理学療法士(PT)になるためには国家試験に合格する必要がありますが、この試験を受けるためには養成校に通わなければいけません。
PTの養成校には大学や短期大学、専門学校などいくつか種類がありますが、それぞれの違いや特徴についてよく分からないという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、PTの養成校の種類や選び方などについて紹介していきます。これから入学を考えているみなさんはぜひ学校選びの参考にしてみてください!
目次
1.理学療法士(PT)の養成校は大学と短大と専門学校
PTの国家試験の受験資格を得るためには、文部科学大臣または厚生労働大臣が指定した養成校で最低でも3年以上学び、必要な知識と技術を身につけることが必要です。具体的には、4年制大学、短期大学(3年制)、専門学校(3年制または4年制)があります。
卒業までの年数の他に、それぞれの養成校で大きく異なるのは学費になります。簡単に紹介すると国公立大学が最も安く、次いで短期大学、専門学校であり、最も高いのは私立大学となっています。
また、卒業後の進路などにも違いが出てくるので次章から詳しくみていきましょう。
2.各学校の違い
それでは、各養成校の特徴について具体的に紹介していきます。
大学は専門科目だけでなく幅広い知識を学べる教育の場
大学には国公立大学と私立大学の2種類があります。ほとんどの大学が4年間の教育カリキュラムになっています。
教育基本法によれば大学には次のような役割があります。
学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探求して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする
教育基本法 第二章 教育の実施に関する基本 (大学)
ここに記載してあるように、大学は専門分野だけを学ぶのではなく、一般教養なども広く学べる場であるというところが他の養成校との違いになります。もちろん、専門的な分野もしっかりと時間をかけて学ぶことができます。
教育の特徴としては、PTとして現場に出た際に患者の病態などについて論理的に筋道を立てて考えることができるように、学問を重視したカリキュラムになっていることが多いです。
また卒業後は「学士」の学位を取得することができ、大学での授業では研究活動に触れる機会も多くなっています。そのため、卒業後の進路として大学院への進学を視野に入れる学生も多く見られます。
気になる学費ですが、国公立大学で250万円程度、私立大学では550〜750万円程度必要です。国公立大学は選択肢、定員ともに少ない狭き門ですが挑戦する価値は十分にあるでしょう。
短期大学は最短で現場を目指したいが教養も学びたい人におすすめ
文部科学省によると短期大学の役割は次のように記載されており、大学と同じように、専門科目と並行して教養科目なども学ぶことができますが、3年間しかないため、カリキュラムとしてはタイトになってきます。
短期大学の個性・特色は、地域の身近な高等教育機関として、短期間で、大学としての教養教育やそれを基礎とした専門教育を提供する点にあります
文部科学省 短期大学について 概要 二項目目
短期大学で学ぶメリットの一つとして、卒業後に「短期大学士」の学位が挙げられます。これは、就職の際に大学卒として扱われる可能性に加え、短期大学卒業後に大学に編入したくなった際の選択肢が広がることもあり、同じ3年制の専門学校との大きな違いになります。
一方で、理学療法学科を設置している短期大学は2023年時点で日本に5つしかないため、選択肢がかなり限られてしまいます。学費も400〜450万円程度かかってきますので、国立大学に比べると高額になります。
専門学校は短期間で即戦力としての力を身に着けたい人に向いている
専門学校は3年制か4年制の学校に分けられます。教養科目の講義もありますが、専門科目を集中的に学ぶカリキュラムになっているため、卒業後の即戦力を養成するような環境に身を置くことになります。
専門学校は全国的に養成校の数が多いので、多くの選択肢の中から自分の目的にあった学校を選ぶことが可能となってきます。大学や短期大学に比べて、入学定員の枠が広く、試験の難易度も高くないため、比較的容易に入学できるのも特徴です。
夏休みや冬休みなどの長期休暇が大学や短期大学に比べて短いこともあり、学習のスケジュールはタイトになってきますが、勉強に集中したい人には向いているかもしれません。
学費は学校によっても違ってきますが、450万円〜550万円程度となっています。4年制でも、私立大学に比べるとかかるコストは低くなることが多い印象です。
3.3年制と4年制の違い
3年制と4年制の専門学校の違いについて簡単に紹介していきます。
卒業後に取得できる資格が異なる
3年制と4年制の専門学校では、卒業後に取得できる資格が異なります。
3年制の場合、卒業後に取得できる資格は「専門士」であり、4年制の場合は「高度専門士」と呼ばれるものになります。普通に就職する場合、「高度専門士」は大卒として扱われる場合もあり、職場によっては就職時の初任給や昇給幅に差が出てくる可能性が出てきます。
大学院への進学を検討したい場合
最近では理学療法士(PT)による研究活動も盛んになっており、就職後に大学院に進学する方も増えているようです。
大学院への進学を検討したい場合、3年制の専門学校を卒業することで得られる「専門士」では受験資格を満たさないため再度大学で学び直さなければなりません。
一方、4年制の専門学校卒業後に得られる「高度専門士」の資格を持っている場合は受験資格として扱われることになっているため、大学院進学を少しでも考えている場合は4年制の学校に入学することをおすすめします
4.養成校の選び方
こちらの章では養成校の選び方をいくつか紹介します。検討する際の参考にしてみてください。
カリキュラムの内容
理学療法士(PT)を目指そうと思ったきっかけは人それぞれだと思います。「スポーツ選手に関わりたい」「高齢者が楽しく生活できるようお手伝いをしたい」「障がいのある子どもたちの力になりたい」など、きっかけによって関わりたい分野にも違いが出てくると思います。
各養成校によっては、ある分野において、全国的に有名な教員が在籍しているなど、強みとなる分野が異なってきます。反対に、特定の分野を専門としている教員が在籍しておらず、一般的な内容のみの講義となってしまい、深く学ぶことができない可能性も出てきます。
特に学びたい分野が定まっている場合は、その分野に強い先生がいるか、カリキュラムに組み込まれているかといった情報を見て養成校を選択することをおすすめします。
学習環境はどうか?オープンキャンパスなどでも確認できる!
養成校によって同級生の人数や教育設備、授業の時間割や実習時間など学習環境は様々です。
同級生が多いと賑やかですが、少人数の方が教員と密にコミュニケーションを取れるため質問などをしやすいかもしれませんし、教育設備が良い方が最新の治療技術に触れることができるかもしれません。
こういった情報はオープンキャンパスに参加することでわかることも多いので、興味がある養成校があればオープンキャンパスを積極的に活用しましょう。
立地・通いやすさ
どの養成校でも3年間ないし4年間通うことになるので、立地や通いやすさは重要になってきます。通学に時間がかかると勉強時間や自分の時間の確保が難しくなってくる可能性もあります。
また立地次第では一人暮らしをしなければならないため、実家から通う場合と時間の使い方や生活費用も変わってくるのでしっかりとした検討が必要です。
養成校の近くに提携している病院などがあると臨床実習もそこで実施できる可能性が高く、移動に要する時間もずいぶん変わってくることもあります。
国家試験の合格率
入学を検討している養成校の卒業生の国家試験の合格率についてはしっかり確認しておきましょう。
国家試験の難易度は毎年異なってきますが、毎年一定の合格率をあげている養成校は国家試験の対策にも力を入れている可能性が高いです。自分の努力も大切ですが、学校側のサポートがあるとより合格に近づけます。
国家試験の結果次第では理学療法士として仕事を開始できるタイミングも変わってくるので、国家試験に対してしっかりと対策をとっているかどうかも養成校選びのポイントとして重要となってきます。
各養成校の情報はインターネットを駆使すればいくらでも調べることができるので、養成校を決定する前にしっかり見比べるようにしてみてください。
就職率と就職先
養成校を選択する際の選択基準として、卒業生の就職率や就職先実績で選ぶという考え方もあります。卒業生の就職率や就職先実績をHP上で公開している養成校も多く、このような養成校は就職に対するサポートも手厚い可能性が高いです。
PTとして働きたい分野が決まっている場合は、希望する専門分野への就職実績の有無で選択しても良いですし、特に進みたい分野が決まっていない場合は幅広い分野への就職先実績がある養成校を選ぶのも一つの手段です。いざ専門としたい分野が決まった時に困らないように就職先としての候補がたくさんあるような養成校を選んでおくと良いでしょう。
また、養成校によっては就職保証制度などを設けているところもあるようです。卒業後、就職が難しかった場合でも、規定の年数に達するまでは学費などを学校側が負担してくれる制度になりますが、全ての養成校が設けている制度ではないので、興味がある方は情報を集めておくことをおすすめします。
特待生制度や学校独自の奨学金があるか
第2章でそれぞれの養成校の学費について触れましたが、私立大学や専門学校になるとかなりの金額になるため、負担に感じる方も多いのではないでしょうか。
そういった方にとって心強い味方となってくれるのが奨学金制度です。一般に知られているのが日本学生支援機構の奨学金で貸与型と給付型の2種類があります。
養成校によっては学校独自の奨学金システムを設けているところもあり、学費に懸念のある方はこういった情報を参考に学校を選ぶということもできます。
地方自治体や民間団体、特定の医療機関などが奨学金を貸与または給付している例もあり、卒業後に規定年数を指定の医療機関や施設で働くことで、返済が免除されることもあるようです。
また、近年では専門実践教育訓練給付金という制度があり、社会人経験者がPTの資格を取るために養成校に入学する際、この給付の対象になることもあるようです。ただ、専門実践教育訓練給付金を受けられる養成校は全国で40校程度であるため、入学したい学校がその中にあるか事前に確認しておくことが必要です。詳しくは厚生労働省のHPで確認できます。
すべての奨学金や給付金制度には対象者の条件が定められています。それぞれの制度を利用したい場合、自分がその条件を満たしているかどうかをあらかじめチェックしておくことが望ましいでしょう。
【参照】教育訓練給付制度|人材開発|雇用・労働|分野別の政策一覧|政策について|厚生労働省HP
5.通信教育だけで理学療法士(PT)の資格は取れない
いくつかの国家資格では、通信教育のみで受験資格を得ることができるものも存在しますが、残念ながら理学療法士(PT)の資格ついては通信教育のみで取得できるものではありません。
PTの国家試験を受験するためには、その教育過程上で臨床実習を規定の時間履修することが義務付けられています。これはPTが仕事をする上で、患者さんや他の職種とコミュニケーションをとるための対人スキルや、患者さんの身体に触るなどの診療技術の取得が不可欠であると考えられているためです。
こういったスキルを身につけるためには通信教育だけでは不十分であるため、PTの資格取得を目指すには養成校に通うことが必須条件となってきます。
6.社会人には働きながら資格取得を目指す夜間部という選択肢もおすすめ
現在違う職種として働いていて理学療法士(PT)を目指したいという社会人の方には、日中働きながら夜間に授業を受けられる夜間部を設置している養成校という選択肢もあります。
夜間部の講義時間は18時〜21時くらいの間で設定されているため、仕事が終わってからでも十分間に合います。家事を片付けてから出席される主婦の方などもいるようです。
ただし、夜間部を設置している養成校は全国的に見ても少なく、主要都市近郊にしかない場合もあり、地方の方は通うのが困難な場合もあります。
また、夜間部といっても臨床実習は日中に行わなければならず、その間は仕事を休む必要も出てくるでしょう。仕事をしながらだと自己学習の時間を確保することが難しいということもあるかもしれないので、このような点も踏まえて入学を検討した方が良いでしょう。
7.卒業する学校によって就職後の給料や年収に差はある?
様々な業界において、最終学歴によって初任給に差が出てくることが知られていますが、理学療法士(PT)の場合も卒業した養成校の種類によって給与に差が出てくるのでしょうか?
一般的にはそれほど大きな差が出ることはないと思いますが、病院や施設によっては大学卒と専門学校卒で初任給に差が出てくることがあるようです。
具体的な例を出すと、ある回復期専門病院の新卒の求人票では大学卒の場合、基本給が218,600円であるのに対し、専門学校卒の場合は213,000円と5,000円の差が見られます。
このように職場によっては卒業した養成校の形態によって差が出てくることもありますが、給与にこだわりすぎると、志望校の選択範囲を狭めてしまうことにも繋がります。
自分が興味のある分野や就職先に進めそうな学校など、自分の気持ちとしっかり向き合い養成校を選んでいただいた方が、やりがいを持って働ける職場に巡り合う可能性も高まるのではないでしょうか。
8.理学療法士(PT)を目指せる全国の大学・短大一覧
日本理学療法士協会のHP上で全国の養成校の一覧情報が確認できます。
都道府県別に養成校の情報を検索できるので、入学を検討している方はお住まいの県にどのような養成校があるのか参考にしてください。
こちらでは大学・短大一覧を抜粋して記載しています。
大学一覧
短大一覧
【短大一覧】
学校名 | 都道府県 | 種別 | 年限 |
仙台青葉学院短期大学 | 宮城 | 学校法人 | 3年 |
平成医療短期大学 | 岐阜 | 学校法人 | 3年 |
岐阜保健大学短期大学部 | 岐阜 | 学校法人 | 3年 |
愛知医療学院短期大学 | 愛知 | 学校法人 | 3年 |
専門学校については、下記の協会サイトをご確認ください。
養成校一覧|理学療法士を知る|公益社団法人 日本理学療法士協会
9.まとめ
今回は理学療法士(PT)になるために通う養成校の種類とその特徴、養成校の選択方法などについて紹介してきました。
最終的な目標はPTの資格を取得することですが、養成校によって、学ぶ環境や内容は大きく異なってきます。
養成校での出会いや体験が、卒業後の進路に影響することも多いにあるため、今回の記事も参考にしていただきながら、しっかりと検討してみてください!
PTOT人材バンクでは無料の転職サポートも行っていますので、困ったらぜひ相談してみてください。
不明点があれば、是非PTOT人材バンクのキャリアパートナーに遠慮なくご相談ください。
関連記事
理学療法士(PT)を目指す方におすすめの記事をご紹介。
【引用サイト】
文部科学省 教育基本法 第二章 教育の実施に関する基本 (大学)
文部科学省 短期大学について 概要 短期大学の制度と沿革と特徴 第二項目
【参照サイト】
養成校一覧|理学療法士を知る|公益社団法人 日本理学療法士協会
教育訓練給付制度|人材開発|雇用・労働|分野別の政策一覧|政策について|厚生労働省HP