精神科で働くリハビリ職と聞くと作業療法士をイメージする人が多いのではないでしょうか。
実際、そのイメージが先行し、精神科領域に興味があっても就職先として検討するまでに至らない方もいます。たしかに、作業療法士と比べると数は少ないですが、精神科領域で働くPTは少なくありません。
今回は、そんな精神科領域におけるPTの役割や業務内容について解説していきます。
目次
1.精神科で求められる理学療法士(PT)
まずは、PTがなぜ精神科で求められ、どういった役割が期待されているのかを見ていきましょう。
PTの活躍の場は精神科にも広がっている
現在、日本では「精神疾患」が5大疾病に加えられ、認知症を含む精神疾患へPTが介入する重要性が高まっています。
日本理学療法士協会においても「日本精神・心理領域理学療法研究会」が2010年に設立されており、登録会員数も増加し続けているなど精神疾患に関わるだけでなく、精神科領域のリハビリテーションに興味を持つ理学療法士が増えてきていることが分かります。
精神科で求められるPTの基本的な役割
精神科のリハビリテーションは精神機能への介入が重視される傾向にあり、身体機能に対して介入するケースは決して多くありませんでした。
しかし実際には、向精神薬の副作用により身体介助が必要になるケースや、寝たきりが続くことによる廃用症候群、また精神疾患を持つ人が他の疾患を発症し身体的な介入が必要となるケースもあります。
精神科領域で働くリハビリスタッフは、精神分野の介入はできても身体的介入のノウハウを持っていないケースも多く、身体的な介入が必要な状況でも実施されにくい状況でした。
そのような背景の中、近年では精神科領域の患者様でも身体機能の評価や介入を行い、全体像をより深く把握することの重要性が注目されています。そこで必要性が高まっているのが、精神科領域におけるPTの介入です。
作業療法士だけではフォローできない身体的介入を行うことで、身体機能はもちろん精神機能生活機能の改善がみられるケースもあります。
身体機能も診ることができる作業療法士は多くいますが、ひとりひとりにかけられる時間は限られています。作業療法士が精神分野への介入を中心にリハビリテーションを実施し、理学療法士が身体機能を中心に介入することで患者様のADL、QOLの向上をさらに進めることが期待できるのです。
心療内科との違い
メンタルクリニックでは精神科と共に心療内科が診療科として入っていることが多くあります。精神科では心の病気そのものを、心療内科では体に現れる疾患を主な対象としますが、
PTとしては、どちらの診療科の疾患でも身体機能を中心にサポートしていきます。
対象となる患者様ごとの精神及び身体症状に合わせて柔軟な評価・治療を行うことが介入するうえでの重要なポイントとなります。
2.精神科での仕事内容
精神疾患に伴い身体機能の低下が発生しているケースや、精神疾患の治療中に他の疾患を発症するケースなど担当するケースは異なります。
基本的には、身体機能が低下した患者様への起居動作や歩行練習など、生活に必要な動作を訓練することが精神科で働く理学療法士(PT)の仕事です。
精神疾患により本来の身体機能を発揮できないケースもあるため、対象となる患者様が持つ本来の身体能力を見極めて治療プラグラムを立案してきます。
精神症状によっては動作指示が入りにくい場合もあるため、現在の理解力や動作遂行能力に合わせて訓練内容を適時修正しながら進めていくことが大切です。
また、作業療法士や病棟スタッフ、心理士、精神保健福祉士などと連携を取りながら総合的な評価を行うことも重要になります。例えば、寝たきりの患者様や能動的に活動することが難しい患者様に対して、身体能力の維持と共にポジショニングなど褥瘡予防にも働きかけます。
3.理学療法士(PT)が精神科で働く魅力
精神科でのリハビリテーションは今まで精神機能への介入が中心であったため、身体的な介入を行える知識や経験を持つリハビリスタッフがいないことも少なくありません。
PTとしての知見を活かし、精神科病棟での隠れたニーズを引き出し介入していくことができる点は、PTが精神科で働く上での大きな魅力です。
例えば、トランスファーや歩行介助の方法を多職種へ指導するなど、患者様だけでなく病棟全体の質を上げることも可能です。
また、精神機能と身体機能は関係性が強いものの評価方法は異なります。そのため身体機能を評価・治療できるPTとしての強みを活かし、精神科領域で活躍することができるでしょう。
まだ精神科で働くPTの数は少ないため、PTが精神科領域で活躍する前例を作っていく醍醐味も味わうことができるのではないでしょうか。
4.まとめ
精神科=作業療法士という先入観を持つ人も多いですが、精神科領域で理学療法士(PT)ができることは想像以上にたくさんあります。
身体機能への介入を進めたいけれどリハビリスタッフの経験がない場合など、PTを求めている精神科施設もありますので、興味のある人は精神科領域でPTの専門性を発揮していきましょう。
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