理学療法士(PT)の人数は年々増加傾向にあり、今後飽和していくという話を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか?
実際に、将来的には求人を探すのも大変な状況にならないか不安を抱いている人も少なくありません。しかし、PTの数が増え続けている現在もPTの求人はなくなることなく、むしろ人材不足とも言われています。
なぜこのようなことが起きているのでしょうか?
今回は、PTが人手不足と言われる原因とPTの将来について解説していきますので、是非参考にしてみてください。
目次
1.理学療法士(PT)の数は年々増えている
日本理学療法士協会によると、平成23年度から毎年1万人以上の人が理学療法士国家試験に合格し、令和4年度までに20万人以上の理学療法士PTが誕生しています。
平成元年頃は年間1000人前後の合格者で、累計の合格者数も9000人弱だったことを考えると、20年の間に年間合格者は10倍、累計合格者に至っては20倍以上にも増えているのです。
今後も同じように毎年1万人以上のPTが増え続ける状況が続くと、10年後には30万人、20年後には40万人と膨大な数のPTが存在していくことになります。
更に養成校が増え続ければ予想よりも早いペースで増えていくことも考えられる反面、PTの総数が減ることは現状では考えられないため、PTの供給数が増えていくことは確かです。
2.理学療法士(PT)が人手不足と言われる原因
前述したように有資格者が多くなっている背景があるなか、なぜ理学療法士(PT)は人手不足と言われているのでしょうか?
その理由について詳しくみていきましょう。
業界によって状況は異なる
日本理学療法士協会に所属するPTの就職先をみてみると、半数以上が病院に勤務しており、福祉施設で働くPTは老人福祉施設で1.6%、地域包括支援センターや身体障害者福祉施設や児童福祉施設はそれぞれ全体の1%に満たない割合となっています。
需要の問題もありますが、このようにPTの就職先には業種によって大きな開きがあることが分かります。特に介護分野においては、高齢化に伴いPTの需要が高まっているものの、介護施設に就職するPTが少ないために、人手不足になっていると考えられます。
実際に、私は急性期病院から介護施設まで運営する医療法人で勤務していましたが、就職希望者の多くが急性期病院志望で、介護施設への就職希望者は極少数でした。
PTの総数は急速に増加しているため、人手不足とは無縁のように思えますが、実際にはPTの就職先にはまだ偏りがあり、人材が足りていない業種もあるのです。
PTが必要とされる仕事は増えていく
戦後のベビーブームに生まれた団塊世代の人たちが75歳以上の後期高齢者となる2025年以降は、今以上に医療や介護の需要が増えることが予想されています。
医療や介護を必要とする人が増えることが予想されるため、国は医療や介護を病院や施設で提供するのではなく、住み慣れた地域(在宅)で提供できるように、各自治体へ地域包括支援の体制を整えるよう求めています。
国による施策により医療や介護の比重が地域にも広がることで、これからは更に幅広い地域でPTを求める声が増えていくことでしょう。
その他にも最近では健康寿命という言葉が聞かれる機会も増えており、専門性の高いPTに予防的介入を求める声も生まれています。
PTとしての知見を活かした活動は、今後も幅広い分野で国民の健康を支える重要な役割を担っていくことが予想されます。
3.これからの理学療法士(PT)に求められること
PTを目指す人には、急性期病院や回復期病院で働くPT像をイメージしている人が多いのではないでしょうか。しかし実際には、PTの活躍できる場は非常に幅広く、病院以外にも多くの業種で活躍のチャンスがあります。
どの業種でも大切なことはPTとしての役割を果す力を身につけることです。
どのような方が対象でも、どのような業界でも、評価をして治療を行い、結果を出すというPTとして当たり前のことを全うしていくこと、そしてその能力を安定して提供できることが大切になります。
PTでなければできないことを増やしていくことは、将来的にPTの仕事の可能性を広げていくとともに、自分自身の将来の安定にもつながります。
そのためには座学や実技練習などで基本的な知識や技術を身につけるとともに、日々の臨床の振り返りや治療の効果判定から改善点を洗い出す作業を地道に積み重ねていくことが大切です。
また基礎をしっかりと身につけること以外にも、高いコミュニケーションスキルはこれからのPTに求められる大切な能力でしょう。
対象となる患者様はもちろん、そのご家族様、他職種の方の話に普段から耳を傾け、相手の考えを知り、自分の考えを伝える交流をしていくことで、リハビリがスムーズに進んだり、アクシデントを未然に防いだりできる効果も期待できます。
PTとしての自分軸をしっかりと持ち、軸がありながらも柔軟なPTを目指していきましょう。
4.まとめ
飽和状態になると言われ続けているPTですが、実際には介護分野など就職しているPTが少ない業種も多々あり、業種によっては供給が追い付いていない状況であると考えられます。
高齢化社会を迎え、今後は更に介護施設や地域での活動が求められる職業なので、就職に対して不安を抱いている人は、視野を広げて就職活動を進めてみてはいかがでしょうか。
また自信を持って働けるよう、知識や技術の向上と共に日々のフィードバックを積み重ねてPTとしての土台を強固にしていく努力も是非続けていきましょう。
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【参照サイト】
統計情報|協会の取り組み|公益社団法人 日本理学療法士協会