「理学療法士(PT)は年々増加傾向にあり、いずれは飽和状態になるため生き残れる術を身につけなさい」という話を昔からよく耳にします。
いまだに就職先も多く、社会に求められる職種であると感じられるのですが、本当にPTとして生き残ることが難しい時代がくるのでしょうか。
改めてPTの将来性について調べたことを基に、将来性やPTとして生き残る方法をまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
1.理学療法士(PT)の将来が不安視される要因とは?
国家資格を持ち、安定した職業としてのイメージも強いPTですが、なぜ将来を不安視されているのでしょうか?
その要因について詳しくみていきましょう。
PTの供給増加
ひと昔前のPT人口は少なかったため、就職先選びも切迫することなく転職のチャンスも豊富にありました。
ところが養成校増加に伴いPTの人数は増えており、日本理学療法士協会のデータでは2011年以降は毎年1万人以上の有資格者が誕生し、2022年には20万人を突破しています。
厚生労働省の調べでは、2040年にPTの供給数が需要数の1.5倍になる推計が出ており、将来的にPTの数が飽和状態となり就職や転職が難しくなるのではないかと懸念されています。
技術革新による代替
近年の技術革新は著しく、これまで機械化や自動化が難しいとされてきた業種でもIT化やロボット化が進んでいます。
リハビリ分野においても、リハビリ用の下肢ロボットスーツによる歩行訓練やAI(人工知能)の導入による画像解析やリハビリテーションプログラムの提案、早期の予後予測などを実用化する施設が出てきています。
脳卒中患者へのVRを用いた治療や、重介護者を介護する際に介助者の負担を軽減するロボットスーツなどリハビリに関わる幅広い分野で介入の余地があることから、将来的にPTの仕事が奪われてしまうのではないか不安視されています。
2.理学療法士(PT)の未来は暗くない!
上記のことからPTの未来に不安を感じている人が多くいることも分かりますが、必ずしもそれらが未来を暗くするとは限りません。
その理由を詳しく解説していきます。
PTは少子高齢化と相性が良い
内閣府によると日本の高齢化率は2019年時点で28.4%にものぼり、2065年には38.4%に達すると推計されています。公的介護保険がスタートした2000年度以降、要介護(要支援)認定者数も年々増えており、今後も医療介護業界は高い需要を保つと考えられます。
PTは人口比率が高い高齢者をターゲットにしている職種であるとともに、健康産業や教育、スポーツなど活躍できる場が幅広い点からも、更に需要が拡大していく可能性を大いに秘めています。
また、PTの総数が増え一般の方にもスキルが浸透していけば、今とは異なる働き方も増えてくるかもしれません。PTの活躍は国民の健康へも大きく寄与するため総人口が増えることは社会全体にも明るい未来になるのではないでしょうか。
技術革新は代替ではなくサポート的役割
AIやロボットは、決められたルールのなかで判断し、決められた処理を行うことを得意とします。
しかし、PTの仕事の対象は「人」です。
単純処理では人間より優れているAIやロボットですが、会話をはじめとする対人コミュニケーション能力など、まだ人間の能力には及ばない部分も多くあります。
PTは仕事の特性上、対象者の精神的負担をやわらげたり、状況を正確に把握しながら適時対応を変えたりするなど、複合的に判断する能力が必要です。ロボットに関しても同様で、セッティングや操作は人間が行う必要があり、訓練に使用する場合にはPTの知識と経験が必要となるでしょう。
そのため、AIやロボットの技術はPTの仕事を助けはするものの、様々な肉体労働及び頭脳労働を必要とするPTの仕事を完全に代替することは難しいといえます。
技術革新はPTの仕事を奪うのではなく、業務の負担軽減に寄与してくれる重要なサポーターになりうるのではないでしょうか。
3.理学療法士(PT)として生き残るために必要なこと
将来的にPTの総数が増えていくことに変わりはないため、やはりPTとして生き残っていけるか不安を感じる人もいるかもしれません。
そこで、次は何か行動を起こしたい方におすすめのノウハウをご紹介していきます。
〇〇療法士を取得する
理学療法士(PT)の認定資格には「認定理学療法士」と「専門理学療法士」があり、2022年4月から新たに「登録理学療法士」が加わりました。
登録理学療法士制度は既存の認定資格と同様に5年毎の更新制になるため、知識や技術を継続してアップデートしている証となり、PTとしての基本的な能力があることを証明する制度です。
既存の認定資格よりも取得しやすく、これからは必須の資格になることが予想されます。
人事考課や転職などキャリアアップにも影響することが予想されるため、登録理学療法士は可能な限り取得しておくと安心です。
もちろん認定理学療法士や専門理学療法士の取得も引き続き大きな武器になるので、自身のキャリアパスに応じて認証取得を目指しましょう。
基礎の精度をあげる
養成校で学んだ基礎を忠実に行えているか意識したことがある人は意外と少ないのではないでしょうか。
経験が浅く、キャリアやスキルに自信がないときは、技術的なことに目がいきがちです。
しかし、「カルテや画像から得られる情報とともに実際に触れて障害像や原因を考察し、適した治療プログラムを提案、そして適時修正を積み重ねる」という基本的な治療工程の精度をあげていくことが実はとても大切です。
例え特別なキャリアやスキルがなくても、基本的な作業を丁寧に積み重ね、PTとしての基礎力を高めることは、確固たるスキルになります。
それは、あらゆる情勢の変化にも対応し、PTとして生き残るための大きな力になるはずです。ノウハウを習得する前に、基礎をしっかりと身につけることを目標とし、臨床での研鑽を積みましょう。
理学療法士の技術以外のスキルを高める
社会経験の少ない人であれば、社会人として必要なビジネススキルも学ぶことをおススメします。前述したようにPTが求められる領域は多岐に渡り、これからも活動する領域は広がる可能性を秘めています。
どのような世界でも通用できるよう、社会人として求められるレベルのビジネスマナーやコミュニケーションスキル、パソコンスキルなどは獲得しておくべきでしょう。
これらは医療介護の現場でも活きる大切なスキルですが、養成校で学ぶことは限られているため、ビジネスマン対象の研修なども含めて基本を身につけておくと安心です。
その他にも外国語の習得は、海外での活動も視野に入れたキャリアプランを立てられるほか、近年増加している在日外国人に対応できる強みにもなります。
在日外国人に多い中国語やベトナム語は習得している人も少ないので、働く地域の人口統計によっては大きな武器になるかもしれません。
協会の活動に積極的に参加する
日本理学療法士協会をはじめ、各学術協会などPTが所属できる協会は多くあります。
協会が主催する学会や勉強会、研修会に参加することは、知識や技術を身につけられるだけでなく、志を同じくした仲間に出会える貴重な機会です。顔見知りが増えれば、自分の興味がある分野の活動に声をかけてもらえたり、情報を入手しやすくなったりするチャンスが広がります。
あくまでも副次的なものですが、職場以外の人脈を広げることもでき、様々なヒントを得る機会につながるでしょう。
4.これから理学療法士(PT)が生き残るために
いくらPTとして生き残れても望まない仕事をしていては本末転倒です。本当の意味での生き残りは、PTとして充実した人生を送ることだと思います。
PTとして確固たる基礎力を土台に、自分の専門性を高めていくことができれば、多少のことでは倒れない生き方を手に入れることができるのではないでしょうか。
キャリアに不安がある人ほど、技術的なことを学びたくなりますが、そんなときこそ基本に立ち返り目の前のことを1つずつ丁寧にやってみてください。
多くの情報が行きかう現代において、自分が必要とする情報を選択することは容易ではありませんが、限られた時間を有効に使い、スキルを身につけていきましょう。
5.まとめ
将来性を不安視されている理学療法士(PT)でしたが、実際には少子高齢化社会やIT化及び
ロボット化にも適応した将来のPT像がみえてきました。
PTの人口は増加していくため、選ばれる側になることは避けられないかもしれませんが、あらゆる状況の変化にも対応できるよう自分の軸をしっかりと培えれば安心です。
PTとして生き残り、充実した未来をつかんでいきましょう!
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【参照】
統計情報|協会の取り組み
理学療法士・作業療法士の 需給推計について – 厚生労働省
高齢化の現状と将来像 – 内閣府