デイサービスと聞くと、高齢者の方が1日をゆっくりと過ごす場所のため、理学療法士(PT)として深く介入できないと思っている方も多いのではないでしょうか。
しかし実際には、機能変化が乏しくなる維持期を迎えた利用者様に対して、急性期や回復期よりも短い介入時間で成果を出していくという、難易度の高いリハビリテーションに挑戦することができる場所なのです。
近年、厚生労働省は市町村単位で地域包括ケアシステムの導入を推進しています。そのため、診療所やデイサービスなど小規模の医療・福祉施設も増え、理学療法士の活躍の場が広がりつつあります。年々増加している理学療法士の活躍が地域でも期待されているのが現状です。
また、児童を対象とし2012年の児童福祉法改正により設置された放課後等デイサービスの求人情報も増えてきています。
今回は、そんなデイサービスで求められるPTの仕事や、役割について具体的に紹介していきます。
目次
1.デイサービスとは
通所介護と呼ばれる、介護保険サービスのデイサービス。介護を受けながら自宅で生活を送る方が、通いながら介護サービスを受けられる専門の施設です。
利用者は朝から夕方までデイサービスで過ごすため、理学療法士(PT)や他のスタッフは機能訓練などの介護サービスに加え、食事や入浴、レクリエーションなども行います。
リハビリだけでなく、高齢者の社会的接点を設け、引きこもりがちになることを防ぐ社交場や、定期的に外出する機会を創出し、規則正しい生活リズムをサポートするなど、多くの役割を担っています。
また、リハビリ重視や利用者の負担軽減などを目的として、半日程度に抑えた短時間型(半日)デイサービスもあります。
PTによる個別機能訓練では、運動機能の維持向上や廃用症候群の予防へアプローチしていることから、利用者様や介護をしている家族にとっても生活を支える重要な場所となっています。
近年は高齢者のデイサービスだけでなく、障がいのある児童が対象となる「放課後デイサービス」においてもPTの求人が増えてきています。児童福祉分野となるため、専門的な知識や経験が求められますが、運動面からのアプローチなどPTとして介入できる余地が多い分野でもあります。
2.デイサービスで活躍する理学療法士(PT)の現状
2024年3月末現在、日本理学療法士協会の会員は139,556名にのぼり、そのうち医療施設(大学病院や一般病床病院を含む)で働く理学療法士は84,417名、また介護老人保健施設や特別養護老人ホームなどの高齢者福祉施設で勤務する理学療法士は10,446名となっています。
さらに、診療所勤務の理学療法士は11,838名、デイサービス(デイケア含む)で働く理学療法士は3,285名です。会員全体から見ると、診療所やデイサービスなど地域密着型の施設で働く理学療法士の割合が少ないといえるでしょう。
3.理学療法士(PT)がデイサービス(通所介護)で果たす役割とは?
デイサービスで働く理学療法士(PT)はどのような仕事をしているのか、具体的にみていきましょう。
デイサービスで理学療法士(PT)に求められること
デイサービスでは、機能や能力変化が乏しくなる維持期へ移行し、障がいが固定されつつある利用者に対してリハビリテーションを行います、急性期や回復期病院でのリハビリテーションに比べると、身体機能の向上が難しい時期といえるでしょう。
そのため、身体機能の維持を目標とするだけにも思えますが、実際には潜在的な運動機能を十分に発揮しきれていないケースもあり、デイサービスでの介入で新たな動作を獲得したり、運動機能の安定性向上や巧緻性向上を促したりすることも可能です。
また、自宅での過ごし方から必要となる動作を評価し、利用者様が生活しやすくするだけでなく同居家族の介護負担を減らす助けとなることも理学療法士(PT)の重要な役割です。
自宅での生活を意識したリハビリテーションを行うためにも、家族や他職種とのコミュニケーションを通して情報収集を行い、利用者様の生活の質を高めていくことが重要になります。
利用者の生活の質を向上させるためには、多角的な視点からの支援が必要
リハビリ特化型デイサービスでは、利用者数やサービス提供時間に応じた選択肢が提供されています(小規模・大規模、半日型・1日型など)。利用者が自分に合ったサービスを選択できる一方で、施設の規模や特性、人員基準の関係から理学療法士が他職種の業務も兼務するケースもあります。その場合、利用者の体調に合わせた対応の工夫や、必要に応じてご家族への報告も理学療法士が行う場合があります。
理学療法士の主な業務としては、バイタルチェック、食事評価と指導(1日型のみ)、レクリエーションの企画、ケアマネージャーへの報告、相談や指導が含まれます。また、理学療法士はリハビリだけでなく利用者とご家族が安心して生活できる環境づくりを他職種と協力して行っています。
リハビリ特化型デイサービスでの理学療法士は、単なるリハビリ指導だけでなく、利用者の生活全般を支援する役割を担い、ご家族の介護負担を軽減するサポートも行うことがあります。多面的なサポートにより、利用者の生活の質向上を目指して取り組んでいます。
デイサービスで働く理学療法士(PT)の基本的な仕事内容と1日のスケジュール
一般的なデイサービスでのPTの仕事内容及びタイムスケジュールを例に確認してみましょう。
レクレーションや体操などは介護スタッフが対応し、PTは個別機能訓練のみ介入する施設があるなど、施設により違いはあるものの、このように利用者と様々な形で携わっていきます。
時間 | 業務内容 |
08:00~08:30 | 出勤、ミーティングなど |
08:30~09:00 | 送迎、車の昇降や歩行介助 (PTが送迎を行わない施設もあります) |
09:00~10:00 | バイタル測定 |
10:00~10:30 | 体操 (介護スタッフが行う施設もあります) |
10:30~12:00 | 個別機能訓練 |
12:00~13:00 | 休憩 |
13:00~16:00 | レクレーション (介護スタッフが中心となり行う施設もあります) |
16:00~16:30 | 送迎、車の昇降や歩行介助 (PTが送迎を行わない施設もあります) |
16:30~17:00 | カルテ記入やカンファレンス、各種書類の作成などを終えて勤務終了 |
デイサービスがおすすめな理学療法士(PT)の特徴
急性期や回復期を経て、障がいが固定された方を担当することが多くなるため、リハビリテーション前後の運動機能の変化が少ないことが多くあります。そんな中でもモチベーションを保ち、身体機能の維持向上を目指して介入できる高い意識を持っているPTは、デイサービスでの勤務に向いているといえるでしょう。
また、病院勤務に比べてデイサービスでは、利用者様の生活に寄りそったリハビリテーションが提供できる点も大きな特徴の一つです。より自宅での生活に則した実用的な能力の獲得を目指すリハビリテーションを提供したいという人にもおすすめです。
4.理学療法士(PT)が放課後等デイサービスで果たす役割とは?
近年、理学療法士(PT)の採用が増えている放課後等デイサービスですが、実際にどのような仕事をしているのか紹介していきます。
放課後等デイサービスで理学療法士(PT)に求められること
放課後デイサービスで働くPTは、身体的側面から児童の能力を評価・改善していく力が求められます。
同年齢の児童と比べて、筋力や歩行能力などの身体機能の発達具合を動作の中から評価をしていきます。対象者が児童であるため、意図したように動いてもらうことが難しいことも多々あり、遊びの中で機能を評価するなどの工夫が必要です。
また、将来的に伸ばしていくことができる能力かどうかを判断するとともに、現在の身体機能を活かして負担の少ない代償動作の獲得を指導することも重要です。限られた時間の中で介入の方向性を判断し、能力獲得を目指していきます。
他職種とのコミュニケーションを図り、暮らしやすさの変化や、身体的介入が高次脳機能面に与える影響などを評価し、対象となる児童にとって有効な介入を模索していくことが求められます。
放課後等デイサービスで働く理学療法士(PT)の基本的な仕事内容と1日のスケジュール
まずは、放課後等デイサービスにおける理学療法士(PT)の業務内容やタイムスケジュールをみていきましょう。
時間 | 業務内容 |
10:00~10:30 | 出勤、ミーティング |
10:30~12:00 | 事務作業、個別療育やレクレーションの準備 |
12:00~13:00 | 休憩 |
13:00~14:00 | 送迎準備、学校へのお迎え |
14:00~16:00 | 個別療育やレクレーションなど |
16:00~17:00 | 帰りの準備 |
17:00~17:30 | 送迎準備、利用者宅へ送り届ける |
17:30~18:30 | 室内掃除、記録や業務報告などの事務処理 |
19:00 | 業務終了 |
放課後等デイサービスがおすすめな理学療法士(PT)の特徴
児童を対象としリハビリテーショは、大人よりも集中力できる時間が短かったり、動作の理解が難しかったりすることも珍しくないため、工夫しながらプログラムを立案することが必要です。
遊びの延長として行える訓練や、子どもが喜ぶユーモアを加えながら訓練を行うことが重要になるため、そのような訓練のアイデアを出すことに長けている人や、そういった作業にやりがいを感じられる人は、放課後デイサービスでの仕事に向いているといえます。
また、小児理学療法に興味がある人も放課後等デイサービスでの勤務はおすすめです。病院とは異なる生活の場での介入となるため新たな学びも多い職場になるでしょう。
5.まとめ
通所介護(デイサービス)での理学療法といっても、通所介護と放課後等デイサービスでは理学療法士(PT)が担う役割は大きく異なります。
自分の希望に適した病態を施術できる方がモチベーションを維持しやすいため、どのようなリハビリテーションを提供したいか、どのように利用者様や対象児童と向き合うのか自分自身に問いかけていくことが重要です。
是非、やりがいのある環境で、有意義なリハビリテーションを提供していきましょう。
通所介護(デイサービス)に関する転職情報をお探の方はPTOT人材バンクのキャリアパートナーに遠慮なくご相談ください。
関連記事
理学療法士(PT)の勤務先に関するおすすめ記事をご紹介。