ライフワークバランスの見直しが進む現在では、在宅ワークが注目されています。通勤しなくてもよいことや出社できない状況になっても仕事ができる在宅ワークは、多くのメリットがあります。理学療法士(PT)の場合はリハビリ室などで訓練を行う仕事がメインとなるため、在宅ワークは難しいと考えられがちですし、在宅ワークを実施している職場は、現時点ではそれほど多くないのが現状です。しかし、理学療法士が自宅で対応できる業務もいくつかあります。

この記事では、医療福祉業界における在宅ワークの現状と、理学療法士が在宅でできる業務についてご紹介します。在宅ワークに興味のある理学療法士の方は、ぜひご参照ください。

1.理学療法士(PT)は在宅ワーク可能?医療福祉業界の実態

テレワークや在宅勤務が広がりを見せている中、医療福祉業界の普及率は依然として低いのが現状です。2023年の内閣府調査では、医療福祉業界のテレワーク実施率が11.3%とされ、全体平均の30.0%との差が際立っています。

この章では、医療福祉業界でテレワークが進みにくい要因と、導入した場合のメリットについて解説します。

出典:内閣府「第6回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」

医療福祉業界における在宅ワークが浸透しない背景

医療福祉業界における在宅ワークが浸透しない背景として、以下の2点が挙げられます。

在宅ワークが難しい業務が多く存在する

リハビリを担当する理学療法士(PT)や作業療法士(OT)のように、医療や介護の現場では患者さまの身体状態を確認することが欠かせない業務です。顔色の変化や身体の状態、脈拍数などを正確に把握するには対面での観察が不可欠であり、画面越しでは些細な変化を見落としてしまうリスクがあります。また、理学療法士が行う運動療法や物理療法には患者さまに直接触れる必要があるため、リモートでの実施は困難です。このように、医療福祉業界で在宅ワークが難しい理由の一つは、患者さまとの「対面が重要である」という点にあるといえるでしょう。

ICT化が十分に進展していない

「公益財団法人 長寿科学振興財団」によると、ICTは以下のように記載されています。

ICTとは、情報通信技術と訳されるInformation and Communication Technologyの頭文字をとった略語です。今やICTを活用しない生活は想像できないほどに、その活用の範囲は広がりをみせています。

公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット 高齢者とICT  医療・介護・健康分野のICT活用

在宅ワークを進めるためには、医療・介護・健康分野におけるICT化が重要です。しかし、総務省の「情報通信白書」によると、医療・介護・健康分野におけるICT利活用の推進において、電子カルテの導入が一部進んでおり、普及率は医療機関全体の3割程度であるものの、以下のような課題が挙げられています。

  • 医療情報連携ネットワークは運用コストの負担が大きく継続的な運用が課題
  • 特定の製品やサービスを提供する業者のシステムやソフトウェアを、各事業所のニーズや要件に合わせて変更・調整することは可能だが、異なる業者同士の情報連携が困難となっている。そのため、中小の事業所も含めた医療情報連携を推進するためには、クラウド等(データをインターネット上に保管するサービス)を活用した低廉なモデルの普及・展開が必要である。

また、患者や利用者の個人情報を適切に管理・活用するためには、ルールの策定やセキュリティ対策の検討が必要となります。

出典:総務省 情報通信白書 平成28年版 医療・介護・健康分野におけるICT利活用の推進

2.医療福祉業界での在宅ワーク導入のメリット

医療福祉業界での在宅ワークの導入には未解決の課題がある一方、様々なメリットも見込まれています。

仕事と生活のバランスを整える

在宅ワークの導入により、介護や育児などで働き続けることが難しかった方々が仕事を続けられるようになります。さらに、在宅ワークでは通勤時間が削減できるため、プライベートの時間も確保しやすくなります。身体的および精神的な負担が軽くなり、仕事と私生活のバランスが取れれば、ワークライフバランスの向上が見込めるでしょう。

離職率の減少や労働力の確保につながる可能性がある

ICT化が進展することで、生産性の向上が見込まれます。業務のデジタル化により無駄が減少し、「在宅勤務の方が仕事に集中しやすい」と考える人が増加する可能性があります。

ワークライフバランスと生産性の向上は、人材の確保にも役立ちます。国土交通省の調査によれば、テレワークを経験した人々の満足度は約80%に達し、今後も週に1回以上の出社を組み合わせたハイブリッドな働き方を希望する人が70%を占めています。社会全体で在宅ワークを求める労働者が多いため、病院や介護施設での在宅勤務が導入されれば、離職率の減少や労働力の確保につながる可能性があるでしょう。

出典:国土交通省 令和5年度テレワーク人口実態調査-調査結果(概要)

3.理学療法士(PT)におすすめの在宅ワーク

理学療法士が日常的に行う業務の中には、在宅で実施できるものもあります。患者さまと直接接しない書類作成やリハビリプランの作成などは、在宅でも行える業務です。また、リハビリは対面で行うことが理想ですが、現在はオンラインでの実施も試みられています。この章では、理学療法士におすすめの在宅ワークをご紹介します。

報告書や計画書などを作成する

リハビリの報告書や計画書の作成は、在宅ワークで行いやすい分野と言えます。セキュリティなどの理由で職場のパソコンでしか作業できない場合には無理ですが、最近ではインターネット経由で利用できる介護ソフトを導入している病院や事業所も増えているので、自宅のパソコンを使って作業できるケースもあります。

自主練習メニュー作り

訪問リハビリテーションで働いている方の場合は、利用者に自主練習を提案する機会も多いと思いますので、在宅ワークとして練習メニュー作りを行うことができます。文字だけのメニューでは味気なく、利用者の方も取り組みにくいので、イラストや写真などを使った視覚的にわかりやすいものがおすすめです。

専門知識を生かしライティングの仕事を行う

臨床で働くことに加えて、理学療法士の資格を活かしてライター業務にチャレンジすることも可能です。国家資格である理学療法士は高い専門性を有しているため、ライター業務で高単価の案件を受けられる可能性も高い可能性があります。また、記事の内容を確認する監修者や、外国の論文を翻訳する業務など、自分のスキルや知識に基づいて様々な仕事を選択できる点も魅力的です。

オンラインでリハビリを実施

2018年にオンライン診療が認可されたことにより、オンライン診療を実施する施設が増えています。理学療法の分野でも、患者さまの歩行動画を基に状態を確認し、その状態に合った運動プログラムを動画で提供し、自宅で実施してもらうオンライン訓練が可能になりました。さらに、リモートで患者さまの訓練を見守り、リアルタイムでアドバイスすることもできます。オンラインリハビリを導入することで、患者さまがリハビリを行う機会が増えることは大きなメリットです。しかし、実際に対面しないと把握できない状態も存在するため、オンラインリハビリには注意が必要です。リハビリ業務では患者さまと理学療法士の信頼関係も重要なため、オンラインリハビリは、ある程度の関係を築けた患者さまと行うのが望ましいでしょう。

出典:厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」

知識を深める努力をする

新しい参考書を買って勉強したり、勉強会用の資料を作成したりするのも在宅ワークで行いやすい仕事です。勉強会用の資料の作成は知識のアウトプットになりますので、得た知識を深めるとともに、理学療法士としてのスキルを磨く助けにもなるでしょう。

4.理学療法士(PT)として在宅ワーク可能な職場にはどんな特徴があるか?

在宅ワークが可能な職場には、いくつか特徴があります。ここでは2つの特徴を取り上げてみたいと思います。

在宅ワークの環境が整っている

在宅ワークを行うためには、通信システムや遠隔会議システムなどが整っている必要があります。このようなシステムの整備は、企業側の負担で行うのが一般的ですが、すでに自宅で契約しているものがある場合にはそれを活用するケースもあります。

在宅ワークに力を入れている

いくら在宅ワークを行える環境が整っていても、病院や事業所が在宅ワークに積極的に取り組んでいなければ、在宅ワークを行うのは簡単ではありません。職場にテレワークやリモートワークの制度がある場合はよいですが、そのような制度がない場合には、上司に在宅勤務ができないか交渉してみてもよいでしょう。

5.理学療法士(PT)として在宅ワーク可能な職場とは?

最初に、理学療法士が在宅ワークを行える職場がどのようなものか、見てみたいと思います。

仕事の一部に在宅ワークが導入されている

アメリカなどでは、パソコンを使ってオンラインでリハビリのサービスを提供することも実用化されているようですが、日本では完全にオンラインでリハビリを行っているところは、まだまだ少ないと言えるでしょう。

しかしながら、報告書や計画書などの書類作成や自主メニュー作りなど仕事の一部を、在宅ワークで行っている病院や事業所は増えています。今後はリハビリも含めて、多くの仕事が在宅で行えるようになっていくかもしれません。

仕事そのものが在宅ワークになっている

お客さんとオンラインでコミュニケーションをとりながら、ヘルスケアのサポートをする健康アドバイザーのような仕事であれば、完全に在宅で行える仕事もあります。

また、副業で行っている方もいますが、理学療法士として得た知識をもとにして専門性の高いライターとして働く方法もあります。記事をチェックする監修者として活動することや、外国語に堪能であれば翻訳家という道もあります。

6.理学療法士(PT)の在宅ワーク可能な職場の探し方

理学療法士の在宅ワークを探している方は、求人サイトやインターネットなどで「在宅勤務可能」となっている求人をチェックしてみましょう。

テレワークの導入率は、従業員規模の大きい職場ほど高い傾向がありますので、従業員数が多い病院や施設に応募して、面接のときに在宅勤務があるのかどうかを聞いてみるのもひとつの方法です。

また、友人や以前の仕事関係者に在宅勤務が可能な仕事を探していることを伝えておくと、情報を得ることができる場合もあります。これまでに培ってきた人脈も活用して、探してみるとよいでしょう。

PTOT人材バンクは最新の求人情報を随時お届けしておりますので、ぜひ合わせて参考してみてください。

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