PTが日々向き合っている対象者の中には、身体活動を行う上でリスクを抱えている方も多くみられます。
そういった方のリハビリを行っていると、怪我や事故に直面する機会に遭遇してしまう可能性もあるでしょう。
万が一の事故があった際に、自分の身を守ってくれるのが賠償責任保険です。今回は賠償責任保険がどのようなものなのか、加入条件やメリット・デメリットなどについて説明していきます。
また、最後に賠償責任保険以外のものについても少しだけ紹介します。
目次
1.賠償責任保険の概要
「賠償責任保険」とは、業務上の過失によって損害賠償を請求され、法律上の損害賠償を負う責任が個人に発生した時に、その損害を補償する保険制度です。
理学療法士(PT)が加入するものは、理学療法士損害賠償責任保険と呼称されています。最近は個人の責任が追求されるケースも増えてきているようで、PTが安心して業務に専念できるように設けられている保険になります。
具体的な支払いの事例としては、肘の屈曲の関節可動域練習中に謝って上腕骨を骨折させてしまったとか、車椅子移乗を行っているときに患者さんが転落して骨折してしまった、また、健常者への怪我の予防措置として運動を処方したが、該当箇所を傷めてしまったなどが挙げられます。
2.全員加入部分と任意加入部分の違い
日本理学療法士協会のホームページによると理学療法士賠償責任保険は「基本プラン(全員加入部分)」と「上乗せ補償プラン(任意加入部分)」の2つのプランがありますので、これらの違いについて説明していきます。
全員加入部分
基本プラン(全員加入部分)は日本理学療法士協会の会員であれば自動付与されるプランであり、個人での申し込みは不要となっています。また、保険料も協会が負担してくれます。補償内容は以下の通りです。
補償項目 | 支払い限度額 |
身体補償 | 1事故 300万円 |
無料の保険だけあって、補償内容は最低限のものであり、補償額も少額となっています。
任意加入部分
上乗せ補償プラン(任意加入部分)の補償内容は以下のようになっています。
保険の種類 | 補償項目 | 支払い限度額 |
理学療法士賠償責任保険 | 身体障害 | 1事故 1億円 (期間中最大3億円) |
財物損壊 | 1事故 100万円 | |
初期対応費用 | 1事故 500万円 (見舞金品は1名につき10万円) | |
人格権侵害 | 1事故・期間中 100万円 (被害者1名につき 50万円) | |
団体総合生活補償保険 (標準型) | 交通事故による傷害入院 | 1日につき 1500円 |
交通事故による傷害手術 | ・入院中に受けた手術の場合 傷害入院保険金日額の10倍 ・上記以外の手術の場合 傷害入院保険日額の5倍 (1事故・1回限度) | |
交通事故による傷害通院 | 1日につき 1000円 | |
身体傷害/財物損壊 | 1事故 2億円 |
このように、基本プランよりも業務中の過失による事故などに対して補償範囲や補償額が大幅にアップしているのがわかります。
また、団体総合生活補償保険も加入することになるため、日常生活での事故や怪我に対して補償されるのも特徴になってきます。
上乗せ補償プラン(任意加入部分)の年間保険料は3,470円になっています。年度の途中で加入する場合は保険開始日に応じて保険料が減額される仕組みです。
こちらの内容は日本理学療法士協会のホームページでも確認できるようになっています。
3.加入条件と申し込み方法
これらの保険に加入する条件とその方法についてみていきましょう。
加入条件
加入条件としては、日本理学療法士協会に入会していること(会員である)が前提です。そのため、休会中の方は保険適用外となります。また、入会手続き中の方は会員の決済方法が確認できている場合のみ保険適用となります。
会員であっても、年会費を納入されていない方は保険適用外になるので注意が必要です。納入期限を過ぎて支払った場合は、その翌月からの保険適用になります。
申し込み方法
全員加入部分については協会員であれば申し込み不要で保険適用となります。
任意加入部分については、日本理学療法士協会のホームページのマイページ(会員限定コンテンツ内)からのみ申し込み可能となってきます。
4.賠償責任保険のメリット・デメリット
理学療法士賠償責任保険の内容について紹介してきましたが、そのメリットやデメリットについてみていこうと思います。
メリット
リハビリ実施中の事故が原因で、万が一訴訟になってしまい、理学療法士個人に損害賠償を求められた場合には、その負担額はかなり大きなものになってきます。訴訟では賠償額が数百万円〜数千万円になることもしばしばあります。
日本理学療法士協会員が自動的に加入することになる基本プランの補償額ではその金額を賄うことは難しいですが、上乗せ補償プランであれば少し心に余裕を持てます。いざというときのために身を守ること考えれば加入することは大きなメリットになるでしょう。
デメリット
上乗せ補償プランに加入する場合、年間保険料は約3,500円かかることになりますが、万一の事態のことを考えると小さなデメリットでしかありません。
また、日常生活における事故や怪我の補償までついてくることを考えると、デメリットについてはほとんどないと言っても過言ではないかもしれませんね。
5.理学療法士(PT)が加入を検討したいその他の保険について
最後に、日本理学療法士協会の賠償責任保険について、PTが加入を検討したいその他の保険について少しだけ紹介していきます。
感染補償制度
こちらは株式会社メディクプランニングオフィスが運営する感染症に罹患した際の補償を担保した保険になります。
自身が新型コロナウイルスやインフルエンザなどに感染してしまった場合に見舞金が支払われます。感染症が原因で死亡した際は100万円、また入院や通院が必要になった場合、日数に応じて1〜10万円の見舞金が支払われます。
併せて、自分が患者さんに感染症をうつしてしまった場合にも状況に応じてお見舞金などが支払われます。
こちらの保険は年間保険料が1,310円になっており、申込日の翌日より1年間適用されます。
その他の任意賠償責任保険
先ほど紹介した株式会社メディクプランニングオフィスでは、医療専門職向け賠償責任保険という保険も取り扱っています。
内容としては、先ほど紹介した上乗せ補償プランの理学療法士賠償責任保険の項目に加え、新型コロナウイルスやインフルエンザやそれ以外の感染症への罹患、ボランティアや災害時の活動中の事故や怪我が補償の範囲に含まれています。
日常生活上での事故や怪我は補償内容に含まれてこないのが、協会の保険の上乗せプランとの違いです。
こちらは年間保険料が3,440円となっており、理学療法士協会の上乗せプランと同程度の金額になっています。保険適用期間が決まっているため年度の途中からの加入だと保険料が減額されます。
PT向けの賠償責任保険としては、株式会社武蔵野社が取り扱っている保険があり、こちらは年間保険料が3,000円で、業務中に生じた対象者の身体障害や財物損壊に対してのみの補償内容となっています。
6.まとめ
今回は理学療法士(PT)の賠償責任保険について紹介してきました。
PTとして仕事をしている限り、対象者の怪我や事故というリスクはゼロにすることはできないため、自分の身を守るために何らかの賠償責任保険に加入しておくのは必須となってくるでしょう。
理学療法士協会の賠償責任保険をはじめ様々な保険があるので自分の仕事や生活に適したものを選択するようにしてみてください。
不安や不明点があれば、是非PTOT人材バンクのキャリアパートナーに遠慮なくご相談ください。
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【参照サイトU R L】
理学療法士損害賠償責任保険
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