柔道整復師と理学療法士(PT)の違いとは？ダブルライセンスや難易度を解説

ケガや痛みの治療を行う専門職である柔道整復師と理学療法士(PT)。この2つの資格は、どちらも医療系国家資格であり、仕事内容も似ているところがあります。

一般的には同じような職業として認識されがちですが、実際にはこの2つの資格には大きな違いがあるのをご存知ですか？

今回は、そんな柔道整復師と理学療法士(PT)の違いや両方の資格を取得するダブルライセンスのメリットについてもわかりやすく解説していきますので、是非参考にしてみてください。

１．柔道整復師と理学療法士(PT)
- 柔道整復師とは
- 理学療法士(PT)とは
２．それぞれの資格の違い
３．理学療法士(PT)が柔道整復師を取得すると、独立開業が可能
４．理学療法士(PT)が柔道整復師を取得する際の注意点
- 学校に通い、国家試験の受験が必要
- 柔道整復師国家資格は合格率60%台
５．理学療法士（PT）と柔道整復師の年収の違い
６．まとめ
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１．柔道整復師と理学療法士(PT)

まずは、それぞれの資格について簡単に特徴を見ていきましょう。

柔道整復師とは

公益社団法人日本柔道整復師会によると、柔道整復師は、外傷性が明らかな骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷などの損傷に対して、整復や固定などを行い、治癒力を最大限に発揮させる施術を行う専門職です。

打撲や捻挫、挫傷などは医師の同意がなくても自身で判断して治療を進めることができますが、慢性的な肩こりからくる腰痛など症状によっては健康保険の対象外となります。

理学療法士(PT)とは

理学療法士(PT)とは、ケガや病気により身体への障がいが発生した人や、障がいの発生が予想される人に対して、座る・立つ・歩くなどの基本動作の維持及び回復、障がいの悪化防止を目的に、運動療法や物理療法などの理学療法を用いて支援する医学的リハビリテーションの専門職です。

自立した日常生活が送れることを目指し、身体能力だけでなく、生活環境など周辺状況までを評価し、目標に向けたプログラムを計画実行していきます。

２．それぞれの資格の違い

文字だけを見ると同じような内容が多い柔道整復師と理学療法士(PT)ですが、実際にはどのような違いがあるのでしょうか？

3つの項目から両者の異なる点を見ていきましょう。

施術内容の違い

柔道整復師は、骨折や脱臼などに対する応急処置や捻挫・打撲・挫傷の応急処置と回復期の後療を行いケガの治癒を行うことができます。主に整復や外傷に対する圧迫や冷却、挙上などの固定法を行うほか、物理療法や手技療法、運動療法などの後療法を用いて患部の回復を促します。

一方、理学療法士(PT)は筋肉増強練習や基本動作練習などの運動療法、温熱や電気刺激などの物理療法を用いた理学療法を行い、身体機能の回復を図ります。患者さんの状態を評価し、計画を立案したうえでプログラムを実行し、基本動作や日常生活動作の向上だけでなくQOLの向上も目指す点が特徴です。

柔道整復師の施術はケガの治療を目的とした施術となり、患部の回復や機能を取り戻すために行われる点が特徴といえるでしょう。

理学療法士(PT)の施術は、基本動作や日常生活動作などの改善を目的とするため患部に限らず全身状態を把握し動作分析など細かく評価を行う点が特徴です。

勤務先の違い

柔道整復師と理学療法士(PT)は勤務先にも違いがあります。

一般的に、柔道整復師は整骨院、整形外科、介護関連施設が勤務先となります。自身で診断から施術を行えることから、独立開業して活躍する柔道整復師も多数います。

一方、理学療法士(PT)は病院などの医療施設や介護福祉施設、身体障がい者施設、児童福祉施設などに勤務しており、PTの大半が病院やクリニックをはじめとした医療機関や介護老人保健施設や訪問リハビリテーションなどの介護事業に携わっています。

開業権の違い

理学療法士(PT)は、医師の指示のもと理学療法を実施するよう法律で定められていることから開業権を与えられていません。医師からの指示に従い評価・治療を実施するため、個人の判断で治療や施術を行うことは認められていないのです。

それに対して、先ほども少し触れたように柔道整復師は開業権があり一定の範囲内であれば自身の判断で評価や治療を行うことができ、適用条件であれば健康保険の申請も可能です。

３．理学療法士(PT)が柔道整復師を取得すると、独立開業が可能

理学療法士(PT)が柔道整復師を取得すると独立開業ができる点が大きな魅力の１つです。

前述のとおり、理学療法士(PT)は医師の指示の下でなければ理学療法を提供することができませんが、柔道整復師の資格を取得できれば独自の判断で施術をすることが可能になります。

また理学療法士(PT)としての経験や知識だけでなく、柔道整復師の視点からも対象者の状態を評価することができるとともに、治療の引き出しが増える点も大きな魅力といえるでしょう。

４．理学療法士(PT)が柔道整復師を取得する際の注意点

この章では、理学療法士(PT)が柔道整復師を取得する際の注意点についてご紹介します。

学校に通い、国家試験の受験が必要

柔道整復師の資格を取得するためには、理学療法士(PT)と同様に認可された3年以上の専門学校や４年制大学で知識と技術を身に着け、卒業（卒業見込み）して国家試験を受験し、合格しなければなりません。

夜間部のある学校もあるため、働きながら資格取得に向けて勉強もできますが、フルタイムで働きながらの学校生活は難しいことが予想されるので、学費や在学中の生活費など金銭面の計画もしっかりと立てておく必要があるでしょう。

柔道整復師国家資格は合格率60%台

それぞれの資格について、過去5年間の国家試験合格率を比較してみます。

年/回	受験者数(名)	合格者数(名)	合格率
2024年(第59回)	12,629	11,266	89.2%
2023年(第58回)	12,948	11,312	87.4％
2022年(第57回)	12,685	10,096	79.6%
2021年(第56回)	11,946	9,434	79.0％
2020年(第55回)	12,283	10,608	86.4％

理学療法士(PT)の過去5年間の平均合格率は84.3%となっています。

年/回	受験者数(名)	合格者数(名)	合格率
2024年(第32回)	5,027	3,337	66.4％
2023年(第31回)	4,521	2,244	49.6%
2022年(第30回)	4,359	2,740	62.9%
2021年(第29回)	4,561	3,011	66.0%
2020年(第28回)	5,270	3,401	64.5%

柔道整復師の過去5年間の平均は61.88%となっています。

国家試験の合格率だけを比べると、過去5年間の平均合格率には約20%の差があります。柔道整復師の国家資格は合格率が60％台であり、PTの国家試験に比べて低い水準です。また、柔道整復師の場合、国家試験を受験するためには在学中に認定実技試験を通過する必要があります。そのため、PTの国家試験よりも難しいと感じる方もいるかもしれません。

合格率は学校によって大きく異なり、全国平均が60％台のところを100％又は100％に近い数字を出している学校も多くあるため、どの学校に入るかも重要なポイントとなります。

限られた時間を有効に使って柔道整復師になるためにも、学校選びから入念に準備を進めることが大切です。

５．理学療法士（PT）と柔道整復師の年収の違い

理学療法士（PT）と柔道整復師の年収には、資格の性質や働く場所、経験年数によって差があります。以下に一般的な年収の目安と比較を示します。

理学療法士（PT）と柔道整復師の年収の目安

	理学療法士（PT）	柔道整復師
新人の年収	約300万～400万円	約250万～350万円
中堅（5～10年）の年収	約400万～600万円	約350万～500万円
ベテランの年収	約500万～700万円	約500万～700万円（開業成功で1,000万円超も）
収入の安定性	安定（病院勤務中心）	やや不安定（開業リスクあり）