理学療法士(PT)になるには、大学や専門学校で専門知識を学ぶだけでなく、国家試験に合格する必要があります。
今回は、理学療法士の国家試験の勉強方法、過去問や出題傾向についてお伝えします。
目次
1.理学療法士国家試験の概要
理学療法士国家試験の概要は次のとおりです。
日程 | ・例年2月下旬に開催 ・2025年(令和7年)の筆記試験日は2月24日 |
会場 | ・全国8カ所(北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、香川県、福岡県、沖縄県) ・理学療法士養成校が会場になる場合が多い。 |
合格発表 | ・例年3月下旬に実施 ・2025(令和7年)年は3月21日(金)午後2時に厚生労働省のホームページにて発表 |
国試の概要については以下で詳しくお伝えしています!
2025年「第60回理学療法士国家試験」の日程と合格発表、合格率推移、過去問など
2.国家試験の問題数、合格点、合格率、難易度
理学療法士国家試験の問題数や合格基準などについて解説します。合格するために、問題数や合格点などを知っておくことが大切です。
問題数・合格基準
理学療法士国家試験の問題数は200問です。一般問題と実地問題に分けて出題されます。
・一般問題:100問
・実地問題:100問
合格基準は次のとおりです。
以下2つの条件を満たす必要がある。
- 一般問題(1問1点/160点満点)と実地問題(1問3点/120点満点)で合計280点満点中、総得点が60%以上
- 実地問題で35%以上の得点
つまり、一般問題と実地問題の総得点が165点以下、また、実地問題は41点以下で不合格です。一般問題で高得点を取っていても、実地問題の点数が低いと不合格になることがあります。実地問題は配点比率が大きいため、しっかりと対策しましょう。
不適切問題数とは?
試験終了後、合格発表の際に「不適切問題数」が公表されることがあります。不適切問題とは、正解が複数存在する可能性がある問題や、明確な解答を導き出せない問題のことです。
試験後の自己採点で解答が不明な問題があった場合、それが不適切問題に該当している可能性があります。その場合、全員に加点されるか、問題自体が得点対象から除外されることで、最終的な得点が調整される仕組みです。ただし、不適切問題が出題されない年もあります。
合格率・難易度
理学療法士国家試験の過去5年の合格率は、前述の「不適切問題数」によっても変化するためあくまでも目安ですが、約80%で推移しています。
難易度については、直近の合格率は約80%と安定しているため、しっかりと勉強すればそれほど難しくはありません。ただし、足切りラインがあるため最低限の得点は確保する必要があります。特に実地問題は合否を左右するため、全体的にバランスよく解答できる力を身につけることが重要です。
3.理学療法士国家試験の試験科目と出題傾向
理学療法士国家試験の筆記試験科目は次のとおりです。
1.一般問題
解剖学、生理学、運動学、病理学概論、臨床心理学、リハビリテーション医学(リハビリテーション概論を含む)、臨床医学大要(人間発達学を含む)、理学療法
2.実地問題
運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要、及び理学療法
一般問題と実地問題の違いと特徴
一般問題と実地問題の違いと特徴を解説します。
一般問題の特徴
理学療法以外の科目は作業療法士の国家試験と共通の科目になっており、専門職として知っておくべきである一般的で基礎的な医療知識が問われます。例えば「心臓の機能や解剖」「筋の支配神経」「身体の免疫機能」などについての問題が出題されています。
理学療法の科目に関しては専門科目とも言われ、理学療法士としての専門知識を問われる問題が出題されます。理学療法の科目は基礎理学療法学、理学療法評価学、理学療法治療学、地域理学療法学、臨床実習の5つの内容に分類でき、それぞれの内容から満遍なく問題が出題されます。
例えば「正しい関節可動域の測定方法」「理学療法プログラムの内容」「物理療法の適応と禁忌」などが該当します。理学療法評価学(関節可動域測定や徒手筋力テストについて)、理学療法治療学(物理療法、運動療法について)の出題頻度は高いと言えるので、おさえておくと良いでしょう。
実地問題の特徴
一般問題とは異なり、知識のみでなく思考力も問われる問題になっています。例えば、具体的な症例の現病歴がイラストやX線写真、検査結果などと併せて提示され、適切な理学療法プログラムや病態の選択などを求める問題などが出題されます。
一つの科目のみならず、複数の科目の知識を組み合わせなければ解決できない問題も多いため、幅広く複合的な知識が必要になってきます。
1問3点と配点比率も大きく、実地問題に関しては40問中の3割程度(12問)は正答していなければ不合格となってしまうため、しっかり対策をする必要があるでしょう。
時事問題
毎年出題基準に基づき、社会情勢や医療業界の課題に関連した時事問題が含まれることがあります。そのため、受験科目の知識だけでなく、医療業界で注目される話題にも対応できる準備が必要です。
4.現役PTが解説!効率的な勉強法や過去問の使い方
4年制の養成校では、3年後期から4年前期にかけて実習が行われるため、国家試験が迫る中で実習と試験対策を両立する必要があります。
日頃から計画的に学習を進めておき、実習が終わった後に本格的な国試対策に取り組むことが重要です。国家試験経験者かつ有資格者である筆者の経験も含め、効率的に学習を進めるためのコツを紹介します。
厚生労働省の過去問を活用
厚生労働省は過去の試験内容と解答を公開しており、養成校で学んだ知識がどのように出題されるかの傾向を掴むことができます。これを活用することで、試験の出題傾向を理解し、効率的な対策が可能です。さらに問題数を把握できるため、受験時の回答ペースを確認するのにも役立ちます。
一般問題の勉強方法
まずは過去問を一通り眺めてみてどのような問題が出されるのか把握します。現在の知識で解けるもの、解けないものに分類すると自分の得意分野と苦手分野が分かってくると思うので、できるだけたくさんの過去問にあたってみましょう。
得意と苦手の傾向がわかったら、苦手なところを中心に問題を解いていきましょう。間違えたところは解説を読みながら要点をまとめていきます。問題集や参考書は解答の解説がしっかりしているものを選ぶのが良いと思います。 大切なのは解答を暗記するのではなく、一つ一つの問題の選択肢を見たときになぜ間違いなのか、正解なのかが理解できるようになることです。自分自身でしっかり説明できるくらいに解説を読みこみましょう。間違えた問題の解説は読むだけではなく、ノートにまとめた方が整理しやすいという人もいますので、自分に合った勉強方法を早めに見つけましょう。
実地問題の勉強方法
実地問題もまずは傾向を知るために過去問を見てみましょう。問題数はそれほど多くないため、過去5年分くらい遡ってみるとのような問題が出題されやすいかわかってくると思います。
特に専門科目は出題頻度が高く、関節可動域測定や徒手筋力テストの検査方法、症例に合わせた治療法の選択、また評価結果の解釈などはしっかりおさえておくと良いでしょう。
時々、一般問題と実地問題のどちらかに重点を置いて勉強をしようとする人がいるようですが、どちらも重要ですので一方に絞るのは大変危険です。どうしても時間がない場合は、両方に重なる分野の理解を深めることに重点を置き、両方の問題に対応できる力をつけましょう。
苦手と感じる人が多い科目の勉強方法
一般問題・実地問題ともに、臨床実習で活用できるような科目については比較的頭に残っていることが多いと思います。私の印象ですが、小児の理学療法や発達、各種計算問題(METsや力学モーメント)や精神障害と臨床医学などの内容は苦手な学生が多く、勉強に時間を割く必要があった記憶があります。
苦手分野についてはたくさんの問題集や参考書に手を出すよりも、同じものを何周もする方が頭に入りやすく、個人的にはおすすめです。
国試対策アプリやサイトの活用も
最近ではアプリやSNS、ブログなどで国家試験の対策が発信されていることも目にします。それらを使えば、移動中やすきま時間に効率よく学習でき、間違えた問題を繰り返し解く機能や正解率の確認も可能です。
iPhoneやAndroidで「理学療法士 試験」などと検索すれば、無料でダウンロードできるアプリが多数見つかります。また、アプリ以外にも有志が作成した問題サイトなどもあり、気軽に勉強を進めることができます。
5.まとめ
今回は、理学療法士の国家試験の勉強方法、過去問や出題傾向についてお伝えしてきました。
国家試験は養成校での勉強や大変な実習を乗り越えた先にあるいわば最後の関門、プレッシャーを感じる学生も多いと思います。
まずはどのような問題が出題されるかを知ることから初めて、早め早めに対策を立てていきましょう。取り掛かりが早いに越したことはないです。苦手な分野は一つ一つ潰していき、解るまで何度も復習をしましょう。
勉強すればするほど不安になることもあるかと思いますが、身につけた知識は国家試験に合格するためだけでなく、PTとして仕事を始めた時に何より役に立つはずです。将来の自分や患者様のためにも自信を持って頑張ってみてください!