参考にしてみてください。

4.まとめ

日本は高齢化が進んでおり、平均寿命が延びつつあります。そのため、定年後も可能な限り働き続けながら、経済的に安定した生活をしたい、できれば作業療法士(OT)としてのキャリアを活かした仕事を続けたい、と思う方も多いのではないでしょうか。

OTは、比較的雇用は安定しており求人もありますが、体力的にも定年後も働き続けられる職場・仕事となると、求人数は限られます。定年後に自らの希望に沿った仕事を見つけるためには、定年が近くなってから焦るのではなく、将来を見据えて、少しずつ自らのOTとしてのスキルや人脈を広げる努力をすることが大切です。

この記事を読んだことで、将来のビジョンや自らの強みを考えたり、それに合わせたスキルアップをしたりするきっかけになれば嬉しく思います。

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【参照サイト】
日本作業療法士協会「2019 年度 日本作業療法士協会会員統計資料」